番号ポータビリティ
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番号ポータビリティ(ばんごうポータビリティ)は、携帯電話や固定電話等の電話の利用に際して、契約している電話会社(電気通信事業者)を変更しても、電話番号は変更しないまま、継続して利用できる仕組みである。番号持ち運び制度とも言われる。また、携帯電話については、MNP(Mobile Number Portability)とも呼ばれる。
利用者の電話番号による囲い込みの防止により、サービスの向上・料金の低減を目指すために行われる。
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[編集] 共通事項
[編集] 運用
運用を行うために、次のことを定める必要がある。
- 費用の回収方法 : 利用者と事業者相互間分担のあり方。前事業者の未収料金の回収など。
- 接続料金の精算方法 : 経由する電話交換機・電話回線・電話番号データベースの利用料金など。
- 運用ルール : 利用者の意思確認・利用者情報の事業者間の引継ぎ・電話番号データベースの更新など。
[編集] 問題点
次のような問題点も指摘されている。
- システムの構築に多額の費用がかかる。
- 結果的に、競争の激化により事業者の経営問題が生じる。
- 結果的に、強引・違法な営業活動の遠因となる(日本ではマイライン等でも問題になった)。
[編集] 固定電話番号ポータビリティ
固定電話の番号ポータビリティは、2001年3月から始まっている。
- 0120と0800で始まる着信課金サービス(「フリーダイヤル」など)において、加盟各社間(NTTコミュニケーションズ・NTT東日本・NTT西日本・KDDI・ソフトバンクテレコム(旧日本テレコム))の着信課金サービスへの双方向の番号移行
- NTT東日本・NTT西日本の固定電話から、他事業者の直収電話、他事業者・NTT東西(競争条件を等しくするため)の通常の市外局番のIP電話(「光電話」など)への片方向の番号移行
が開始されている。
[編集] 電話番号割り当て
[編集] 二重番号方式
通常の電話番号計画で移転先に割り当てられた電話番号を接続に用いるもの。電話番号の消費が倍となる。
日本ではNTT東西の固定電話からの片方向のものに用いられている。
[編集] ルーティング番号方式
通常の電話番号計画と独立したルーティング専用の番号を用いるもの。電話番号の割り当てを節約できる。
日本では、携帯電話事業者間の双方向のものでの利用が2006年10月24日から実施されている。また、NTT東西の固定電話からの片方向のものも、この方式への変更が2007年2月1日に電話番号枯渇の解消のために行われる予定である。
[編集] 接続方式
発信元電話交換機から、移転先への接続方式として次のようなものが有る。
[編集] 転送方式
転送方式(Onward Routing)は、前進ルーティングとも呼ばれる。
- 発信元からのポータビリティ番号を管理する交換機へ接続する。
- 移転元交換機から移転先交換機へ接続する。
電話番号を管理する交換機のみの改修でサービス可能であるが、冗長な接続経路となるため、回線使用料が高くなる場合が多い。
[編集] リダイレクション方式
リダイレクション方式(Call Dropback)は、呼び戻し方式とも呼ばれる。
- 発信元からポータビリティ番号を管理する交換機へ接続する。
- 移転された番号である場合移転先電話番号が移転元交換機から発信元へ通知される。
- 一旦回線を開放した後、発信元の電話交換機から移転先電話へ直に回線接続を行う。
発信元交換機と電話番号を管理する交換機とにおいて、電話番号取得などの仕組みの構築が必要である。最適化された接続経路となるため、回線使用料が安くなる。
[編集] 開放・データベース問い合わせ方式
開放・データベース問い合わせ方式(Query on Release)は、集中管理電話番号データベースを用いるものである。
- 発信元からポータビリティ番号を管理する電話交換機へ接続する。
- 移転された番号である場合、一旦回線が開放される。
- 発信元交換機が集中管理電話番号データベースへ移転先を問い合わせ取得する。
- 発信元の電話交換機から移転先電話へ直に回線接続を行う。
集中電話番号データベースの構築・運用が必要である。
[編集] ダイレクト方式
ダイレクト方式(All Call Query)は、全ての呼で集中管理電話番号データベースへ問い合わせを行うものである。
- 発信元交換機が集中管理電話番号データベースへ移転先を問い合わせ取得する。
- 発信元の電話交換機から移転先電話へ直に回線接続を行う。
集中電話番号データベースの構築・運用が必要であり、全ての通話で番号問い合わせを行うためデータベースの負荷が高くなる。発信元交換機と集中番号データベースと移転先交換機との情報伝達のみで接続操作が可能である。
[編集] 携帯電話番号ポータビリティ
[編集] 各国の状況
地域 | 開始 | 利用率 | 状況 |
---|---|---|---|
シンガポール | 1997年4月 | ||
イギリス | 1999年1月 | 5% | |
オランダ | 1999年1月 | 5% | |
香港 | 1999年3月 | 86.3% | サービスに差が無いため利用率が高いとされている |
スイス | 2000年3月 | ||
スペイン | 2000年12月 | 1.6% | |
デンマーク | 2001年7月 | 11% | |
スウェーデン | 2001年9月 | 5% | |
オーストラリア | 2001年9月 | 8.6% | |
ノルウェー | 2001年11月 | 14.8% | |
イタリア | 2002年5月 | 1.6% | |
ベルギー | 2002年10月 | 2.2% | |
ドイツ | 2002年11月 | 0.47% | |
アイルランド | 2002年11月 | 2.2% | |
