鉄の処女
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鉄の処女 (てつのしょじょ) は中世ヨーロッパで刑罰や拷問用いられたとされる虚構の拷問具。アイアン・メイデン Iron Maiden、悲しみの聖母と呼ばれることもある。16世紀にドイツのニュルンベルクで作られたとされるものが特に有名である。
聖母マリアをかたどった高さ約 2 メートルの鉄製の棺で前面は棺はかなり厚く作られ、犠牲者の悲鳴は外に漏れないようになっている。しかし、現存するものは、すべて19世紀半ばのニセモノであり、まったく新しく捏造されたか、中世の本物の恥辱のマント(懲罰具だが拷問処刑具ではない)の内側に後から鉄の針を付けたものである。すでにローテンブルク刑罰博物館では、後から付けられた鉄針を外して展示している。
罪人はこの鉄の処女の懐に入れられ棘つきの腕に抱きしめられる。 扉を閉じると扉の部分にある多くの棘に全身を刺され大量出血・ショック死等で亡くなると言われている。 だが多くの罪人は棘によって死に至る前に自白したりショック死したと言われている。
[編集] ニュルンベルクの鉄の処女という近代伝説
この虚構の出所は、アルトドルフ大学哲学教授ヨハン・フィリップ・シーベンケースが1793年の本で広めた聖フェーメ団の私刑裁判の話であり、1533年のニュールンベルク年報に基づく、とされているが、そのような記録書類は実在しない。そもそも聖フェーメ団は、ケルンを中心とするヴェストファーレン地方の秘密結社であり、たしかに同時代に皇帝カール4世が公認したとはいえ、地域と状況が違いすぎる。また、このジーベンケース報告以外には、実物はもちろん、記録や図像も存在しない。しかし、このジーベンケース報告を元に『ドラキュラ』のイギリス人小説家ブラム・ストーカーが恐怖小説『細君(Squaw)』(1945年)において、ニュールンベルクの鉄の処女を登場させた。おりしもニュールンベルクその他のドイツ都市は空爆で完全破壊されており、連合国の占領と裁判に際し、小説に合わせて数多くのニセモノが捏造され、本国に持ち帰えられ、世界的に有名になった。
ハンガリーの伯爵夫人、エリザベート・バートリーが作らせたと伝えられている。犠牲者が死んだ後、棺の扉を開けると棺の床が抜けて死体は水で城の外に流されるようになっている。
一説では、処女の血を浴びると肌が綺麗になると信じたエリザベートが、村中の美しい処女を集め、血を絞り取るために作らせたともいわれており、棺から流れた処女の血は、管を通してバスタブへと注ぎ込まれる仕組みだったという。
日本には明治大学博物館(刑事部門)に複製が国内で唯一展示・収蔵されている。
[編集] 鉄の処女の出てくる作品
注意 : 以降に、作品の結末など核心部分が記述されています。
- 漫画
- アニメ
- 「鋼の錬金術師」第二話で鉄の処女らしきものが登場する。
- 「ひぐらしのなく頃に 綿流し編」祭具殿と園崎邸の中にある拷問室に鉄の処女らしきものがある。
- 「スクールランブル二学期」第12話で刑部絃子の部屋のトラップとして登場する。
- ゲーム
- サークIII トラップ
- 真・女神転生II - 意志を持ち悪魔となって彷徨う「アイアンメイデン」
- ドラゴンクエストVIII 空と海と大地と呪われし姫君-教会の地下にあったが、実は閉めても何も起こらず、脱獄用に改造してあった。
- ウルティマオンライン-(MMORPG)ダンジョンの随所に固定トラップとして存在。ダブルクリックで開き、その状態で近づくと扉が閉まりダメージを受ける。最近では新ダンジョンの入り口としても使用されている。
- バイオハザード4-敵キャラクターの名称. 全身に無数の伸縮自在の針を有している. 腕を伸ばして対象を掴んで抱き寄せ, 針で串刺しにする.
- 影牢 - 固定トラップとして登場。敵に大ダメージを与え、かつコンボを繋げやすい初心者向けのトラップ。前に人が立つと自動的に扉が閉まる。誤ってプレイヤーが引っかかってしまうことも。なお、DEATH INFOは「鉄の処女に串刺しにされる」。
- ギルティギア - ミリア・レイジの一撃必殺技名
- 魔剣X - 敵キャラクターの名称。八卦ダルが拷問具アイアンメイデンで殺した女性で作った石死病ゾンビ。拷問具(アイアンメイデン)の中に入った姿をしており、通常時は拷問具の蓋を閉じてじっとしている。正面から近づくと蓋を開いて針を伸ばし、「イタイイタイ」と叫びながら走り寄って攻撃してくる。
- 小説
- 赤川次郎『三毛猫ホームズの騎士道』
- 島田荘司『アトポス』 - 序盤におけるエリザベート・バートリーについての章で登場。
- 吉田直『トリニティ・ブラッド』
- 映画
- 金田一少年の事件簿(蝋人形城殺人事件)
- "Novel of the Iron Maid"(アーサー・マッケンの『三人の詐欺師』の一部)
- 流行り神 -警視庁怪異事件ファイルー (『チェーンメール』)
- スリーピー・ホロウ(ティム・バートン監督 主人公のトラウマの元である、彼の母の処刑はこれにより行われる)
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