こませ網漁
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こませ網漁(こませあみりょう)とは、瀬戸内海において古くから行われている漁法で、潮流に乗って回遊する魚類(イカナゴ、フグなど)を網口の両端を錨で固定した袋網で待ちうけ採捕する漁法。
[編集] 概要
約6時間毎に転流する潮流を利用しており潮流が転流して間もなく投網し、次の転流まで約6時間施網したままで操業し、転流直前に揚網することで文字通り魚を一網打尽にするものである。網口の両端を固定しているため、操業中は移動することが出来ず、付近の船舶(特に、喫水の深い大型原油タンカー)の航行に支障を来たしている。別名いかなご漁と呼ばれるように、元々はイワシ系の多卵生魚であるイカナゴを狙った漁法だが、近年は、盛漁期(3月~5月)にフグを狙って、水深の深い航路内で南北にわたって網を張ることが多く、巨大船、特に VLCC(Very large Crude Carrier) と言われる原油タンカーが逆航路航行、航路外避航を余儀なくされることも多い。
[編集] 法律上における「こませ網漁」の解釈
東京湾、瀬戸内海、伊勢湾における船舶交通と漁業の両立を図り、海難事故を未然に防止する目的で、海上交通安全法が昭和48年に制定されている。この中で、指定された航路(瀬戸内海では、備讃瀬戸東航路、同北航路、水島航路、明石海峡航路、来島海峡航路など)における巨大船(船長200M以上の船舶)の航行の優先性、錨泊の禁止等が規定されている。
しかしながら、法律制定過程で、当時の海上保安庁と水産庁間で妥協が図られ、
- 「こませ網漁」については、同法で規定した錨泊とは見なさない
- 従来から実施されてきた漁業活動への規制は必要最小限度とする
- こませ網漁等の操業は従来通り実施できるよう船舶航行時間を出来る限り調整する
などとした旨の覚書が作成されており、航路内における船舶交通の優先性に関する規定は事実上骨抜きにされている。
このため、高松海上保安部、航路管制を担う備讃マーチスも、こませ網漁業者に対して強固な指導を行う権限を有しておらず、航路を閉塞しないよう呼びかけたり、閉塞状況を航行船舶に情報提供するに留まっている。また、昭和47年の衆議院交通安全対策特別委員会において、船舶交通と漁業操業が両立しない場合、国が漁業者に対して補償を行うと決議されたが、現実のものとはなっていない。こうしたことから、海上保安庁、第5・6管区海上保安本部、高松海上保安部、備讃マーチス、荷主及び内海水先人会等により、備讃瀬戸海上交通調査委員会が設置。こませ網漁盛漁期の可航水域状況予想表作成、警戒船配備、出入港調整等の対策を講じているが、本問題の抜本的解決の見通しは未だに立っていない。