箱根登山鉄道鉄道線
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
箱根登山鉄道鉄道線(はこねとざんてつどうてつどうせん)は、神奈川県小田原市の小田原駅から箱根町の強羅駅までを結ぶ箱根登山鉄道の鉄道路線。箱根観光の旅客輸送を担う路線である。
2003年(平成15年)3月19日より、小田原駅~箱根湯本駅間の各駅でパスネットが利用できるようになった。
目次 |
[編集] 路線データ
- 路線距離(営業キロ):15.0km
- 軌間:1435mm(入生田~箱根湯本間は1067mmとの三線軌)
- 駅数:11駅(起終点駅含む)
- 複線区間:なし(全線単線)
- 電化区間:全線(小田原~箱根湯本間は直流1500V、箱根湯本~強羅間は直流750V)
- 閉塞方式:自動閉塞式
[編集] 歴史
- 1919年(大正8年)6月1日 小田原電気鉄道鉄道線として箱根湯本駅~強羅駅間開業。小田原までの軌道線(路面電車)と連絡。600V電化。
- 1920年(大正9年)10月21日 塔ノ沢駅開業。
- 1928年(昭和3年)1月1日 日本電力が小田原電気鉄道を合併。
- 1928年8月16日 軌道線・鋼索線とともに箱根登山鉄道に分離譲渡。
- 1935年(昭和10年)10月1日 小田原駅~箱根湯本駅間開業。600V電化。並行路線となる軌道線を廃止。
- 1950年(昭和25年)8月1日 小田原駅~箱根湯本駅間が1500Vに昇圧・三線軌条化され、小田急電鉄の車両が片乗り入れを開始。
- 1972年(昭和47年)3月 全線CTC化。
- 1972年3月15日 二ノ平駅を彫刻の森駅に改称。
- 1993年(平成5年)7月14日 箱根湯本駅~強羅駅間の架線電圧を600Vから750Vに昇圧。同時に3両編成の運用が開始される。
- 2000年(平成12年)12月2日 日中の小田原駅~箱根湯本駅間の運用は全て小田急電鉄からの片乗り入れ車両のみとなり、自社の車両による運用は朝と夕方以降のみとなる。
- 2006年(平成18年)3月18日 小田原駅~箱根湯本駅間での自社車両の運行を取り止め、小田急の乗り入れ車両のみとなる。
- 2006年(平成18年)9月 小田原駅~入生田駅間の三線軌条の標準軌部分のレールを撤去。
[編集] 運転形態
箱根湯本駅から強羅駅までは、車輪とレールの間の粘着力だけで走る鉄道としては日本で最も急な勾配(80‰)を登るため、単に軌間・電化方式が異なるためだけではなく、そのための性能と装備を持った専用の車両のみが運行されている。この区間に3箇所(出山信号場、大平台駅、上大平台信号場)あるスイッチバックも山岳鉄道的な特徴である。この他、カーブの最小半径も30mと小さく、車輪とレールの磨耗を防ぐために散水(一般的な鉄道で使用されている潤滑剤方式では急勾配区間の走行の安全性に問題があるため)を行いながら走行する。
小田原駅~箱根湯本駅間は、2006年3月18日から輸送力増強とバリアフリーへの対応のため、自社車両による運行を取り止め、小田急電鉄の車両のみでの運行となった。このため現在は、箱根湯本駅で完全に系統が分断されている。小田原駅から箱根湯本駅までは、小田急電鉄新宿方面から特急、急行、準急、各駅停車が乗り入れる。箱根湯本駅~強羅駅間は自社車両での運転で、日中は1時間に4本である。
小田原駅~箱根湯本駅間では、小田急電鉄の各駅停車・準急・急行(箱根登山鉄道線内は各駅停車)と特急ロマンスカー「はこね」・「スーパーはこね」が箱根登山鉄道線に直通運転している。日中は1時間当たり、急行4本・特急2本が乗り入れている。
特急ロマンスカーは箱根登山線内のみの利用はできなかったが、2005年10月1日から座席券(大人200円)の発売が開始され、空席がある場合に限り利用可能になった。ただし、箱根登山線内では満席の場合は利用ができない。
直通の急行のうち朝の1本は新宿到着が朝の通勤ラッシュのピークにかかるため1号車が女性専用車となっているが、箱根登山線内は対象外となっている。風祭駅でのドア扱いが1号車のみのため、男性客が乗降出来なくなってしまうのが大きな理由である。
