アメリカンフットボールのポジション
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アメリカンフットボールのポジションでは、アメリカンフットボールにおける各ポジションの解説をする。
括弧内は各ポジションの略称である。
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[編集] オフェンスチーム
攻撃を担当する選手たちのこと。
[編集] バックス&レシーバーズ
(Backs & Receivers) スクリメージ・ライン後方にセットする選手、およびスクリメージ・ラインの両端にセットする選手の総称。
[編集] クォーターバック
(Quarter Back, QB)
攻撃の司令塔。別名フィールド・ゼネラル(フィールドの将軍)と呼ばれ、攻撃の基点になるポジション。語源は、アイルランドのラグビーのポジションから(当時、アイルランドではハーフバック団をハーフバックとクォーターバックに分けていた)。
ほとんどのプレイにおいて、クォーターバックは最初にセンターからのスナップを受けることになる。
スナップを受けた後、ランプレイであればRBにボールをハンドオフ(もしくはピッチ)し、パスプレイであれば時間を稼いでタイミングを見計らってパスを投げる。QBの第一の役割はパスを投げることである。
なお、QBの重要な役割として、プレイコール(プレイの決定および指示)がある。選択するプレイはハドル(円陣)で決定される場合が多いが、クォーターバックが守備側の隊形を見て、スナップ直前にプレイコールを変更(オーディブル)することもある。
クォーターバックは基本的に強肩が必要だと言われているが、実際には視野の広さ、戦術眼、判断力等が問われるので、肩は必ずしも強くなくて構わない。ただし、パスを投げられない状況に置かれると自ら走ることもあるので、ある程度の機動力ないしは走力も必要となる。
最も総合的な能力が要求される花形のポジションであり、ジョー・モンタナなど有名選手も多い。
[編集] ランニングバック
(Running Back, RB)
ランプレイの主役。QBからハンドオフされたボールを持って走るのが主な役割である。パスプレイにおいては、パスのターゲットとなったり、ラインと一緒にQBを守ることもある。
当然、足の速さが重視されるが、タックルに負けないパワーも求められる。パワーを活かして突進するタイプ、小回りの良さ(カットバック)を活かして相手のタックルを巧みにかいくぐるタイプ(正式なポジション名ではないが、スキャットバックと呼ぶこともある)など、選手ごとの個性が光るポジションである。
セットする位置によって、フルバック(FB、QBのすぐ後ろにセット)、ハーフバック(HB、TフォーメーションにおいてFBの側方にセット)、テイルバック(TB、IフォーメーションにおいてFBの後方にセット)というように呼び分けることがある。
なお、FBは自身がボールを持つこともあるが、他のRBの前を走り、相手をブロックし走路を開くこと(リードブロック)が主な役割となる。
[編集] ワイドレシーバー
(Wide Receiver, WR)
QBとともにパスプレイの主役となるポジション。QBから投げられたパスを捕球するポジション。単にレシーバー、またはワイドアウト(Wideout)とも呼ばれる。主に足の速さと確実な捕球が要求される。
セットする位置によってスプリットエンド(SE、Tとの間隔をあけてセット)、フランカー(FL、TEの外側に間隔をあけてセット)、スロットバック(SB、TとSEの間にセット)、ウィングバック(WB、TEのすぐ脇にセット)というように呼び分けることがある。
ルール上、スプリットエンドはラインマン、他はバックスとして扱われる。
最近はカレッジではモバイルQB(足の速いQB)として活躍していた選手をNFLでWRに転向させることがある。NFLでQBとして活躍するには足りないが、トリックプレーでパスを投げさせたい時に最適、というわけである。なお、このような一人二役の選手をスラッシュ(WR/QBのように表記されるため)と呼ぶ。
[編集] タイトエンド
(Tight End, TE)
左右どちらかのタックルの外に位置し、状況に応じパスキャッチとブロックの両方を行うポジション。
現代NFLではTEへのパスプレイが増えており、レシービングTEの時代とも言われる。
[編集] オフェンシヴライン
(Offensive Line, OL)
スクリメージ・ライン上にセットする選手のうち、中央の5人を指す。ラインメンともいう。スナップ時にCがボールを持つ以外、ルールにより、ほとんどボールに触れることが認められない。
ランプレイにおいてはRBの走路を切り開くためのブロックを行い、パスプレイにおいてはパスを投じるまでQBを保護(パス・プロテクション)する。ボールを扱わないため目立たないポジションであるが、OLの働きがラン、パスともに攻撃の成否のカギとなる。
[編集] センター
(Center, C)
ラインの真ん中に位置する。QBにボールをスナップする役割がある。プレイ開始後は、他のラインメンと協同してブロックを行う。
[編集] ガード
(Guard, G)
センターの両側に位置するポジション。左ガード(LG)と右ガード(RG)の2名。
ラインメンとしてのパワーだけでなく、外へのランプレイ時のリードブロック(RBの項を参照)に参加することもあるため、機動力も要求される。
[編集] タックル
(Tackle, T)
ガードの外に位置するポジション。左タックル(LT)と右タックル(RT)の2名。
他のラインメンと同様の役割を負うが、ラインの両サイドを担うためパス・プロテクションに関しては特に責任が重い。