フランス | 2003年6月 | 0.1% | |
アメリカ合衆国 | 2003年11月 | ||
大韓民国 | 2004年1月 | 0.9% | 違法な勧誘による問題も生じた。 |
ギリシャ | 2004年3月 | ||
オーストリア | 2004年5月 | ||
台湾 | 2005年10月 | ||
日本 | 2006年10月 | 詳しくは下記の項目を参照。 |
- ※利用率=導入時から2004年までの累積の利用率
アメリカ合衆国では、事業者の反対で数回延期されたが、2003年11月24日から固定電話-携帯電話・携帯電話-携帯電話相互間で義務化されている。同じ電話番号計画である固定電話から携帯電話への変更も多く行われている。
[編集] 日本の状況
日本において、携帯電話番号ポータビリティは、2006年10月24日から実施された。通称はMNP(Mobile Number Portability)。Eメールアドレスや有料コンテンツは移転されない。また、諸手続きや切り替え費用の発生、他社へ切り替えることで長期継続割引が切れることになる。そのため、大方の見方として、シェアの急激な激変が起こる可能性は、低いとも言われている。なお、それに先駆けて2005年10月1日付けでKDDI本体に吸収合併されたツーカーにおいては、10月11日よりツーカーから同じKDDIが経営するauへの同番移行が可能となっている。このMNP実施により携帯電話3社の争いが現在激化しているが、固定電話と違い、もともと携帯電話の番号が変わること自体に不自由を感じる人が少なかったため、この制度を機に会社を変更する人も少ないのではと言う見方もある。
2006年11月8日の各社の報道によれば、MNP制度が開始された10月24日から31日までの期間中のMNPを利用した移動数は、KDDIが98,300件の増加、NTTドコモは73,000件の減少、ソフトバンクモバイル(旧ボーダフォン)が23,900件の減少となっている。これは後述の#ソフトバンクモバイルにおける切り替え手続きの停止の影響を織り込んだ数字としており、MNP切り替えの緒戦はKDDI(au)の一人勝ちの結果となった。今後の他2社の対応が注目される。
[編集] 問題点
携帯電話に関しては、次のような問題点がある。
- 旧電話会社が発行したメールアドレスは継続出来ない(ドメイン名は必ず変わる)。
- 旧電話会社で契約した有料コンテンツ(電話会社の公式メニューに収録されたもの)が継続利用出来ない。
- 永年使用による料金プラン・割引サービスが業者変更により全て無効となることもある。
[編集] ソフトバンクモバイルにおける切り替え手続きの停止
MNP制度が開始された最初の週末である10月28日、ソフトバンクモバイルにおいて新規加入、契約内容の変更、解約などの受け付けを全面的に停止する事態となった。翌10月29日にも切り替え手続きを停止する事態が発生した。 当初、ソフトバンクモバイルは自社同士の通話料や電子メールを無料にする契約プラン(予想外割のゴールドプラン)が効を奏し、他社からの切り替えが殺到したものとアナウンスした。 しかし実際は、他社からソフトバンクモバイルへの切り替えは停止されずスムーズに続行できているケースが分かっており[要出典]、 他社への切り替え手続きが殺到したための非常手段だったのではないかという説も流れていた。
10月30日には孫正義社長が記者会見で謝罪し、原因として他社への転出手続き処理の渋滞に加え、自社利用者の新契約プランへの変更処理が重なったためであると発表した。
なお、ソフトバンクモバイル以外にも、前述のツーカーからauへの同一番号移行についても、開始当初に一時期手続きを停止したことがある。
[編集] auにおける切り替え手続きの停止
2006年12月17日、今度は au において MNP 転出入受付でのシステムトラブルが発生し、 午後4時頃よりMNPによる他社への転出・他社からの転入ともに受付を停止する事態となった。 ただし、MNPを利用しない新規契約等は通常通り受付された。
業務終了となる午後10時まで回復することはなかったが、 翌日より通常通り受付業務が再開された。 この件に関する報道によると、au 側のシステムの負荷分散の問題による障害とされている。
ソフトバンクモバイルの障害発生の際と同じく、総務省より改善策などの報告がKDDIに対し求められた。
[編集] PHS電話番号ポータビリティ
現在のところ、PHSは対象外となっている。これは、携帯電話とは電話番号の番号帯(070)が違うことが理由として挙げられる。また、PHS事業者間でのポータビリティを検討しようとしても、 既にドコモPHSがPHS音声事業において撤退を予定し新規契約停止状態でありFOMAへの番号変更を伴う契約変更を勧奨していること、またアステルが事実上殆ど事業停止済であり、検討の意味が薄いこと、などが考えられる。また、総務省の研究会「携帯電話の番号ポータビリティの在り方に関する研究会」においても、当時KDDI傘下であった旧DDIポケット(現ウィルコム)やNTTドコモに事業吸収状態のドコモPHSは、PHS事業としての代表者を送り込む場もなかったようである[1]。
今後ドコモPHSの撤退予定表明に当たり、100万人程度(2005年4月現在)と推測される同音声ユーザーからウィルコム(あるいは同一会社のサービスであるFOMA)への同番移行を要望する声が上がらないとも言えないが、見通しは不透明である。なお、アステル沖縄からウィルコム沖縄への事業承継においては、番号帯も承継し、結果としてユーザーの同番移行が可能になった。また、番号帯を携帯電話とPHSで統合すればよいのではないかと言う意見も聞かれる。
現在、事実上唯一のPHS事業者のウィルコムは番号帯が違い、番号ポータビリティの対象外であることを逆手に取り、「070定額」と称し、PHSの番号への電話はすべて定額であることをアピールしている。
[編集] 外部リンク
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