PLANET-C
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PLANET-C又はVCO(Venus Climate Orbiter: 金星気候衛星)は、宇宙航空研究開発機構 (JAXA) 宇宙科学研究本部 (ISAS) (旧文部省宇宙科学研究所)が計画している金星探査ミッション。観測波長の異なる複数のカメラを搭載して金星大気を立体的に観測する。
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[編集] 目的と予定
従来の気象学では説明ができない金星の大気力学(四日循環と呼ばれる惑星規模の高速風など)のメカニズム解明を主目的としている。このミッションの成果は、惑星の気象現象を包括的に理解することにつながると期待される。加えて、赤外線により金星の地表面の物性や火山活動を調べ、また地球出発から金星到着までの間に惑星間の塵の分布(黄道光)を観測する。
PLANET-Cは2010年夏の打上げを予定している。当初はM-Vロケットによって打ち上げられる予定であったが、新型固体ロケット開発に伴うM-Vロケットの運用中止に伴い、H-IIAロケットによる打ち上げに変更された。金星軌道投入後は、約2年間にわたり金星大気の挙動を継続的に観測する予定である。
[編集] 状況と構成
2002年-2004年の概念設計フェーズを経て、2004年から基本設計フェーズがスタートした。2006年9月現在、衛星の各サブシステム(推進系、通信系、姿勢系など)や観測機器が開発されている。今後は詳細設計フェーズがスタートし、試作モデル(PM)の製作およびフライトモデル (FM) の設計・製作が行われる。
衛星本体の重量は500 kg程度になる見込みであり、モーメンタムホイールを使用した3軸制御にて姿勢を安定させる。通信は主に高利得アンテナを用いて行われ、臼田宇宙空間観測所の64 mパラボラアンテナとの間で最大約32 kbpsの通信回線が確保される。
観測機器は、地表面からの赤外線放射や雲による太陽散乱光を捉える1 μmカメラ (IR1)、雲の下の大気からの赤外線放射を捉えて低高度の雲や微量ガスの分布を探る 2 μmカメラ (IR2)、雲からの赤外線放射を捉えてその構造を探る中間赤外カメラ (LIR)、雲による太陽 散乱光を捉えて二酸化硫黄ガスなどの分布を探る紫外イメージャ (UVI)が搭載される。雷放電が起こっているか否かを把握するための雷・大気光カメラ (LAC) も搭載される。また、通信機器として超高安定発振器 (USO) を搭載し、探査機から地球に向けて送信される電波が金星大気をかすめる際に電波の周波数と強度が影響を受けることを利用して大気の層構造を調べる電波掩蔽観測も行われる。 また、太陽電池パドルは太陽面に固定され、その影と本体の影を利用して、衛星からの放熱を行う。
PLANET-Cの観測機器開発には、JAXA以外の大学・研究所が参画している。