自動券売機
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自動券売機(じどうけんばいき)とは、自動販売機のうち、乗車券、乗船券、入場券、食券などの切符を販売するものを指す。
日本では、1926年(大正15年)4月25日に東京駅・上野駅においてドイツ製の入場券を取り扱うコインバー式(硬貨を入れ、バーを下に強く下げると1枚券が落ちる方式)のものが導入されたのが最初だといわれているが、それより前の1907年(明治40年)に新橋駅で同じ方式のものが導入されていたという資料も見つかっており、発祥は定かではない。その後、1929年(昭和4年)12月21日には同じ方式で初乗り区間とその次の運賃区間(5銭及び10銭)の乗車券を取り扱うものも登場している。戦時中は一時撤去されるが、1951年(昭和26年)3月に再登場した。
1950年代から本格的に導入され始めたといわれ、初期においては、一定金額を投入してレバーを操作すると、印刷済みの単一金額の切符・食券・証票類が提供されるだけの機械的な機構の装置であったが、現在、電気・電子的な制御により盤面のボタン操作による選択で、多種多様な切符や食券などが随時印刷出力される多機能なものに進化している。
券面印刷に使用されるプリンタとしては、ドットインパクト方式や感熱式印字などが用いられる。さらに、鉄道などの自動改札機に使用する乗車券類は表面の印字だけでなく、裏に塗布された磁気記録面に対して券片の情報を記録する機能も持つ。
高額紙幣に対応したモデルのうち、タッチパネル式の一部は2千円札の受け入れおよび払い出しに対応するものもある。一部の旧型モデルおよび左側に並ぶボタンの列が2列のタッチパネル式は2千円札の受け入れのみ対応。
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[編集] 用途
[編集] 乗車券用
ほとんどの鉄道駅や一部のバスターミナルで、主に短距離の乗車券類を販売する。金額が最高で2000円弱程度のためか、かつては千円札のみ紙幣を受け入れるボタン式が主流であり、高額紙幣を受け入れて千円札を釣り銭として払い出す券売機はあってもそれほど多くなかったが、近年のものは2千円札、5千円札および1万円札に対応し、千円札のほか2千円札や5千円札を釣り銭として払い出す機能を有する液晶タッチパネル式が多い。
自事業者または提携事業者が発行する磁気式プリペイドカードの減算機能を有する券売機の場合、プリペイドカードで乗車券類を購入できる場合がある。またIC式プリペイドカードの加減算機能を有する券売機であれば、前述の購入ができるほか、プリペイド金額を積み増しすることができる事業者もある。いずれも当該事業者の旅客営業規則その他の約款に基づいて機能が提供される。
JRの運賃選択式券売機の場合、販売駅から100km前後までの短距離乗車券が主体であり、領収書は発行されないものが多かったが、現在では東海旅客鉄道(JR東海)のタッチパネル式のものなど、領収書を発行するものもある。ほかに、間違って買った乗車券類を取り出し口から押し込むと代金が払い戻されるもの(仙台市交通局)や、代金投入前に券種を選択できるものも存在する。その際には投入金額が乗車券類の代金に達した時点で受入れが中止されて釣り銭が支払われる。また、旅客鉄道会社の境界駅に設置されている自動券売機には、JR会社区間を区別する機能を付加しているものが一部にある(例:南小谷駅、辰野駅など)。
JR発足当初はすべての境界駅でこの機能が付加されていたほか、境界駅に近い駅でもJR他社区間を指定する機能が付加されていた(JR発足当初は、JRの会社区間を厳密に指定しないといけなかったため。例えば、湯河原駅から三島駅まで乗車する場合、JR東海連絡の乗車券を予め購入する必要があった。同額のJR東日本管内完結の乗車券を購入した場合には、熱海・三島間の運賃を別途請求された)。
東京急行電鉄や画像の「あおなみ線」など、いくつかの鉄道事業者が設置する新型短距離用タッチパネル式券売機では、現金で購入した短距離乗車券の領収書を発行できるものも存在する。また、定期券自動券売機および新幹線などの長距離乗車券類の券売機では、ボタン操作で領収書の発行が可能なものが多い。
地方の私鉄では、後述する食券用自動販売機が乗車券用に利用されていることがある。
[編集] 指定券自動券売機
[編集] JR各社
- 東日本旅客鉄道(JR東日本)には、東京近郊および新幹線、特急列車の停車する主要な駅に、指定席特急券を購入できる券売機が設置されている[1]。
- 元々は鉄道情報システム(JRシステム)が開発したもので、現在はMV30型が使用されている。これらは特急券のほかに、トクトクきっぷや普通乗車券・定期券も購入可能となっている。一部の指定席券売機はSuicaに対応する。この券売機の導入に伴って、オレンジカードに対応している自動券売機での新幹線自由席特急券の販売が終了された駅もある。
- また、「えきねっと」受取専用機としてジェイアール東日本情報システムの独自開発によるMEV型が使用されている。
以前は、「トラベルエディ」という愛称があったが、現在はこの名前は使用されなくなった。単に「指定席券売機」と呼ぶだけである。 - このほかに、みどりの窓口の代わりとして設置されたもしもし券売機Kaeruくんがある。これも指定席券売機と言える。
