システムアナリスト
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システムアナリスト(略称アナリスト、もしくはAN)は、情報処理技術者試験の一区分であるシステムアナリスト試験に合格したものに認定される資格である。この資格が対象とするのは、企業や組織の経営戦略に基づいて情報戦略を立案し、情報システム開発においては全体計画、個別計画の立案、策定を行い、その開発・導入プロジェクトを支援し、同時に業務のシステム化を監督監修する立場の人間である。システム開発における最上流の担当者であり、能動的にシステム開発計画を提案する者である。合格率は例年6~8%程度と低い。この区分は高度情報処理技術者に分類されている。情報処理技術者の中で、最高位と目される区分である。
1995年の情報処理試験の大規模改定期に導入された。2000年までは受験に年齢制限(受験する年の4月1日時点で満27歳以上であること)があり、さらに受験に際し業務経歴書の提出を行う必要があった。ただし2001年に行われた情報処理技術者試験の大規模改訂で、年齢や業務経歴書の提出といった必要事項は廃止されている。
以後システムアナリスト試験について述べる。
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[編集] 試験
例年、10月の第3日曜日に秋期情報処理技術者試験の一区分として行われる。
午前試験は多岐選択式、午後試験は記述式と論文式に分かれている。
[編集] 午前
マークシート式で55問出題され、全問回答しなければならない。午前試験は2001年よりプロジェクトマネージャ試験、アプリケーションエンジニア試験と共通の問題を解くことになった。同じく2001年より、ソフトウェア開発技術者試験に合格して2年以内、アプリケーションエンジニア試験、プロジェクトマネージャ試験に合格して1年以内の者であれば、申請により午前試験を免除される。試験はIRT(項目応答理論)によって採点され、800点満点中600点以上で合格である。
[編集] 午後I
経営戦略に基づくシステムの提案、システムの計画立案に関する問題が4題出題される。そのうち3題を回答しなければならない。素点採点で、800点満点中600点以上で合格である。
[編集] 午後II
3つのテーマから1つを選んで、業務経験(800字)と小論文を書く。採点はA,B,C,Dの4段階で評価され、Aのみ合格となる。
[編集] 試験の評価
システムアナリストは情報処理技術者試験の頂点に君臨する区分と考えられている。これは、有資格者への業界及び企業経営者の評価が極めて高いことにある。
システムアナリストに要求される能力は、情報技術に対する深い知識と経験でなく(無論そうした能力も重要ではあるが)、開発や運用の現場から離れた経営者の視点でシステムを企画・設計し、経営者に説明する能力である。いずれも経営者・経営層と直接交渉する立場の人間として、極めて重大な能力と認知されているものばかりである。こうした能力を持つと認定された合格者は業界でも一目置かれる存在であり、近年の情報システム導入プロジェクトには、企画立案段階で(さらにプロジェクトがスタートした後も)参加する場合が多くなっている。特に公共系のシステム開発では、入札の条件としてシステムアナリストを配置することが義務づけられる場合がある。こうしたことから、システムアナリストは事実上の業務独占資格として機能しつつある。
システムアナリストに近い資格としては、中小企業診断士、技術士 (経営工学部門)がある。システムアナリストにはこれらの有資格者が非常に多いことでも知られている。