陸軍
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陸軍(りくぐん、army)とは、陸上における戦闘を主な任務とする武装組織を指す。歴史的に歩兵を主力とし、現代では戦車や火砲などの陸上で運用する兵器を装備した部隊が加わる。現代日本においては陸上自衛隊がこれに相当する。
海軍や空軍は、比較的少数の技術者集団であり、志願制が採られることが多い。それに対して、陸軍は、多数の要員を必要とする関係上、徴兵制が採られる場合が多く、また部隊は各地域に分散配置されることから、「郷土部隊」として国民との接点が多い関係にある。
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[編集] 概論
人類の基本的な生活基盤である、政治機関、居住地、産業などのほとんどは陸地にあり、故に古来から陸上の軍事力は形成され続けていた。また、設置や運営に大規模な資金を必要とする空軍や海軍に比べて、突撃銃などによる比較的安価な投資による設置も可能であることから、ほとんどの国家では常設の陸軍を備えている。 地上における野戦、市街戦、ジャングル戦などさまざまな地上で起こる戦闘への対応を主任務とし、兵員と兵器システム、兵站部門、研究機関、訓練部門から主に構成される。
[編集] 任務
陸軍は本質的には陸地という人間の極めて根本的な生活基盤を制圧することで、そこに住む人間の支配下に入れることがその任務である。長期的・持続的に陸地を占拠・統制することができるのは陸軍だけであると考えられている。 暴力による強要を戦争の本旨とするクラウゼヴィッツの命題に根ざすならば、戦争を行う機関である陸軍の本旨もまた暴力による強要となる。また、国家をある領域での合法的な暴力行使の独占を求める集団として定義するマックス・ウェーバーの考えからも、この暴力を担保する集団としての意味を見いだせる。 また治安維持やカウンターテロとしても陸軍が果たす役割は大きく、対外的だけでなく、国内においてもその必要性は存在し、また時として陸軍が周辺国に比して極めて弱体な場合や独裁が行われている場合はこちらが本旨になる場合も存在する。
また陸上のすべてが活動場所であることから陸上部隊が平時に常駐する場所を駐屯地 (camp) と呼ぶ。この英単語から分かるように、陸軍は特定の基地に依存する事なく、野外において独立した活動を行うことができる。このために、陸軍は特に高い自己完結性を保持している。この自己完結性の高さや、大規模な人員を擁している点、大量の重機、輸送機材等を有している点から災害派遣等で活躍する場合も多い。
[編集] 構成
陸軍を構成する要素は陸上戦闘の複雑性もあって、非常に多様なものとなっている。
[編集] 兵員・部隊
兵員は現役と予備役等の役種から構成される。その役割区分から見れば、士官、下士官、兵士と大まかに分かれ、されにそれぞれがいくつもの階級に分れる。加えて実際に戦闘任務に当たる戦闘兵種である歩兵、砲兵、戦車、防空、工兵、航空等に分けられ、さらに後方支援を行うための後方兵種と呼ばれる通信、武器、需品、衛生、化学、会計、警務、音楽などの科に分類される。部隊編成から見れば、装備と兵種が同様に編制された分隊、小隊、中隊、大隊、連隊、さらにさまざまな兵科と装備が混合されて編制された旅団や師団に分けられる。しかし、これらの編制は実際の運用上は絶対的でなく、歩兵連隊に戦車大隊や砲兵大隊を加えて編組した連隊戦闘団のような編組部隊や編合部隊といったのが作られる場合がある。
ただし、こうした階級や兵科の分類、部隊の編制については国や時代によって非常にばらつきがあるため、一概には言えない。詳細は軍隊における階級呼称一覧、兵科、近代陸軍の編制を参照。
ちなみに陸軍は人的依存度が高く、人件費の高い先進国では調達予算への圧迫や装備品の価格高騰とあいまって予算的な維持について問題を示す場合も多い。