ディフェンシヴ・タックル(DT、後述)と区別するため、オフェンシヴ・タックルと呼ぶこともあるが、たんにタックル(T)といった場合はこちらのポジションを指す。
[編集] ディフェンスチーム
守備を担当する選手たちのこと。大きくDL、LB、DBと3区分される。
[編集] ディフェンシヴライン
(Defensive Line, DL)
スクリメージライン上にセットする選手の総称。フォーメーションにより異なるが、通常3~4人である。ディフェンスの中でも特に大柄な選手が担当する。
手を付いてセットする姿勢から、ダウン・ラインマン(Down Lineman)と呼ぶ場合もある。
[編集] ディフェンシヴタックル
(Defensive Tackle, DT)
DLのうち、内側に位置するポジション。ランに対する守備が主な役割となる。
3-4フォーメーションのときはDTは1人となり、その時は特にNT(ノーズタックル)と呼ばれる。
[編集] ディフェンシヴエンド
(Defensive End, DE)
DLのうち、外側に位置するポジション。
ラインの外側へ来たRBを防ぐだけでなく、パスプレイ時にQBへ向かって突っ込んでプレッシャーをかける(パスラッシュ)ことが役割となる。ラインバッカーがブリッツを仕掛ける場合に、代わりにパス・カバーをすることもある。
[編集] ラインバッカー
(Linebacker, LB)
DLの後方にセットする選手の総称。フォーメーションにより異なるが、通常3~4人である。
[編集] インサイドラインバッカー
(ILB)
LBの中で中央に位置するポジション。LBはディフェンスの中央に位置し、パス、ラン共に対処する、ディフェンスの中心となるポジションである。ILBが1人だけの場合はMLB(ミドルラインバッカー)と呼ばれる。マイク(Mike)とも言う。
[編集] アウトサイドラインバッカー
(OLB)
LBの中で外側に位置している選手を指す。ILBよりブリッツを仕掛けることが多くなるポジション。担当サイドの決め方として、単純に左右とする場合と、攻撃側TEの存在する側と存在しない側とする場合がある。前者の場合、左側を特にLOLB、右側を特にROLBという。後者の場合はOLBとは言わず、TEの存在する側をSLB(Strong-side LB)、存在しない側をWLB(Weak-side LB)という。SLBはサム(Sam)、WLBはウィリーまたはウィル(Wlily,Will)とも言う。
[編集] ディフェンシヴバック
(Defensive Back, DB)
フィールドの後方および両サイドを守る選手の総称。通常は4人。
セカンダリーとも言う。
[編集] コーナーバック
(Corner Back, CB)
フィールドの両サイドにセットする。通常は2人。
主にパスに対する守備を担当し、両サイドへのパスをカバーする。攻撃側のエースレシーバーと競り合うことが多いため、特に足の速さが求められる。
オープンへのランプレイやリバースプレイを止める役割もある。
[編集] セイフティ
(Safety, S)
ディフェンスの最後尾にセットする。ディープゾーンへのパスをカバーするとともに、相手の攻撃を防ぐ最後の砦となる。守備範囲の広さが求められる。
なお、通常はストロングセイフティ(SS)とフリーセイフティ(FS)の2人からなるポジションであるが、近年では両者の区別は曖昧である。
[編集] ニッケル、ダイム
(Nickel, Dime)
3rdダウンで残り距離が長いなど、パスプレイの可能性が高い場合、パスディフェンス強化のためにDBを5人以上置くことがある。このとき、5人目をニッケル、6人目をダイムとよぶ。
ニッケルとは米国5セント硬貨のことで、このポジション名はこの"5"に由来する。ダイムとは米国10セント硬貨のことで、2人目のニッケル(2×5)であることに由来する。
[編集] スペシャルチーム
キッキング・ゲームで登場する選手たちのこと。
[編集] キッカー
(Kicker, K)
フィールドゴールやトライフォーポイント、キックオフでキックをする選手。チームによってはキックオフ専門のキッカーや、パンター兼任のキッカーもいる。
[編集] パンター
(Punter, P)
パントを行い、ボールを相手陣の奥深くに押し込むポジション。キックオフを担当することもある。
[編集] ロングスナッパー
(Long Snapper, LS)
フィールドゴール、パント時や、ショットガンフォーメーション時にスナップを担当するポジション。その名の通り、長いスナップをする場合に出てくる。センターが兼任する場合と専門の選手が務める場合がある。
[編集] ホルダー
(Holder, H)
フィールドゴール時に、キッカーがボールをキックするためにボールを支えるポジション。ボールの扱いに慣れていることが求められるのでほとんどはパンター、あるいは控えQBが務める。稀に正QBが務める。
正QBでホルダーをやっている例として、現役ではデンバーのジェイク・プラマーが挙げられる。
セントルイス・ラムズではボールを手で扱うことに長けたWRがホルダーをつとめることが多い。かつてはリッキー・プロール、現在はデイン・ルッカーがホルダーをつとめている。
[編集] リターナー
(Kick-off Returner, KR/Punt Returner, PR)
キックオフ/パント時に、レシービング・チームの最後方に位置し、キック/パントされたボールを捕球し、リターンするポジション。飛球を確実に捕球し、スピードを生かしてフィールドポジションを回復することが求められることから、主に控えのWR・RB・CBなどが務める。 なおKRとPRでは求められる能力が若干異なるので、別々の選手が担当することも少なくない。