テレシネ
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テレシネ (Telecine) は、フィルム映画をテレビジョン信号に変換する作業。
8ミリフィルムをビデオ・DVDに変換する作業もテレシネと呼ぶ。なお、ビデオ映像をフィルムに変換することはキネコ(キネレコ)という。
[編集] フレームレートと走査方式
フィルム映画をテレビジョン信号に変換して記録・放送する際には二つの大きな課題がある。
- フレームレート フィルム映画は伝統的に毎秒24フレーム(コマ)で撮影されるのに対して、テレビジョンはNTSC方式では主に毎秒30フレーム(カラー放送では正確には29.97フレーム)、PALやSECAM方式では主に毎秒25フレームが使われている。このため特にNTSC方式では、フィルム映画の各フレームをそのままテレビジョン信号のフレームに対応させると、映像の動きは20%ほど速くなり、声も「アヒル声」になってコミカルな効果になってしまう。
- 走査方式 (高品位テレビジョンでない)標準テレビジョン信号は、各フレームを二つのフィールドとして交互に走査する飛越し走査を行っている。
PALやSECAMの毎秒25フレーム方式では、フィルム映画のフレームレートとの差がわずか(4%)であることから、特に複雑な変換作業を行わずにそのまま各フレームを2回づつ走査して奇数フィールドと偶数フィールドとする。映像の動きは4%速くなり放映時間はその分短くなるが、鑑賞者には気づかれない無視できる範囲とみなされている。ただし音声信号も同じ割合で「早送り」されてしまうため、そのままではすべての音程が半音の2/3ほど上昇してしまう。この変化は特に音楽モノでは無視できないので、音声信号だけディジタル技術を使ったピッチ変換を行う。
[編集] 3:2ドロップダウン
毎秒24フレームのフィルム映画をNTSC方式や一部のPAL方式の毎秒30(29.97)フレームのテレビジョン方式で記録・放送するときは何らかの変換作業が必要となる。幸いなことに両者のフレームレートは4:5という単純な整数比だが、何がしかの魔法で4枚の連続した絵から5枚の絵を作り出さなければならないことに変わりはない。
一般にサンプリングレート(この場合はフレームレート)の変換は、近傍の標本(サンプル、この場合はフレーム)からフィルタリングにより原標本間の信号を補間(予測)し、これを変換先のサンプリングレートで再標本化する。音声信号ではCDの44.1kHzとDVDやディジタルテレビジョン放送の48kHzの間の変換などで、純ディジタル技術で実用化されている。しかしながら映像信号の場合、音声信号と比較して単に1次元信号から2次元信号になった複雑さだけではなく、動画のフレーム間補間では映像中の登場人物、背景、背景中の移動物(車など)の個別オブジェクトを自動的に抽出して個々に予測・補間操作をする必要があり、現在の技術では実用化されていない。
3:2ドロップダウンと呼ばれる変換方式は、フィルム映画の4フレーム毎に1フレームに相当する絵を2回使用して5フレーム分のテレビジョン信号を作り出す。実際にはテレビジョン信号が飛越し走査を行うので、フィルム映画4フレームのうちの2フレームを各フレームについて1フィールド(1/2フレーム)分再使用する。
例えば、映画フィルムの連続した4フレームを1、2、3、4として、それぞれの奇数フィールド走査と偶数フィールド走査を1o、1e、2o、2e、...とすると、これらのフィルム映画フレームは以下のような10フィールド(5フレーム)のテレビジョン信号に変換される。
1o 1e 1o 2e 2o 3e 3o 3e 4o 4e
一見してわかるように、フィルム映画の各フレームが交互に3フィールドまたは2フィールドのテレビジョン信号に変換される特徴が「3:2ドロップダウン」と呼ばれる所以である。
[編集] 関連項目
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