空軍が独立するまでは、陸軍が空母機動部隊を除くすべての兵器としての航空機を運用していた国が多い。現在でもヘリコプターを始め一部の航空機は陸軍に所属している国が多い。
[編集] 各種システム
現代の陸上戦闘には非常に多様な兵器や部隊を運用する必要があり、それを制御するための各種システムは先進国の陸軍では一般的に導入されている。
- 情報システムとは敵部隊や地形に関する情報資料を収集し、その資料を指揮所などに伝達し、分析する一連のシステムを指す。的確な指揮統制や部隊指揮、該当の情報が必要な部隊への伝達を行うためのものである。その手段として、衛生やレーダーなどによる画像や電磁波などの各種センサーから得る方法がある。近年は通信技術の発達との関連でよりリアルタイムの情報が求められるようになってきており、よりこのシステムの整備が重要となってきている。
- 機動・打撃システムとは部隊が敵部隊に対して優位に立つために移動し、戦闘力を発揮するための一連のシステムを指す。このシステムが適切であれば迅速かつ効率的な先制の可能性を得、戦闘力の的確な運用を行うことができる。具体的には陸上における機動打撃の基幹的戦力は戦車部隊であり、APC、自走砲、工兵車両などが組み合わせられて、戦場で運用される。
- 火力システムとは火砲や個人携帯火器など各種火力をもって的確に敵の戦闘部隊や施設を打撃する一連のシステムを指す。砲兵部隊の射撃能力も近年の技術躍進もあってリアルタイム化、精密化が進んでおり、目標の補足から火器の射程や目標までの距離、気候、地形などの諸情報の処理、火砲の射撃制御、指揮統制などのシステムが総合的に向上している。
- 通信システムとはあらゆるシステムの情報の収集や伝達を支える基幹的なシステムである。最も原始的な通信手段としては狼煙や手旗などがあり、現代の技術としては光通信や電波を利用した通信がある。多くの先進国ではこのシステムは重視されており、しばしば一部の機能が重複した通信システムを保有し、作戦立案や部隊運用、兵站管理、他の軍種や外国との連携など幅広い分野で生かされている。
[編集] 海軍、空軍との違い
海軍、空軍と比べた場合の陸軍の最大の特徴は、占領、つまり某領域の排他的支配が出来という点である。海軍や空軍はその性質上、領域を占有し排他的な支配を打ちたてるという事が出来ない。制海権、制空権という概念は、かかる地域における排他的な支配を意味するのではなく、かかる地域への敵部隊の侵入を防ぐ事が出来るという意味であり、究極的にそれは敵策源の破壊によってもたらされる性質のものである。 比喩的に言うならば、陸軍の戦いは面対面の戦いになり、海軍、空軍の戦いは点対点、またそれを結ぶ線の戦いと言える。 ここで、占領の概念が存在する陸軍は、占領した地域に対する攻撃を防ぐ防御という概念が存在し、攻撃と防御の相互作用が発生する。
[編集] 後方支援
陸軍は海軍や空軍に比べ、後方支援への依存度が高いと考えられている。陸軍は非常に多様な兵器と多くの兵員を抱えており、食料、水、燃料、銃弾、砲弾、医薬品など幅広い物資が大量に必要となる。海軍は艦艇自体が物資運搬手段であり、空軍においては航空機はその機動力の高さから、基地との繋がりが強いため、補給を受けることが比較的容易である。陸上戦力がしばしば鈍足になる理由は、陸軍という組織は後方支援への依存度を高めざるをえないこういった事情がある。 反面、独自の野外に展開出来る後方支援組織を有する陸軍は、その性質上港湾、空港に依存しなければならない海軍、空軍に比べ抗堪性が高いとも言える。航空機は空港を破壊された場合すぐにでも活動不能になるし、海軍も時間的猶予はあるにせよじきに活動出来なくなる。反面、陸軍も補給処といった弱点を有するものの、その存在は港湾や空港とは違い代替可能な普遍的組織である。
[編集] 主な陸軍
[編集] ヨーロッパ
[編集] アジア
[編集] アメリカ
[編集] 関連項目
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