コンピュータ将棋
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コンピュータ将棋(コンピュータしょうぎ)とは、コンピュータが指す将棋のことである。
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[編集] 歴史
将棋を指すプログラムを作る、いわゆるコンピュータ将棋は、人工知能の一分野として開発が進められた。チェスやオセロ(リバーシ)などのボードゲームでも同様の開発が進んでおり、日本国内だけの普及にとどまっている将棋はむしろ後発であった。「人間が考えるように考える」という人工知能としての方法論はすぐに行き詰まる。人間の持つ大局観をコンピュータが理解できる情報に落とし込むことが非常に困難であったためである。
コンピュータ将棋のプログラムは、コンピュータチェスの手法を真似て評価関数という方法論を採用する。数手先の変化を読み、相手が最善を尽くしてきたときに、もっとも自分が有利になる手を探すのである。ここでいう「有利」は、相手の玉を詰ませられる、駒得になるなど、数値化させやすい基準で評価するものが多い。ここでの数値化の方法が評価関数であり、評価関数の作り方と何手先までを評価の対象とするかでコンピュータ将棋の強さが決まってくる。
最初のコンピュータ将棋のゲームが市場に出回ったのは1980年代のことである。当時はハードウェアの性能も低く、評価関数も簡単なものであったため、人間に比べて非常に弱いプログラムであった(アマチュアの級位者レベル以下であったことは間違いない)。そして1990年、最初のコンピュータ将棋選手権大会が将棋会館で開かれた。以後毎年大会が行われている。
21世紀に入り、ハード・ソフト両面で進化を見せたコンピュータ将棋は、アマチュア四段レベルの実力を持ち、プロ棋士と対局してプロを苦しめることもあった。
2006年のコンピューター将棋選手権大会の話題によると現在のコンピューター将棋の棋力は最高アマチュア五段レベルでそのレベルで平手に勝てる人間は500人位しかいないと言う。
また、詰将棋の分野では、可能な王手と玉方の応手をすべて検索するコンピュータならではの方法論により、人間を凌駕する実力を備えている。詰将棋の作成にあたりコンピュータを用いて検算することは、もはや常識となっている。
[編集] コンピュータ将棋のプログラミング技術・課題
- 水平線効果・地平線効果ともいう。例えば、最高9手先まで読むように設定したプログラムを作る。そのプログラミングは、9手先まで読んで「好手」と判断して指した。しかし、10手先に相手の上手い切り返しがあった。つまり、先ほど指した手は「大悪手」だったのである。最高11手先までに設定しても、12手先が読めない。最高13手先に設定しても、14手先が読めない。……となる。コンピュータ将棋には、どこまで思考すればいいのか? という問題がある。水平線効果(地平線効果)は、「水平線までは見えても、その先は見えない」ことのたとえである。
- 終盤、どんな手を指しても詰まされる状態になったとき、自玉が詰まされる手順を読んでいない手数まで先延ばしするために、無意味な王手や合駒をすることがある。これも同様の原理から発生する現象である。同様に最高11手先まで読むプログラム中10手目で飛車を取られそうな場合、読みの途中で無意味に歩などを捨て、飛車を取られるのを12手目に追いやろうとする現象なども生じる。通常、コンピュータ将棋において水平線問題というと「水平線の向こうまで追いやってしまう」というこちらの現象を指すことが多い。
- 駒の損得を中心に、玉形や駒の働きなどを評価対象としているものが多い。
- 実現確率探索など
[編集] 世界コンピュータ将棋選手権
この大会のおかげで、コンピュータ将棋が進歩した。記念すべき第一回大会は1990年12月2日、将棋会館で行われた。優勝したのは『永世名人』。
第11回からは「世界」を冠するようになった(従来から世界大会であった)。海外の実力あるソフトには、イギリスのSHOTEST、北朝鮮のKCC将棋がある。
[編集] 歴代の優勝プログラム
※名称はすべて大会当時のもの
- 第1回(1990年) - 永世名人
- 第2回(1991年) - 森田将棋 3
- 第3回(1992年) - 極
- 第4回(1993年) - 極 II
- 第5回(1994年) - 極 2.1
- 第6回(1996年) - 金沢将棋
- 第7回(1997年) - YSS 7.0
- 第8回(1998年) - IS将棋
- 第9回(1999年) - 金沢将棋
- 第10回(2000年) - IS将棋
- 第11回(2001年) - IS将棋
- 第12回(2002年) - 激指
- 第13回(2003年) - IS将棋
- 第14回(2004年) - YSS
- 第15回(2005年) - 激指
- 第16回(2006年) - Bonanza(ボナンザ)
(参考)
[編集] アマ竜王戦参加
第15回優勝の『激指』が2005年6月25日開幕のアマチュア竜王戦に特別招待され、都道府県代表を相手に予選から3連勝し、ベスト16へ進出する健闘をみせた。
[編集] 代表的なソフトウェア
コンピュータ将棋選手権出場時と商品化の際の名称が異なるソフトが多い点に注意が必要である。
- 激指 - 毎日コミュニケーションズより発売
- IS将棋 - 「最強 東大将棋」として毎日コミュニケーションズより発売
- YSS - 「AI将棋」としてアイフォーより発売
- KCC将棋 - 「銀星将棋」としてシルバースタージャパンより発売
- 金沢将棋 - アンバランスより発売
- 柿木将棋 - エンターブレインより発売
- 森田将棋 - 悠紀エンタープライズより発売
- 永世名人 - コナミより発売
- 将棋の「殿堂」 - ソースネクストより発売(中身は「ファミリー将棋3」(マグノリア)の改変バージョン)
- Bonanza - シルバースタージャパンの「銀星将棋六」に思考エンジン搭載。思考部はフリーソフトとしても提供。
[編集] コンピュータ対プロ棋士
コンピュータ将棋がプロ棋士を破る日は近いと考えられている。2005年9月、プロ棋士で北陸先端科学技術大学院大学教授を務める飯田弘之のチームが開発したコンピュータ将棋ソフト「TACOS」が同じくプロ棋士の橋本崇載とイベントで対局した。結果は橋本の勝ちとなったが、TACOS が終盤まで橋本を追いつめる展開となった。
コンピュータ将棋とプロ棋士との対局をビジネスチャンスと捉えている日本将棋連盟はこれを重く見て、同年10月全棋士と女流棋士に通達を出し、連盟に無断で公の場でコンピュータ将棋と対局しないこととした。
2006年6月、日本将棋連盟は理化学研究所と共同で「Shogi・Super-Brain研究会」を立ち上げ、棋士が指し手を読むときに脳の活動部位の測定などを行い、また、研究のためのプロ棋士とコンピュータとの対局を行うと発表した。
[編集] 関連項目
[編集] 外部リンク
カテゴリ: 将棋 | コンピュータボードゲーム