- 東海旅客鉄道(JR東海)には、新幹線特急券をメインとした指定席特急券が発行可能な自動券売機が主要駅に設置されている。これもMV30型(一部の駅はその前身機種のMV10型)である。また、エクスプレス予約受取専用またはクレジットカード専用機として、MV40型も使用されている。
- JR東海では、これらの券売機にMV10型として登場当初から「エクスプレス券売機」という愛称を使用している(ちなみに、同時期に誕生した改札機は「エクスプレス改札機」という愛称もあるが、最近はあまり使われない傾向にある)。
- 西日本旅客鉄道(JR西日本)には「みどりの券売機」と称する指定席特急券の発券用の券売機が設置されている(初代のMV10型登場からしばらくは『指定席自動発売機』と言う名前で、愛称はなかった)。機能としては、JR東日本の指定席券売機に準ずる。ハードウェアも同じMV30型である。一部の駅にはMV10型がある他、JR東海と同様にエクスプレス予約・5489サービス受取専用機としてMV40型を使用している。
- 北海道旅客鉄道(JR北海道)には、札幌駅と新千歳空港駅に指定席特急券を購入できる券売機が設置されている。これはMV30型である。
- 九州旅客鉄道(JR九州)には、博多駅に指定席特急券・2枚きっぷ・4枚きっぷを購入できる券売機が設置されている。これはMV30型である。また、博多・小倉・長崎・大分・熊本・鹿児島中央の各駅には、JR九州電話・インターネット予約の受取用に「ご予約きっぷ受け取り専用機」としてMV40型が設置されている。
JR東日本の指定席券売機やJR西日本の「みどりの券売機」では、短距離区間の乗車券購入でも領収書を発行することが可能である。 また、各社のインターネットサイトで予約した切符の受け取り(えきねっと・エクスプレス予約・e5489など)が可能である。
[編集] 私鉄各社
[編集] 定期券発売機
定期乗車券は乗車券に氏名などを書き込む、経路を確定しないといけないなど普通乗車券と比べて購入手続きが複雑という理由で長らく窓口のみの発売であった。しかし、技術の発達やコスト削減などのために定期乗車券が購入できる自動券売機が登場した。
初期のタイプは、過去に発行された旧券がないと購入できない仕様になっていた。
新しいものは、旧券がなくても新規購入ができるようになっているものが多い。通学定期券のように証明書のチェックを要するものは、自動定期券発売機では発売せず、係員窓口で発売することが多い。
あるいは、呼び出しボタンで係員を呼んで自動定期券発売機の設定変更をしてもらい、その発売機で通学定期券を購入することもある。(購入がすんだら発売機の設定を再度変更して通学定期券は発売禁止の設定にする。不正に購入されるのを防ぐため)
取り扱いは事業者によって異なるので、購入前に確認が必要である。
最近は、一台で定期乗車券も普通乗車券も両方発行できるような複合機能を持ったものも登場している。
[編集] 食券・入場券用
基本的な構造は乗車券用と同じ。鉄道の乗車券よりも販売品目が少なく、それほど高機能は求められないため、小型のボタン式のものが多い。システムによっては、厨房へ注文商品が伝送されるオーダリングシステムと連動しているものもある。
近年、千円札のみを受け入れる券売機や、千円札と2千円札を受け入れる券売機では、硬貨のみを釣り銭として払い出す機能を有するものがほとんどである。この場合、釣り銭が千円以上であっても、釣り銭切れでない限り500円玉を複数枚払い出すことで対応している。一方、5千円札および1万円札をも受け入れる券売機の場合は、前述の「乗車券用」と同じく紙幣を釣り銭として払い出す機能を有する。
[編集] 投票券用
馬券や車券、舟券といった、公営競技の投票券も、場内や場外施設の自動券売機(自動投票機)で販売されている場合も多い。外観は銀行のATM(現金自動預け払い機)に似ており、販売時間を短縮するため、レースや馬(選手)番号を記載したマークカードを読み取らせて購入する方式を取る。マークカードのエラー(機械的な読み取り不良、存在しない番号をマークするなどの誤記入等)を修正するためのタッチパネルを備えている。
これと対になるものとして、的中投票券を払い戻す自動払戻機がある。同様に銀行ATMに似た外観で、的中投票券を挿入すると払戻金(配当)が払い出される。機能としてはCD(キャッシュディスペンサー)に近い。
なお、近年は自動投票機と自動払戻機の機能を両方有する自動投票払戻機の設置が進んでいる。この券売機では、「的中投票券の払戻金を、そのまま別の競走の投票券購入に充てて、端数は現金で受け取る」といったことが可能になる。
[編集] プリペイドカード
テレホンカードやプリペイド式乗車カードなどのプリペイドカードを販売するもの。ほとんどのカードで販売価格が1000円の倍数のため、硬貨の受け払い機能を備えている自動券売機はほとんど無い。千円札の受け入れのみで釣り銭の払い出し機能を有しない券売機か、2千円以上の紙幣をも受け入れて、かつ紙幣の釣り銭を払い出す機能を有する券売機のどちらかである。
50度数のテレホンカード・コピー機用プリペイドカードなど、販売価格が100円単位のプリペイドカードを扱う自動券売機も少数ながら存在する。この場合、硬貨の受け入れ・払い出し機能をも有する。
プリペイド式乗車カードの券売機では領収書の発行が可能な場合が多い。
[編集] メーカー
- オムロン
- 東芝
- 日本信号
- 高見沢サイバネティックス
- 神鋼電機
- 沖電気工業
- ジェイアール東日本メカトロニクス
- レシップ
- 近畿車輛(オムロンに事業譲渡し撤退)
- BOSTEC(ボステック)