量子数
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量子数(Quantum number)は、量子力学において、ある量子状態を指定する数のこと。系を量子力学的に解く場合、得られるエネルギー固有値(以下、固有値)は連続ではなくとびとびの値となり、それぞれに適当な番号付けが行われる。普通、最もエネルギーの低い固有値をゼロ番目として、エネルギーの低いものから順に高いものに向かって番号付けしていくことが多い。
[編集] 調和振動子
一例として、調和振動子をシュレーディンガー方程式から解いた場合、固有値εは、
となる。で、hはプランク定数、ωは角振動数である。ここで出て来る整数n()が量子数である。
[編集] 主量子数
簡単のため水素原子の場合を考える。水素原子の電子のエネルギー固有値は次のようになる。
εnはエネルギー固有値、eは素電荷、Zは、Zeで原子核の電荷(水素の場合、Z = 1)、ε0は真空の誘電率である。上式で出てくる量子数はnで、となる。このnを主量子数と言う。主量子数は1から始まる(ゼロでない)。これに関係する量子数に方位量子数、磁気量子数がある。主量子数がnの時、方位量子数l、磁気量子数mは、
の値を取り得る。これらに対応する固有値は普通は同じエネルギーに縮退している(外場の存在などにより縮退が解ける場合もある)。この数の合計は、
となり。主量子数nの状態はn2重に縮退している。上に示した水素のエネルギー固有値は非相対論的に解いた結果で、スピン軌道相互作用の影響やラムシフトなどは考慮していない。