クラウディングアウト
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クラウディングアウト(crowding-out)とは、「押し出す」という意味で、経済学の上では、主に財政支出の増大が民間投資を圧迫する現象を指す。
一般には、クラウディングアウト効果として使われる。
[編集] 概要
金融政策を伴わずに財政支出が増大すると、利子率が上昇するため、民間投資が縮小する。
これにより、財政支出による国民所得増大効果の一部が、民間投資縮小による国民所得削減効果によって相殺されることになる。
以下のようなモデルを想定する。
国民所得:Y=C+I+G
総消費:C=0.9Y
総投資:I=100-4r
財政支出:G=100
総貨幣需要:L=Y-10r
総貨幣供給:M/P=1500
利子率:r
このとき
財市場均衡(IS):Y=2000-40r
貨幣市場均衡(LM):Y=1500+10r
Y=1600
r=10
I=60
となる。ここで、財政支出を拡張し、G=120とする。
Y=1640
r=14
I=44
となり、国民所得は増大するが、民間投資が減少するため、増大の効果は一部相殺されている。これがクラウディングアウト効果である。
もし、財政拡張と同時に金融緩和を行い、利子率:r=10のままに抑えれば、国民所得:Y=1800となる。
また、逆に財政支出を減少させても、利子率が低下することで民間投資が伸びるため、国民所得減少はある程度、相殺される。
[編集] 解釈
クラウディングアウト現象は、経済のバランスにより資源配分が転換される様子を表している。
この場合、政府が金融市場から借り入れをして投資をすることで金融市場が締まり、金利上昇による民間投資減少が起きる。
つまり、金融市場を通して、経済上の資源が政府投資により多く配分される代わりに民間投資への配分が減少することになるのである。先述のように同時に金融政策(緩和)を発動すれば民間投資を制約することなく政府投資を伸ばすことが出来る。ただしこれは経済上の資源に余裕がある状態(設備稼働率が低かったり失業が存在する状態)にしか有効ではない。もし経済上の資源に余裕がない状態でこのような政策を発動すると、名目経済成長率のみが高まり、インフレーションが発生する。1960年代のアメリカ経済は名目成長の内訳が実質成長から物価上昇へ変化していく好例となっている。
[編集] 実際のクラウディングアウト
実際にクラウディングアウトが起きた例として、1980年代初頭のアメリカが上げられる。
この当時のアメリカは、過剰な財政支出に起因するインフレーションに、高金利政策で対処していた。この高金利によって民間投資は壊滅的な打撃をこうむった。
このため、莫大な減税にもかかわらず、国民所得はまったく伸びず、失業者は1000万人を記録するなど戦後最も厳しい経済状況となった。
これは、金融緩和によってクラウディングアウトを回避していたアメリカが、金融引締めによって、事後的にクラウディングアウトを経験した例であり、財政支出を相殺する以上の民間投資減少が起きた。
インフレーション沈静化後は、すぐさま金融緩和が行われ、「アメリカは復活した」といわれるほど急激な景気拡張が1983年から起きた。しかし、それによる不均衡はインフレーションではなく経常赤字を生み出し、プラザ合意へとつながることになる。
日本では、1990年代の財政赤字がクラウディングアウトを起こして民間投資が減少したという見方もあるが、この間金利は低下を続けているため、誤りである。
むしろ、実質金利上昇をもたらすデフレがおきていることから、財政出動の規模が不足していたことが、民間投資へ悪影響をもたらしていた。