福島臨海鉄道
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福島臨海鉄道(ふくしまりんかいてつどう)は、福島県いわき市の常磐線泉駅と小名浜駅を結ぶ貨物専業鉄道、およびそれを運営する日本貨物鉄道(JR貨物)や福島県、日本化成などが出資する臨海鉄道会社である。本社所在地は福島県いわき市小名浜字辰巳町38番地10号。
旅客営業も行っていたことがあるが1972年に廃止されている。但しその後も「買い物列車」や小名浜で開かれる「いわき小名浜港花火大会」などのイベントの旅客輸送のために臨時の旅客列車が運転されることがある。なお、臨時旅客列車運転はJR東日本のキハ110系気動車などを使用する。
もともとは小名浜に造られた製塩所の製品を運ぶための馬車鉄道が前身で、漁村からの水産物の積み出しにも使われるようになったが、小名浜港が工業地域として発展するにつれ、工業資材輸送鉄道となり、今に至っている。
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[編集] 歴史
常磐炭砿の石炭積出港として既に賑わっていた小名浜に、鈴木藤三郎が製塩所を設け、その燃料や製品輸送のために鈴木個人名義で特許を受けて、1907年(明治40年)に常磐線泉駅との間に敷設した小名浜馬車軌道が始まりである。軌道自体の経営は順調であったが、鈴木が着手した醤油造りの新事業の失敗で製塩所が閉鎖に追い込まれ、軌道事業は小名浜町の有志らで設立された合資会社東商会に引き継がれた。
その後、小名浜の東方にある江名からの水産物を運ぶため、小名浜~江名間に馬車鉄道が計画され、磐城海岸軌道として1916年(大正5年)に開業した。翌年には東商会を買収し泉~小名浜~江名間の路線が形成された。1926年(大正15年)にはガソリンカーなどの導入により動力が内燃化された。しかし、漁獲高の減少で貨物輸送量が低下したため経営難に陥り、1936年(昭和11年)には小名浜~江名間が特許取消となり廃止となった。
その頃、日本水素工業(日本化成の前身)の工場が小名浜に建設されることになった。1939年(昭和14年)に磐城海岸軌道は日本水素工業に経営が委ねられ、小名浜臨港鉄道に社名変更。1941年(昭和16年)に製品輸送のため常磐線と直通できる1067mm軌間の新線が建設され、馬車鉄道時代からの旧線は廃止された。
1953年(昭和28年)小名浜~江名間を結ぶ鉄道が江名鉄道として復活し栄町~江名間が開業した。江名鉄道の業務は小名浜臨港鉄道に委託されていた。小名浜臨港鉄道も小名浜~栄町間を開業し、泉~江名間に直通列車を運転した。しかし、江名鉄道はバスなどとの競合から不振で、1965年(昭和40年)には台風の被害を受け翌年に休止となり小名浜臨港鉄道との直通運転も廃止された。
1964年(昭和39年)小名浜が新産業都市の指定を受け、工業地域として整備が進められることになった。小名浜臨港鉄道は国鉄・沿線自治体・企業が出資する臨海鉄道方式で経営されることになり福島臨海鉄道と社名を改めた。その後、小名浜埠頭・藤原方面への支線である小名浜埠頭本線を開業する一方で、1972年(昭和47年)には旅客営業を廃止し貨物専業鉄道となった。 しかし、貨物も輸送量が低下傾向にあり、2001年に小名浜埠頭本線を廃止している。
- 1907年(明治40年)12月1日 : 鈴木藤三郎が小名浜馬車軌道として泉~小名浜間開業。軌間762mm。
- 1910年(明治43年)12月15日 : 鈴木藤三郎が小名浜馬車軌道を合資会社東商会に譲渡。
