藤原帰一
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
藤原 帰一(ふじわら きいち、1956年6月16日 - )は、日本の政治学者。東京大学大学院法学政治学研究科教授。専門は、国際政治学、比較政治学、フィリピンを中心とした東南アジア研究。
総合雑誌・新聞への寄稿も多く、2002年から2004年まで、『朝日新聞』の論壇時評を担当。また2002年以後は、日曜討論(NHK),視点・論点(同)、ワールドビジネスサテライト(テレビ東京)、NEWS23(TBS)などテレビ出演も多い。
目次 |
[編集] 略歴
東京都出身。1975年麻布高校卒業、1979年東京大学法学部卒業、1984年同大学院博士課程単位取得満期退学。フルブライト奨学生としてイェール大学大学院に留学。東京大学社会科学研究所助手(1984年-1987年)、千葉大学法経学部助手・助教授(1987年-1992年)、東京大学社会科学研究所助教授(1992年-1999年)をへて、1999年4月から現職。その間にフィリピン大学アジアセンター客員教授、米国ウッドローウィルソン国際学術センター研究員、ジョンズ・ホプキンス大学高等国際研究院客員教授、英国ブリストル大学客員教授などを歴任。
[編集] 人物
憲法9条に関しては改正不要の立場をとり、『朝日新聞』や『論座』などの論壇へ登場することも多い一方、「憲法9条のおかげで戦後日本が戦争に巻き込まれなかった」とする絶対平和主義者とは一線を画して、自衛隊やアメリカの「核の傘」による抑止力を肯定している数少ない人物である。現在、『SIGHT』と『東洋経済』に登場、ないし定期寄稿している。
[編集] 役職
日本比較政治学会会長、日本国際政治学会理事(編集主任)、日本政治学会理事、アジア政経学会常務理事、Global Governance 編集委員、Journal of East Asian Studies 編集委員。
[編集] 受賞歴
- 第10回南北文化コミュニケーション賞(2001年)
- 第26回石橋湛山賞(2005年)(『平和のリアリズム』)
[編集] 単著
- 『戦争を記憶する――広島・ホロコーストと現在』(講談社[講談社現代新書], 2001年)
- 『デモクラシーの帝国――アメリカ・戦争・現代世界』(岩波書店[岩波新書], 2002年)
- 『「正しい戦争」は本当にあるのか――論理としての平和主義』(ロッキング・オン, 2003年)
- 『平和のリアリズム』(岩波書店, 2004年)
- 『映画のなかのアメリカ』(朝日新聞社[朝日選書], 2006年)
[編集] 共著
[編集] 編著
- 『テロ後――世界はどう変わったか』(岩波書店[岩波新書], 2002年)
[編集] 共編著
- (国分良成・林振江)『グローバル化した中国はどうなるか』(新書館, 2000年)
- (総合研究開発機構(NIRA))『記憶から復興へ -紛争地域における復興支援と自治体の役割-』総合研究開発機構(NIRA),2002年
- (金子勝・山口二郎)『東アジアで生きよう!――経済構想・共生社会・歴史認識』(岩波書店, 2003年)
- (寺島実郎・小杉泰)『「イラク戦争」検証と展望』(岩波書店, 2003年)
- (李鍾元・古城佳子・石田淳)『国際政治講座』(東京大学出版会, 2004年-2005年)
- 1巻「国家と国際秩序」
- 2巻「アイデンティティとイデオロギー」
- 3巻「経済のグローバル化と国際政治」
- 4巻「国際秩序の変動」
- (大芝亮・山田哲也)『平和政策』(有斐閣, 2006年)
[編集] 論文
[編集] 日本語
- 「イデオロギーとしてのエスニシティー――米国統治下における『モロ問題』の展開」『國家學會雑誌』第97巻7・8号(1984年)
- 「『世界システム』論の展開――I・ウォーラーステインをこえて」『思想』第738号(1985年)
- 「国際市場の変動と「開発」政策――ODA分析の前提として」『千葉大学法学論集』第3巻第1号(1988年)
- 「フィリピンにおける『民主主義』の制度と運動」『社会科学研究』第40巻第1号(1988年)
- 「援助なんか知らないよ――日本の政府開発援助を考える前に」『平和研究』第13号(1988年)
- 「民主化過程における軍部――A・ステパンの枠組とフィリピン国軍」日本政治学会編『年報政治学』(岩波書店, 1989年)
- 「フィリピン政治と開発行政」福島光丘編『フィリピンの工業化――再建への模索』(アジア経済研究所, 1990年)
- 「田舎の冷戦――統合米軍顧問団とフィリピン国軍再編成 1948-1950」『千葉大学法学論集』第6巻第2号(1991年)
