ジオング
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ジオング(ZEONG)は、アニメ『機動戦士ガンダム』に登場する架空の兵器。ジオン公国軍の試作型ニュータイプ専用モビルスーツ(型式番号: MSN-02)。一説には、発音は「ジオン」であり、「G」はジオン公国との区別のため、サイレント(発音しない文字)であると記述されている本もある。 また「ジオン公国軍最強のモビルスーツであれ」という技術者の思いから母国名である「ジオン」の名がつけられたという説もある。 人型ではあるが、サイズや脚が無い事、戦術などからモビルアーマーに分類される説もある。
目次 |
[編集] 機体解説
ジオング(80%完成時) | |
型式番号 | MSN-02 |
所属 | ジオン公国軍 |
生産形態 | 試作機 |
全高 | 17.3m |
本体重量 | 151.2t |
全備重量 | 231.9t |
ジェネレーター出力 | 9,400kW |
センサー有効半径 | 81,000m |
装甲材質 | 超高張力鋼(超硬スチール合金) |
武装 | 有線制御式5連装メガ粒子砲×2 頭部メガ粒子砲×1 腰部メガ粒子砲×2 |
主な搭乗者 | シャア・アズナブル |
ジオン公国軍はニュータイプの可能性に着目しており、開発を続けていたサイコミュ兵器は一年戦争末期、ブラウ・ブロ、エルメスの完成でようやく実用化に漕ぎ着けた。しかし、この時点では装置が大型であったためモビルアーマー (MA) サイズの機体にしか搭載できなかったが、ザクIIに代わる主力モビルスーツ (MS) に搭載すべくMS-16Xの型式番号を与えられ「ジオン」の名を冠したジオングとして更に開発が進められ、試作機が3機製造された。同時に脚部も開発されたが、最終戦に間に合わなかった。開発にあたりザクIIをベースとしたテスト計画「ビショップ計画」によってMS-06Zサイコミュ試験用ザクが試作され、貴重なデータを収集した。しかしシステムの小型化が十分でなくMS-16XはMAに近いサイズのMSとして設計が進められた。
MS-16Xには二つのプランが存在した。一つは通常のMSと同様に脚部をAMBAC装置として用いる案、もう一つは運用を宇宙空間に限定し脚部を廃して高出力のスラスターによって機動する案である。テストの結果から後者のプランを先行して進めることとなりサイコミュ試験用ザクのうち1機をMSN-01サイコミュ高機動試験用ザクへと改修しデータ取りが続けられた。この段階でニュータイプ専用MSのカテゴリとして型式番号が改められ、MS-16XはMSN-02へと変更が行われた。
複数のビーム兵器の稼動を可能とするため大型の核融合炉を搭載している。
本機の最大の特徴はサイコミュを用いた前腕部の5連装メガ粒子砲であり、前腕ごと機体から切り離し、敵の予想外の方向から攻撃を行うオールレンジ攻撃が可能である。しかし、当時はサイコミュの技術自体が開発途上段階であったこと、ニュータイプだけでなく一般兵士にも操縦が可能な様に考慮されたことなどから、無線誘導式ではなくブラウ・ブロと同様の有線誘導式として設計された。また、腰部と頭部にもメガ粒子砲を搭載しており、腹部中央モジュールを残し頭部、胸部、腰部、腕部、脚部の7つのモジュールへと分離し攻撃することも計画されていた。暗礁空域などで中央モジュールを陰に隠して、オールレンジ攻撃を仕掛ける戦法が予定されていたとされる(現存の資料ではその際、脚部がどのような役割を果たすのか不明)。
貴重な戦力であるニュータイプの生還率を高めるため、頭部は脱出モジュール(頭部のみの稼動も可能である)としても設計されており、サイコミュの操作系は頭部のコクピットで行う。胸部にもコクピットが設けられており一般兵による操縦はこちらで行う。よってコクピットハッチは後頭部と胸部に設けられている。 余談だが、ジオングの底部はハート型に近い。
[編集] 劇中での活躍
アニメ『機動戦士ガンダム』第42話、第43話にて描かれた一年戦争最後の決戦、ア・バオア・クー戦において、ジオン軍の最終モビルスーツという設定で登場した。出撃までには完成が間に合わず、上腕の装甲と足の無い、全体としては80%の完成度という設定で登場した。他のSFアニメを見てもメカが未完成で登場するというのはほとんど例が無く視聴者にインパクトを与えた。先の戦闘でガンダムに乗機のゲルググを中破させられ使用できなくなっていたシャア・アズナブルに対し、キシリア・ザビからパイロットの決まっていなかったこの機体を渡された。テスト無しでいきなりガンダムと戦い、激闘の末ガンダムと相打ちという形でジオングは撃破された。