小田原駅~箱根湯本駅間は1950年から、小田急の電車が乗り入れを開始した。これに伴い、乗り入れ対応の工事を実施。箱根登山鉄道の軌間は1435mm(標準軌)であるのに対し、小田急電鉄は1067mm(狭軌)であるため、小田原駅から箱根湯本駅までの区間は三線軌条により双方の軌間に対応していた。また架線電圧も箱根登山鉄道の750V(1993年までは600V)に対し、小田急電鉄の車両は1500Vであるため、片乗り入れ開始に併せて箱根登山鉄道の電車に750V(1993年までは600V)/1500Vの複電圧対応改造を施し、小田原駅~箱根湯本駅の区間を1500Vに昇圧した。 かつては箱根登山鉄道と小田急の乗り入れ車両の両方によって列車が運転されていたが、2000年(平成12年)12月2日より朝と夕方以降となり、さらに2006年(平成18年)3月18日からは小田原駅~箱根湯本駅間は小田急からの乗り入れ列車のみで運行されることになった。しかし、入生田車庫への入出庫回送のため入生田駅~箱根湯本駅間の三線軌条や車両の複電圧構造は残されることになった。小田原駅~入生田駅の三線軌条・小田原駅の箱根登山線ホームの処遇については、ホームについては閉鎖中ではあるが、三線軌条の一部は撤去が始まっている(2006年9月現在)。
また、沿線に植えられたアジサイの開花時期に合わせて、夜ライトアップされたアジサイを楽しむ事ができる特別列車「あじさい電車」を運行している(要予約)。
以前は温泉巡りの客の便を考慮し、線内の乗車券は片道でも2日間有効で途中下車可能であったが、2002年4月よりこの取り扱いは廃止され、片道乗車券は他の多くの路線同様通用発売当日限り・下車前途無効に変更された。しかし現場では起点駅からの運賃と同額の駅を除いた途中駅では便宜的に途中下車を認めているようである。
パスネットは小田急の電車が乗り入れる小田原駅~箱根湯本駅間で対応している。但し同区間の途中3駅は自動改札機が設置されていないため、係員のいる窓口で対応することになっている。2007年3月には全線でPASMOが導入される予定である。
[編集] 車両
箱根湯本駅~強羅駅の区間は、最大80‰の急勾配と地形に沿った非常に急なカーブを持つ路線を走るため、電車には下記のような特殊装置が備えられている。
- カーボランダム・ブレーキ
- フランジ磨耗防止散水装置
[編集] 車両一覧
[編集] 駅名、信号所、停車駅及び所要時間
- 数字は小田原からの小田急線直通の標準所要時間、箱根湯本からの普通の日中の所要時間を示す(日中以外は列車交換待ちによって、多少上下する)
- 小田原~箱根湯本間は小田急の車両で運転。
駅名 | 駅間キロ | 累計キロ | 普通 | 小田急小田原線直通 急行 準急 各停 | 小田急特急ロマンスカ| | 接続路線 | 備考 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
小田急小田原線新宿駅まで直通運転 | |||||||||||
小田原駅 | - | 0.0 | 0 | ● | JR東海:東海道新幹線 JR東日本:東海道本線 小田急電鉄:小田原線(一部直通) 伊豆箱根鉄道:大雄山線 |
||||||
箱根板橋駅 | 1.7 | 1.7 | 6 | | | |||||||
風祭駅 | 1.5 | 3.2 | 9 | | | |||||||
入生田駅 | 1.0 | 4.2 | 13 | | | 三線軌条区間 | ||||||
箱根湯本駅 | 1.9 | 6.1 | 0 | 18 | ● | ||||||
塔ノ沢駅 | 1.0 | 7.1 | 3 | ||||||||
出山信号場 | - | - | | | スイッチバック信号所 運転停車のみ |
|||||||
大平台駅 | 2.8 | 9.9 | 17 | スイッチバック駅 | |||||||
上大平台信号場 | - | - | | | スイッチバック信号所 運転停車のみ |
|||||||
仙人台信号場 | - | - | | | 信号所 運転停車のみ |
|||||||
宮ノ下駅 | 2.2 | 12.1 | 27 | ||||||||
小涌谷駅 | 1.3 | 13.4 | 34 | ||||||||
彫刻の森駅 | 0.9 | 14.3 | 37 | ||||||||
強羅駅 | 0.7 | 15.0 | 39 | 箱根登山鉄道:箱根登山ケーブルカー |
[編集] 過去の接続路線
- 箱根湯本駅:軌道線(1919年~1935年)
- 箱根板橋駅:小田原町内線~小田原市内線(1935年~1956年)