スピン角運動量
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スピン角運動量 (スピンかくうんどうりょう、Spin angular momentum) は、電子やクォークなどの素粒子、およびそれらから構成される原子核や原子などの複合粒子が持つ量子力学的な自由度の1つである。単にスピンと呼ばれることもある。スピン角運動量は、軌道角運動量とともに、粒子の全角運動量に寄与する。
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[編集] スピン角運動量演算子
スピン角運動量は、3つのエルミート演算子sx, sy, sz で表される物理量である。これらの演算子の間には、軌道角運動量と同様の交換関係が成り立つ。
ここで、であり、hはプランク定数である。
また、
と定義すると、s2 の固有値は 、sz の固有値は、 となる。msをスピン磁気量子数という。sは、0以上の整数または半整数の値をとる。素粒子の場合、sは素粒子の種類ごとに定まった値をもつ。
[編集] スピン1/2
s = 1/2の場合を考える。このとき、s2の固有値は、であり、szの固有値は、の2つが存在することとなる。従って対応する固有状態も2つであり、それぞれ上向きスピン、下向きスピンと言うことが多い。
スピン角運動量の各成分 (sx, sy, sz) はパウリ行列 () を使って以下のように表される。
以上は、sz に関して対角となるようにしてある。
[編集] スピンと統計性
sが半整数の値をもつような粒子はフェルミ粒子であり、sが整数値をとる粒子はボース粒子であることが知られている。sの値と統計性の間のこのような関係は、相対論的な場の量子論によって説明できる。