ウインダリア
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『ウインダリア』は、1986年に公開されたアニメ映画。カナメプロダクションが『プラレス3四郎』、『幻夢戦記レダ』などに続いて制作したオリジナル作品。原作は藤川桂介。
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[編集] 概要
テレビアニメ『プラレス3四郎』でも藤川桂介と組んだカナメプロダクション側が藤川へ全面的にストーリーを委託。藤川は『雨月物語』を下敷きにしてオリジナルストーリーを構成、「約束」をテーマに架空の世界を舞台として戦争に翻弄された二組の男女の愛を描いた。
『ウインダリア』は前年の『幻夢戦記レダ』とは異なり、より幅広い層の人間に見てもらうことを目指して制作された。当初は3話のオムニバス形式の予定で、藤川桂介の用意した3つの物語にそれぞれ異なるスタッフを配し、競合するという企画だった。ちなみにタイトルはテーマでもあった『約束』。『ウインダリア』はその中の三つ目の話を大きくしたものである。タイトルの変更は『約束』の英訳が消費者金融プロミスと同じ名前になるから、というのが理由らしい。しかし小説版のタイトルが『ウィンダリア 童話めいた戦史』とあるように「イ」が小さくなっており、新しいタイトルには当初から混乱があった。小説版の出版は放映に先駆けた1986年3月だったが、その理由について藤川はより多くの人に関心を持ってもらいたかったため、と小説版のあとがきの中で述べている。その後『ウインダリア』はよみうりテレビの『アニメだいすき!』で過去何度か放送された。また新居昭乃は主題歌『約束』でデビューし、挿入歌「美しい星」は新居昭乃を代表する曲の1つとなっている。
なお、劇中に登場する巨木ウインダリアはオーストラリアの小村にあるという幸福の木の名をもじったものだという。
注意 : 以降に、作品の結末など核心部分が記述されています。
[編集] ストーリー
南の国イサと北の国パロは古くから不可侵条約を結び、長年平穏な関係を築いてきた。しかしパロの王ランスロは美しいイサを欲しがり、大臣カイルの勧めによって、イサの水門を解放して水没させようとした。しかしこのイサの危機は、サキの村の青年イズーによって回避された。この事件は両国の関係に暗雲をもたらす。とりわけ大きな衝撃を受けたのはイサの王女アーナスとパロの王子ジルであった。2人は密かに交際し、密会を重ねる間柄であったのだ。彼らの思いをよそに、両国は戦争に動き出す。一方、サキの村で妻マーリンと暮らすイズーのもとに、両国から戦争に協力して欲しいという依頼が…。
[編集] 登場人物
- イズー サキの村の青年。マーリンの夫。根は明るく陽気で商売上手だが、ほら吹き。マーリンにもっと良い生活をさせたいと思っているが、同時に自分の力を認めてくれない周囲に不満があり、自分を試せる場所を求めている。
- マーリン イズーの良き妻であり、良き理解者。信仰篤く、祈りを欠かさない。今のままのささやかな生活が一番だと思っており、イズーの変化に不安を感じている。
- アーナス イサの王女。女王ギネビアとハロールの娘。開放的で気が強く、おてんば。伝書鳩のクックウを飼っており、ジルと連絡を取っている。戦争の準備を始めたイサを止めようとするが…。
- ジル パロの王子。国王ランスロとクンドリーの子。アーナスと密かに交際する間柄だが、責任感の強さゆえに、父の死後パロの軍を立て直し、指揮することに。
- カイル パロの筆頭大臣。イズーにパロへの協力を要請する。策略家。
- ドルイド バンボウの恋人。豪奢な生活を夢見て、ドルイドに幽霊船の船長になるよう説得した。しかし富を得ながらもバンボウのいない生活に耐えられなくなり、半ば狂人のように幽霊船を追ってはバンボウに戻ってきて欲しいと呼びかけている。
- バンボウ 恋人のドルイドが豊かな生活を求めたために幽霊船の船長となった。劇場版では直接描かれない。
- ピラール イサの水門の番をしている老人。潮の満ち引きのさい、水門の開け閉めをしているが、それ以外のときは居眠りしている。
- シャレム 戦争の褒美として、財宝や邸宅とともにイズーに与えられた女性。しかし実際はイズーが邪魔になったさいにいつでも始末できるようにカイルが用意した刺客。
[編集] 世界観
イサ、パロはともにユーロ大陸に古くから繁栄するする大国である。ただし両国の国の歩みは全く対照的。基本的には都市国家なので、中心から離れた地域には独立を保つ村落も少なくないようである。サキの村もその1つ。パロの南に迷いの森があり、迷いの森を抜けるとサキ、さらに南にイサがある。文明はかなり発展しているが、地域によって普及度に差がある。人々の宗教形態、神々などはほとんど明らかではない。しかしマーリンのように信仰に熱い人間は常に祈りを欠かさないようである。死後、人々の魂は肉体を離れて幽霊船に赴き、そこで永遠に暮らすとされる。詳細は以下に説明。