- 1915年(大正4年)6月2日 : 磐城海岸軌道設立。
- 1916年(大正5年)4月17日 : 磐城海岸軌道が小名浜~江名間の馬車鉄道開業。軌間762mm。
- 1917年(大正6年)8月30日 : 磐城海岸軌道が合資会社東商会を買収。
- 1925年(大正14年)11月30日 : 小名浜~江名間ガソリン動力化。
- 1926年(大正15年)6月7日 : 泉~小名浜間ガソリン動力化。
- 1936年(昭和11年)12月 : 小名浜~江名間特許取消に伴い廃止。
- 1939年(昭和14年)10月30日 : 小名浜臨港鉄道に社名変更。
- 1941年(昭和16年)6月 : 全線を軌間1067mmの新線に切り替え。
- 1941年(昭和16年)11月1日 : 全線を軌道法による軌道から地方鉄道法による鉄道に変更。
- 1953年(昭和28年)1月12日 : 江名鉄道栄町~江名間開業にともない、小名浜~栄町間を延伸開業し、泉~江名間直通運転。
- 1964年(昭和39年) : 小名浜が新産業都市の指定を受ける。
- 1966年(昭和41年)2月15日 : 江名鉄道休止に伴い、小名浜~栄町間も休止し同鉄道との直通運転を中止。
- 1967年(昭和42年)4月1日 : 県・国鉄が出資、福島臨海鉄道に社名変更。
- 1968年(昭和43年)3月30日 : 小名浜~栄町間廃止。
- 1970年(昭和45年)6月1日 : 宮下~小名浜埠頭間開業。貨物営業のみ。
- 1970年(昭和45年)8月14日 : 小名浜埠頭~東渚間開業。貨物営業のみ。
- 1971年(昭和46年)7月21日 : 東渚~藤原間開業。貨物営業のみ。
- 1972年(昭和47年)10月1日 : 泉~小名浜間の旅客営業を廃止し貨物専業鉄道となる。
- 1984年(昭和59年) 4月1日: 小名浜埠頭~藤原間廃止。
- 2001年(平成13年)4月1日 : 宮下~小名浜埠頭間休止。
- 2001年(平成13年)10月1日 : 宮下~小名浜埠頭間廃止。
[編集] 路線
福島臨海鉄道本線のほかに2001年まで小名浜港の埠頭に続く小名浜埠頭本線を有していた。このほか工場専用線(引込み線)がある。
[編集] 福島臨海鉄道本線
[編集] 路線データ
- 路線距離(営業キロ) : 泉~小名浜間 5.4km
- 軌間 : 1067mm
- 駅数 : 3駅(旅客営業時は7駅)
- 複線区間 : なし(全線単線)
- 電化区間 : なし(全線非電化)
- 閉塞方式 : タブレット閉塞式
[編集] 運行形態
- 泉駅~宮下駅間は信越本線安中駅発着の鉱石・化学薬品を輸送する列車が1日1往復設定されている。
- 泉駅~小名浜駅間は常磐線水戸駅方面発着のコンテナ貨物列車が1日2往復設定されている。
- そのほか機関車の回送列車や臨時列車が設定されている。
[編集] 駅一覧
泉駅 - *滝尻駅 - *東邦亜鉛前駅 - 宮下駅 - *水素前駅 - 小名浜駅 - *栄町駅
- 小名浜駅ではコンテナ貨物の取扱をしている。宮下駅は東邦亜鉛小名浜精錬所へと続く専用線が接続している。
*は廃止された旅客駅。
[編集] 接続路線
- 泉駅 : 常磐線
[編集] 小名浜埠頭本線(廃止)
[編集] 路線データ
- 路線距離(営業キロ) : 宮下~藤原間 2.1km
- 軌間 : 1067mm
- 駅数 : 5駅(宮下駅含む)
- 複線区間 : なし(全線単線)
- 電化区間 : なし(全線非電化)
- 閉塞方式 : タブレット閉塞式
[編集] 駅一覧
宮下駅 - 南宮下駅 - 小名浜埠頭駅 - 東渚駅 - 藤原駅
[編集] 接続路線
宮下駅 : 福島臨海鉄道本線