テト攻勢

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テト大攻勢の主な戦闘地点（1968年1月29日から2月25日） 北ベトナム人民軍と南ベトナム解放民族戦線の攻撃地点（赤矢印）および都市内での軍事行動（赤い枠線）

テト攻勢（Sự kiện Tết Mậu Thân; Sự kiện Tết 戊申）は、ベトナム戦争における1968年1月30日の夜に始まる、北ベトナム人民軍 (NVA) および南ベトナム解放民族戦線（NLF）による大攻勢。ベトナム戦争最大の転機となった。テトとはベトナム語の旧正月を意味する。

[編集] 概要

旧正月の祝日であるテトの期間は、南北ヴェトナム軍双方、暗黙のうちに休戦期間とする慣例があった。だが1968年1月30日未明、共産軍はこの油断を突く形で大攻勢に打って出た。南ヴェトナム全土が攻撃対象とされたが、中でも旧都フエ、南ヴェトナム首都サイゴンは最重点目標とされた。ヴェトナム南部のほとんどすべての主な都市の中での軍事行動およびケ・サンの米軍重砲基地への攻撃を含んでいた。とくにダナンでは大激戦となった。サイゴンではタンソニェット（Tan Son Nhut）国際空港とアメリカ大使館が重要目標とされた。

特にアメリカ大使館へ向かった部隊は決死の覚悟であり、士気は非常に高く、アメリカ大使・駐ベトナム軍総司令官は危うい所で難を逃れた。アメリカ大使館は一時共産軍に占拠された。南ベトナム大統領官邸も共産軍に襲撃されたが、こちらは南ヴェトナム側が防衛に成功した。やがてアメリカ軍と南ベトナム軍の反撃で攻勢側の拠点はほとんど奪還されていった。

南ベトナム民族解放戦線と北ベトナム軍は南ベトナム全土で攻勢をかければ民衆が蜂起し、戦局を有利に進める物と判断していたが予想に反して民衆は蜂起せず、傍観して逃げ惑うばかりであった。解放戦線と北ベトナム軍は占領した街で南ベトナム政府関係者を形だけの路上裁判で次々に処刑していったが、その中には何の関係も無い市民も含まれていた。フエではあらかじめ処刑者のリストが配られており、リストに名前がある人物はほとんどが後頭部に銃弾を撃ち込まれ射殺された。

またこの攻撃は結局、解放戦線が北ベトナム軍と同義の組織であることを南ベトナム国民に知らしめる役割も果たした。

この一連の様子はテレビで報道された。南ヴェトナムの警察庁長官グエン・ゴク・ロアンが報復のために路上でゲリラ容疑者を射殺するシーンの映像は全世界に配信され衝撃を与え「アメリカの正義」は地に落ちた。アメリカ国内の反戦機運は非常に高まり、リンドン・ジョンソン大統領は大統領選挙への出馬を取りやめた。テト攻勢は、戦術的には共産軍側の惨敗であるが、戦略的にはアメリカはこの戦争の勝利をあきらめる事を決断させた勝利であり、アメリカは和平への道を探ることになる。