- 「権力政治と相互依存――鴨武彦『国際安全保障の構想』を中心として」『思想』第803号(1991年)
- 「帝国主義論と戦後世界」大江志乃夫編『岩波講座近代日本と植民地(1)植民地帝国日本』(岩波書店, 1992年)
- 「『民主化』の政治経済学――東アジアにおける体制変動」東京大学社会科学研究所編『現代日本社会(3)国際比較[2]』(東京大学出版会, 1992年)
- 「アジア冷戦の国際政治構造――中心・前哨・周辺」東京大学社会科学研究所編『現代日本社会(7)国際化』(東京大学出版会, 1992年)
- 「政治変動の基本要素」・「政治変動の諸様相」矢野暢編『講座東南アジア学(7)東南アジアの政治』(弘文堂、1992年)
- 「フィリピンの政党政治――政党の消えた議会」萩原宜之・村嶋英治・岩崎育夫編『ASEAN諸国の政党政治』(アジア経済研究所, 1993年)
- 「米中冷戦の終わりと東南アジア」『社会科学研究』第44巻第5号(1993年)
- 「冷戦の二日酔い――在比米軍基地とフィリピン・ナショナリズム」『アジア研究』第39巻第2号(1993年)
- 「主権国家と国民国家――『アメリカの平和』への視点」山之内靖他編『岩波講座社会科学の方法XIグローバル・ネットワーク』(岩波書店, 1994年)
- 「政府党と在野党――東南アジアにおける政府党体制」萩原宜之編『講座現代アジア(3)民主化と経済発展』(東京大学出版会, 1994年)
- 「工業化と政治変動――国家・資本・社会」坂本義和編『世界政治の構造変動(3)発展』(岩波書店, 1994年)
- 「国際政治と合意」合意形成研究会編『カオスの時代の合意学』(創文社、1994年)
- 「官僚と開発――経済発展の政治的条件」岩崎育夫・萩原宜之編『ASEAN諸国の官僚制』(アジア経済研究所, 1996年)
- 「世界戦争と世界秩序――20世紀国際政治への接近」東京大学社会科学研究所編『20世紀システム(1)構想と形成』(東京大学出版会, 1998年)
- 「ナショナリズム・冷戦・開発――戦後東南アジアにおける国民国家の理念と制度」東京大学社会科学研究所編『20世紀システム(4)開発主義』(東京大学出版会, 1998年)
- 「冷戦の終わりかた――合意による平和から力の平和へ」東京大学社会科学研究所編『20世紀システム(6)機能と変容』(東京大学出版会, 1998年)
- 「ヘゲモニーとネットワーク――国際政治における秩序形成の条件について」東京大学社会科学研究所編『20世紀システム(6)機能と変容』(東京大学出版会, 1998年)
- 「東南アジアにおける冷戦と国家形成」五百旗頭眞編『「アジア型意志決定」とリーダーシップ』(TBSブリタニカ, 1998年)
- 「専政の平和・談合の平和――比較の中のASEAN」『国際政治』125号(2000年)
- 「グローバル化の二つの顔――相互依存と覇権秩序」日本比較政治学会編『グローバル化の政治学』(早稲田大学出版部, 2000年)
- 「なぜ国民が語られるのか」『歴史学研究』第747号(2001年)
- 「内戦と戦争の間――国内政治と国際政治の境界について」日本政治学会編『年報政治学』(岩波書店, 2001年)
- 「記憶の戦いを超えて」船橋洋一編『いま歴史問題にどう取り組むか』(岩波書店, 2001年)
- 「国民の崩壊・民族の覚醒――民族紛争の政治的起源」日本比較政治学会編『民族共存の条件』(早稲田大学出版部, 2001年)
- 「抑止としての記憶――国際政治の倫理化とその逆説」『国際問題』第501号(2001年)
- 「民主化後の東南アジア――東南アジア政治体制の過去と現在」慶應義塾大学地域研究センタ-編『変わる東南アジア』(慶應義塾大学出版会, 2002年)
- 「地域の自意識――グローバル化の中のナショナリズム」『講座東南アジア史(9)「開発」の時代と「模索」の時代』(岩波書店, 2002年)
- 「東アジアの平和構想」『Human Security』第5号(2002年)
- 「軍と戦争――アジア史を概観して」青木保ほか編『アジア新世紀(8)構想』(岩波書店, 2003年)
- 「帝国と大国のあいだ――日本にとってのアメリカ・中国にとってのアメリカ」毛里和子・張蘊嶺編『日中関係をどう構築するか』(岩波書店, 2004年)
- 「国家形成と地域統合――国際環境のなかの東南アジア」五十嵐武士編『変貌するアジア太平洋世界(2)太平洋世界の国際関係』(彩流社, 2005年)
- 「軍と警察――冷戦後世界秩序における国内治安と対外安全保障の収斂」山口厚・中谷和弘編『融ける境 超える法(2)安全保障と国際犯罪』(東京大学出版会, 2005年)
