オペロン
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オペロン (Operon) とは、Jacob と Monod によってその存在が示唆された、ゲノム上に存在する機能的な単位のひとつ。彼らは大腸菌を用いた遺伝学的解析を通して、ラクトース代謝系の構造遺伝子群とその発現を制御する塩基配列部分とを合わせて一つの単位と考え、このような単位をオペロンと呼んだ。詳しくはラクトースオペロンの項。彼らは Lwoff と共に1965年、ノーベル生理学・医学賞を受けた。
この研究で提案されたオペロンという考え方では、生物は環境に応答するために一群の機能的に関連した構造遺伝子を染色体上にまとめた構造をもち、それを一括して発現調節しているとされる。一方で、Jacob がオペロンを形容する際に、"[ . . .] operons containig one or more genes [ . . . ]" といったように、複数の構造遺伝子が1分子の RNA へとまとめて転写されるということは、重要な特徴ではあったがオペロンの必須条件ではなかった (Jacob; 1965 (pdf))。加えると、当時はオペレーターが DNA、RNA、蛋白質のどの段階で働くのか明確にはされておらず、ラクトース代謝酵素群も一分子種の mRNA から翻訳されると証明されてはいなかった。従って、遺伝子の発現はどのように制御されているのか、つまりラクトースオペロンの項で説明されるような塩基配列成分の構成が、オペロンという概念の最も重要な点のひとつだったと言える。
ところが、その後遺伝子発現の制御の研究が進むに従って、遺伝子発現が転写の段階で調節されるということは至極ありふれた事象となり、これを取り立ててオペロンと呼称することは少なくなった。これはオペロンが普遍的な価値を持つ概念だったためだが、と同時にいささか気の抜ける発音を要求することの不幸な結末かもしれない。さらに、単一プロモーターによって転写された一次転写産物から、複数の遺伝子産物が由来することにのみ着目された結果、オペロンはおもに原核生物に見られ真核生物には基本的に存在しない、と言われるようになる。つまり、この時のオペロンは複数の遺伝子産物を支配していることが必要条件となる。真核生物の例外として、線虫類に多く存在するオペロンとはこちらのことであり、 C. elegans では全遺伝子数の1/4程度がオペロンとして転写されることが知られている。この場合それぞれの遺伝子産物はプロセシングを受けた別々の mRNA 分子から翻訳される。これは、一分子の mRNA から複数種の蛋白質が複数の翻訳開始点から翻訳されるという原核生物の機構とは異なっている。また、これらの転写産物に機能的な関連性があるとは限らない点も異なる。
現在の状況としては、原義で言うところの1遺伝子のみからなるオペロンは遺伝子と呼び、構造遺伝子部分はコーディングリージョンと呼ぶのが比較的正確かつ円滑な意思疎通を産むといえるのかもしれない。
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[編集] 大腸菌オペロンの種類
大腸菌には75程度のこうしたオペロンが存在するが、以下の2種類に分けられる。
- 誘導オペロン:ラクトースオペロンのような機能を持つ
- 抑制オペロン:トリプトファンオペロンなど(しくみは以下に述べる)
抑制オペロンは、生合成経路の酵素群をコードしており、その産物によって発現調節を受ける。簡単に、調節ステップを述べる。トリプトファンオペロンの構造遺伝子はトリプトファンリプレッサーによって調節を受ける。しかしながら、トリプトファンリプレッサーは単体ではオペレーター部位に結合することができず、トリプトファン存在下でトリプトファンリプレッサー複合体を作って、初めてオペレーターに結合する。
すなわち、先ほど述べたラクトースオペロンによく似るが、異なるのはリプレッサーが複合体を作った後に、リプレッサーとして機能するかどうかの違いである。このリプレッサーの性質の違いが、異なる2つのオペロンを見分ける方法である。
[編集] 外部リンク
The Nobel Prize in Physiology or Medicine 1965
[編集] References
Jacob, F., 1965 Nobel lecture - Genetics of bacterial cell
Jacob, F., Monod, J. 1961. Genetic regulatory mechanisms in the synthesis of proteins. J. Mol. Biol. 3, 318-356.
[編集] 関連項目
オペロンとは、東レ・デュポン社の登録商標で、ポリウレタン素材のブランド名。伸縮性に富んだ繊維が特徴。1999年、米国デュポン社のポリウレタン素材のブランドであるLycraと統一された。