鉄道営業法
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鉄道営業法(てつどうえいぎょうほう;明治33年3月16日法律第65号)は、鉄道運送に関する民法及び商法並びに刑法の特別法である。最近の改正は、平成11年(1999年)12月22日法律第160号。管轄官庁は、国土交通省。
通称・略称 | なし |
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法令番号 | 明治33年法律第65号 |
効力 | 現行法 |
種類 | 交通法 |
主な内容 | 鉄道事業者と利用者が守るべきルールについて |
関連法令 | 鉄道事業法 |
条文リンク | 総務省法令データ提供システム |
目次 |
[編集] 構成
- 第1章 - 鉄道ノ設備及運送(第1条~第18条ノ4)
- 第2章 - 鉄道係員(第19条~第28条ノ2)
- 第3章 - 旅客及公衆(第29条~第43条)
鉄道ノ設備及輸送、鉄道係員、旅客及公衆の3章からなり、鉄道運送の安全の確保と円滑な利用のために事業者と利用者(消費者)が守るべきルールを規定し、これに反する行為には罰則を課している。下位法令として、鉄道の施設と車両の構造を定めた 鉄道に関する技術上の基準を定める省令、運転保安規範を定めた運転の安全の確保に関する省令(軌道法の下位法令でもある)、運賃その他の運送条件を定めた鉄道運輸規程などが国土交通省令としてある。
本法は明治に制定されていることから、貨物輸送の規定を重点にした条文が多い。
本法は、鉄道に対して適用されるもので、軌道法上の軌道には適用されない。そのため、後述のような問題がある。
[編集] 現状との乖離がある規定
(原文カタカナ)
こんにちのラッシュ時の状況などを考えると疑問を生じる規定であるが、これらは明治時代での座席定員制が常識だった頃の名残である。現在の法律解釈では、鉄道事業者が強制して旅客を乗車させているわけではなく、旅客がラッシュ時に座席が無いことも、定員を超えていることも納得して乗車しているので、違法とはならないものとされている。しかし、ラッシュ時には座席がなくなる車両も出現していることから、将来的には何らかの改正が必要な規定であると思われる。
[編集] 鉄道と軌道での矛盾
本法は軌道法上の軌道には適用されない。軌道法には、本法のような規定が存在しておらず、省令である軌道運輸規程及び軌道係員規程により定められている。軌道運輸規程には罰則まで定められているが、それは法律により直接委任されてものではなく、諸説あるが日本国憲法施行の頃までにそれらの規定が失効しているとされている。それ以外にも、鉄道営業法で規制や罰則を定めておきながら、軌道法令では対応しなかったため、刑法やそのほかの法律で処罰できることもあるが、鉄道では鉄道営業法で処罰できるものが、軌道では処罰できないという状況になることで、以下のような問題があると考えられる。
[編集] 鉄道営業法第の罰則に対応するものが失効の例
軌道係員の制止に反し左の所為を為したる者は三十円以下の罰金又は科料に処す (軌道運輸規程第19条・鉄道営業法第43条に相当)
- 客車の乗降口以外より乗降したるとき
- 旅客の乗用に供せさる場所に乗車したるとき
- 喫煙禁止の車内に於て喫煙したるとき
軌道係員の許諾を受けすして新設軌道内に立入りたる者は科料に処す踏切番人の制止に反し踏切道に立入りたる者亦同し (同規程第20条・同法第37条に相当)
前二条の罪を犯し又は車内に於て秩序を紊るものあるときは軌道係員は之を車外又は軌道地外に退去せしむることを得 (同規程第21条・同法第42条に相当)
軌道係員職務取扱中旅客若は公衆に対し失行ありたるときは科料に処す(同規程第22条・同法第24条に相当)
[編集] 軌道法令で対応しなかった例
鉄道係員の許諾を受けすして左の所為を為したる者は五十円以下の罰金又は科料に処す
- 有効の乗車券なくして乗車したるとき
- 乗車券に指示したるものより優等の車に条りたるとき
- 乗車券に指示したる停車場に於て下車せさるとき (第29条)
列車警報機ヲ濫用シタル者ハ五十円以下ノ罰金又ハ科料ニ処ス (第32条)
旅客左の所為を為したるときは三十円以下の罰金又は科料に処す
- 列車運転中乗降したるとき (第33条)
制止を肯せすして左の所為を為したる者は十円以下の科料に処す
- 婦人の為に設けたる待合室及車室等に男子妄に立入りたるとき (第34条)
鉄道係員の許諾を受けすして車内、停車場其の他鉄道地内に於て旅客又は公衆に対し寄附を請ひ、物品の購買を求目、物品を配付し其の他演説勧誘等の所為を為したる者は科料に処す (第35条)
車両、停車場其の他鉄道地内の標識掲示ヲ改竄、毀棄、撤去し又は灯火を滅し又は其の用を失はしめたる者は五十円以下の罰金又は科料に処す (第36条) (2)信号機を改竄、毀棄、撤去したる者は三年以下の懲役に処す
暴行脅迫を以て鉄道係員の職務の執行を妨害したる者は一年以下の懲役に処す (第38条)
左の場合に於て鉄道係員は旅客及公衆を車外又は鉄道地外に退去せしむることを得
- 有効の乗車券を所持せす又は検査を拒み運賃の支払を肯せさるとき
- 第三十三条第三号の罪を犯し鉄道係員の制止を肯せさるとき又は第三十四条の罪を犯したるとき
- 第三十五条、第三十七条の罪を犯したるとき
- 其の他車内に於ける秩序を紊るの所為ありたるとき
(2) 前項の場合に於て既に支払ひたる運賃は之を還付せす (第42条)
[編集] 大阪市営地下鉄(軌道)と東京地下鉄(鉄道)の場合
事業者や警察当局では実務上同一視しているが、法律上は次のように違いがある。
- 不正乗車の場合
- 東京地下鉄は鉄道なので、、鉄道運輸規程第19条に基づき、乗車区間相当額か、2倍以内の増額運賃を請求でき、鉄道営業法第42条第1号により退去させることができるが、大阪市営地下鉄は軌道法上の軌道であり、同規定に相当するものがないので、増額運賃の請求や退去させる根拠もない。
- 係員の失行・職務違反等
- 東京地下鉄では、失行であれば鉄道営業法第24条違反になり、職務違反やその行為での危険の恐れは第24条違反になるが、大阪市営地下鉄では、適用法令がないので、旅客に暴言を吐いたり、職場放棄をしても対応する刑罰がない。
- 施設の管理
- 大阪市営地下鉄では、停留所内や車内で演説・販売をしても第35条が適用されないので、鉄道営業法での処罰も退去もさせることができない。
- 車内の喫煙・女性専用車
- 大阪市営地下鉄の車内でたばこを吸っても、女性専用車に入っても処罰も、退去もできない。
[編集] 鉄道と軌道の混在する区間
ゆりかもめ・福井鉄道福武線・近鉄けいはんな線などのような鉄道と軌道の混在する路線については、1つの路線であっても、法令上前述の場合と同様のことが起こりうる。
[編集] 免許・資格
- 動力車操縦者運転免許