- 「比較政治の危機」日本比較政治学会編『比較政治学の将来』(早稲田大学出版部, 2006年)
[編集] 外国語
- "Imagining the Past, Remembering the Future", Social Science Japan, no.3 (1995).
- "Autocratic Peace or Democratic Peace? Domestic Origins of Regional Order in Southeast Asia", Foreign Relations Journal, vol. 11, no. 2 and vol. 12, no. 21 (1996).
- "Philippine Studies in Japan", Philippine Studies Newsletter, 1996.
- "State Formation and Regional Order: Southeast Asia in the International Environment," in Peter King and Kibata Yoichi eds., Peace Building in the Asia Pacific Region, (Allen and Unwin, 1996).
- "After the Fall: Changes in the Japanese Political Economy", Asian Perspectives, no. 4, 1999.
- "Histoire et nationalisme", Cahiers du Japon. Hiver 2001.
- "Ways of Remembering: The Rise and Fall of Hiroshima in Japanese War Memories", Maria Serena Diokno ed., Imagining the Past, Remembering the Future: Memories of War and Violence in Asia, (University of the Philippines Foundation, 2001).
- "Memory as Deterrence:The Moralization of International Politics", Japan Review of International Affairs, vol. 16, no. 2, 2002.
- "Patterns of Changes in International Relations: Major Wars and their Aftermath", Emirates Lecture Series 36, 2002.
- "Political Consequences of Globalization: Japan in Comparative Perspective", Proceedings of the AASREC Regional Conference, edited by the AASSREC and the National Centre for Social Sciences and Humanities of Vietnam, 2002.
- "The Ending of Wars and International Order: Leadership or Accord?" Social Science Japan no. 26, 2003.
- "Remembering the War: Japanese Style", Far Eastern Economic Review, December 2005.
- "The State of Asian Democracies", in Japan Foundation, ed., The Community of Asia: Concept or Reality?, (Anvil, 2006).
- "Between Terror and Empire: Japan's Response and the Post-9/11 Order", in Glenn D. Hook and Harukiyo Hasegawa, eds., Japanese Responses to Globalization: Politics, Security, Economics and Business, (Palgrave, 2006).