- イサ 太陽と海と風に恵まれた国。ユーロ大陸最南端に位置する都市国家で、古くに戦争を捨て平和路線のみで繁栄してきた。イパ河河口に位置し、大規模な水門を擁する。宮殿の向かいにある大聖堂は人々の信仰の中心。人々はみな陽気で楽天的。が、悪く言えば平和ボケ。長年の平和で形式的な兵しかおらず、軍備もパロとは雲泥の差がある。しかしパロの軍があまりに脆弱化しているため互角に戦う。
- パロ 産業を発展させた軍事大国。ユーロ大陸の内陸部に位置し、古くから近隣諸国や村々を武力で併呑してきた。王都は山頂に築かれている。力と富は人々の生活も心もすっかり堕落させ、兵の訓練、統率さえままならず、よそ者には職もない有様。かつての栄光は過去のものとなっているが、プライドの高い指導者層はそのことを認めたがらない。
- サキの村 イサとパロに挟まれた農村地帯にある小村の1つで、両国の交通路にあたる。人々は素朴で、イサあるいはパロで農作物を売って生計を立てている。村の北の丘にそびえる巨木ウインダリアを宝とし、信仰している。
- ウインダリアの木 サキの北の丘にそびえる巨木。樹齢は不明。サキの村の集会の場。幸運を呼ぶ木とされ、人々に良い思い出を授けてくれるとして、村人から信仰されている。
- 迷いの森 イサとパロの間に広がる幻惑の森。人々の心を映し惑わせる。アーナスとジルの密会の場所。後に戦場となる。
- イパ河 源流をパロに発し、迷いの森を通過してイサに流れる川で、河口付近では天井川となっている。河口の水門の扱いを間違えると、水害を引き起こしてしまう。
- 幽霊船 人が死ぬと現れて、魂を集めて回る飛行船。常に天空を飛び続けているが、10年に一度、船長が交代する時のみ地上に降りてくる。一度船長になると任期が終わるまで戻れないので、船長のなリ手がない。そのためイサとパロの呼びかけで志望者には莫大な報酬が払われる。行動範囲はユーロ大陸全域に及ぶという。
- 魂 赤い鳥の姿をしている。人が死ぬと肉体から離れて天を舞い、幽霊船へと飛び立つ。
地名や人名の多くはケルトに由来している。イズー(イゾルデ)、マーリン、ランスロ、ギネビア、ドルイドなどがそうである。同じく、ハロール、カイルは、それぞれバロール、ケイであろう。イサは伝説の水没都市イスと思われる。パロ(ファラオ)、イシスはエジプトから。大樹ウインダリアは上記のとおり。
[編集] 小説版との違い
放映時間の都合上、藤川の原作が簡略化されていることは否めない。しかしその分イズーとマーリン、アーナスとジルの悲劇に焦点が絞られている。マーリンがイズーに渡したお守りは小説版ではウインダリアの葉を入れた守り袋だが、劇場版では短剣に変更されている。困ったときイズーを助けてくれるという言葉を生かすとともに、夫を戦争に送りだす妻の悲痛な決意を象徴した演出となっている。
[編集] スタッフ
- 製作:株式会社あいどる、株式会社カナメプロダクション
- 企画・制作:小野寺脩一、長尾聡浩
- 原作・脚本:藤川桂介
- 音楽:門倉聡
- 音響監督:松浦典良
- 音響助手:渡辺淳
- 美術監督:勝又激
- 背景:スタジオコスモス
- 撮影監督:枝光弘明
- 撮影:スタジオぎゃろっぷ
- 編集:掛須秀一
- キャラクターデザイン・作画監督:いのまたむつみ
- アニメーションコーディネーター:影山楙倫
- メカニックデザイン・イメージ設定:小原渉平、豊増隆寛
- サブメカニックデザイン:佐藤智彦
- レイアウト:林隆文、毛利和昭
- メインアニメーター:毛利和昭、林隆文、村中博美、田中保、いのまたむつみ、兵頭敬、影山楙倫、荒木英樹、知吹愛弓、戸倉紀元、池上裕之、小林利充、宇都宮智、和田卓也、戸澤稔、山本泰一郎、合田浩章、市川吉幸、中沢数宣、磯野智、小林智、小泉たかし、小原渉平、豊増隆寛
- 動画チェック:石田敦子
- プロデューサー:長尾聡浩
- 演出助手:政木伸一
- 制作デスク:堀辺睦生
- 進行主任:稲荷昭彦
- 監督:湯山邦彦
[編集] 主題歌・挿入歌
- 主題歌「約束」
- 挿入歌「美しい星」
- 作詞・作曲・唄:新居昭乃、編曲:門倉聡
[編集] キャスト
- イズー:古谷徹
- マーリン:神田和佳
- ジル;井上和彦
- アーナス:松井菜桜子
- ランスロ:柴田秀勝
- カイル:若本紀昭
- ギネビア:斉藤昌
- クンドリー:吉田理保子
- ドルイド:高島雅羅
- ピラール:永井一郎
- コッポ:藤本譲
- ハロール:徳丸完
- イシス:片岡富枝
- トレル:矢尾一樹
- キール:佐藤正治
- シャレム:木下由美
- クラッキ:大滝進矢
- 兵士:小林通孝
- 市民:小野健一
- 市民:中井雅之
[編集] 関連商品
- DVD 『ウインダリア』(ビクターエンタテインメント)
- VHS,Betamax,VHDがビクター音楽産業から、LDがポリドールから(再発売盤はマイカルハミングバードから)リリースされていた。
- 小説 藤川桂介『ウィンダリア 童話めいた戦史』(角川文庫)
その他
- CDシングル 新居昭乃『約束 c/w美しい星』
- いのまたむつみの画集『月の声星の夢』(富士見書房)に、『レダ』その他とともにイラストが多数収録されている。