サイケデリック・ロック
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サイケデリック・ロック(Psychedelic rock)は、主に1960年代後半に活躍したサイケ文化の要素を持つロック・バンドや、その作品を分類した言葉。
ドラッグによって得られる幻覚作用を音楽の要素に導入し、ピーター・マックス等に代表される特有の視覚イメージを音楽で表現しようとする分野と言える。この成立過程と、マリファナの吸引や極彩色の模様のスライド映写などが、サイケデリック・ロックを演奏/再生する場の視覚イメージとして定着してしまったため、音楽性とは無縁な領域で評価されるケースが多い。しかしビートルズの「トゥモロー・ネバー・ノウズ」の様に、複雑な録音技術を駆使し、直接的にサイケデリックを表現しようと試みた曲もある。
代表的なバンドとしてはドアーズやジェファーソン・エアプレインなどが挙げられるが、ビートルズの中期(アルバムではリボルバーからイエロー・サブマリンのころまで)などにもサイケの要素が見られる。フラワー・ムーブメント全盛の60年代後半には、全世界にサイケデリックの波が押し寄せ、多くのアーティストがこのジャンルの作品を残している。また、一般的にはプログレッシブ・ロックに分類されるピンク・フロイドも、シド・バレットがいた初期段階はサイケの影響が強いサウンドを得意としていた。
サイケデリック・ロックは、1970年代の「ロックの多様化」に至る布石であった。プログレッシブ・ロックも元は「サイケ」であったし、ハード・ロックもサイケデリックの要素を多分に含んでいた。後の’70年代のロック黄金期は、’60年代の「サイケデリック」という試行錯誤の”胎動期”を経て産み落とされたものである。