ゲルハルト・リヒター
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ゲルハルト・リヒター(Gerhard Richter, 1932年2月9日 生まれ)はドイツの画家。 現在、世界で最も注目を集める重要な芸術家の1人であり、若者にも人気があり、ドイツ最高峰の画家とされている。
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[編集] 略歴
旧東ドイツのドレスデンに生まれる。地元の藝術アカデミーで1951年から56年まで絵画を学ぶが、共産主義体制に制約を感じ、ベルリンの壁によって東西ドイツの行き来が禁止される寸前の1961年、西側のデュッセルドルフに移住。デュッセルドルフ美術アカデミーに入学。独自の作風を展開していく。
[編集] 作風
アイロニカルに、現代資本主義の現実を描く。本人曰く、絵画の形式(油彩と水彩、具象と抽象、平面的絵画とオブジェなど)は問題ではなく、ツールだと言う。そして、自らの概念(コンセプトや思想など)をできるだけ排して作品を制作しようと試みている。最も有名なのは、初期の頃から製作されているフォト・ペインティングであろう。これは、新聞や雑誌の写真を大きくカンバスに描き写し、画面全体をぼかした手法であり、その精度は驚くべきものである。しかし、そのスタイルは限定される事なく、モザイクのように多くの色を並べた「カラー・チャート」、カンバス全体を灰色の絵具で塗りこめた「グレイ・ペインティング」、様々な色を折りこまれた「アブストラクト・ペインティング」、幾枚ものガラスを用いて周囲の風景の移りこむ作品など、多様な表現に取り組んでいる。
これらの手法は、徐々に開発されていったようであるが、それらは自由に繰り返し用いられている。
また、展覧会で発行されるカタログに使われる作品写真は、いずれも1:50の比率で縮尺されており、交換可能性が意識されている。
[編集] 余談
写真が登場して以来、中世までの現実や事件の伝達手段としての絵画の役目は終わり、肖像画としても絵画は写真に精度が劣る。その様な中で、絵画の不可能性/可能性を求める試みを探っている。 また、新たに写真に付加された現実性・確実性にも、彼の絵画は動揺を与える。
概念や思想を排しているが、逆説的に、「現実」や「真実」だと認識され、信奉されている事柄を、絵画を用いて根底から揺さぶり、再考する様な、コンセプチュアルな雰囲気が全作品を通して見られる。
[編集] 参考文献
- ゲルハルト・リヒター 著、清水穣 訳 『ゲルハルト・リヒター写真論/絵画論』、淡交社(2005年) ISBN 4473032558
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