相打ちという形ではあったものの、ジャブローでの再登場以後、ガンダムに押されっ放しであったシャアがついにガンダムを撃破できた機体であり、戦闘力は一年戦争最強レベルと言っていいだろう。機体スペックのみを比較すれば、パワー・機動性・攻撃力・運用条件の全てがガンダムを上回っており、「勝って当然」という見方もできるが、実は一年戦争においてシャアがアムロ(ガンダム)と対峙した時に、乗り慣れていた機体はザクのみであった。その後は次第に、アムロは使い慣れた機体で更なる進歩を遂げて行ったのに対し、シャアはテスト無しや慣らし運転すら無し。果てには説明だけの操作法で参戦、いきなりガンダムと対峙であったことにも注意すべきである(最初ジオングに不慣れであるためにシャアの焦る描写が実際に描かれている)。その状態でありながら、シャアはガンダムと戦闘前にMS18機、戦艦4隻を撃破しており、ジオングもシャアもそれぞれの能力が非常に高かったことが伺える。
因みに脚が無い事をシャアに尋ねられた技術士官(リオ・マリーニ)の「あんなの(宇宙空間では)飾りです。偉い人にはそれがわからんのですよ」というセリフはガンダム史上に残る名言の一つと言われており、インターネットの掲示板などでその言い回しが使われたりしている。 なお、「80%の完成度」というのは「足が付いていない」事を指している訳ではない可能性がある。というのも、上記機体解説にもあるように、シャアの搭乗した機体は足の無いプランを完成させたもので、元々脚部に武装がある訳でもなく、むしろ宇宙空間に限って言えば脚部は無い方がいいとさえ言える。そういう意味で技術士官のセリフはウソでは無いと言える。80%というのは「計画全体の進捗率が80%」という事だったのだろう。
『機動戦士ガンダム C.D.A. 若き彗星の肖像』にて、ア・バオア・クーに残された3号機を回収した機体が登場する。足付の完全版で(MSV等に登場するパーフェクト・ジオングに近い)、再びシャアが搭乗する。ただしこのコミック自体は公式設定という訳ではない。
[編集] バリエーション
[編集] パーフェクト・ジオング
ジオングに足が付いた完成形態(型式番号:MSN-02)。これにより地上での運用も可能になるが、スラスターが脚部になった為、機動力は低下した。初出はバンダイのプラモデルのMSVシリーズで、元々脚部はデザインされていなかったのだが、プラモデルの改造ですでに発売されていた1/144のキットに1/100のドムの足を取り付けるアイデアが流行した事があり、この改造例がデザインの元になったようである。やまと虹一の人気漫画『プラモ狂四郎』に登場し、人気機体となった。後にゲームソフトにも登場。漫画『機動戦士ガンダム C.D.A. 若き彗星の肖像』ではシャアが搭乗している。
[編集] 高機動型ジオング
プレイステーション2用ゲームソフト『機動戦士ガンダム ギレンの野望 ジオン独立戦争記』に登場するゲームオリジナルの機体(型式番号:MSN-02R)。ジオングに高機動ブースターやスラスターを追加装備している。他には武装にプラズマリーダーも搭載。脚部は省略されたままで、宇宙戦に特化した機体という設定である。
[編集] MSN-03 ジオング
初出はバンダイのプラモデルのMSVシリーズの文字設定であり、デザイン画は今に至るまで描かれていない。トミノメモの首、胴体、両腕、両足が分離してサイコミュとして機能するというジオングの初期設定をそのまま継承したジオングの後継機だが名称は変わらずそのままである。恐らくプランのみで建造されなかったと思われる。五体分離してオールレンジ攻撃を行うコンセプトは数千年後にターンXに継承される。
[編集] グラン・ジオング
出典は松浦まさふみの漫画『機動戦士ガンダム ムーンクライシス』。 名前はジオングと付いてはいるが実際にはクィン・マンサの発展機である
[編集] ジョング
『機動戦士Vガンダム外伝』に登場。ザンスカール帝国がジオングを元に開発した機体。分離機能があったが、首は分離しなかった。
[編集] 関連項目
- ガンダムシリーズの登場機動兵器一覧
- α・アジール 企画段階での名前は『ネオジオング』であった。