特定都市鉄道整備促進特別措置法
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特定都市鉄道整備促進特別措置法(とくていとしてつどうせいびそくしんとくべつそちほう、昭和61年4月30日法律第42号)は、大都市圏における鉄道の輸送力増強への投資負担を平準化するため、積立金制度などの特別措置を定めた日本の法律。略称は「特特法」。この法律による事業は「特特事業」と呼ばれる。最終改正は平成17年(2005年)3月31日法律第21号。所管省庁は国土交通省。
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[編集] 制定の背景
鉄道輸送需要が増大した場合、有効な輸送力増強策としては、ソフト面では列車増発、ハード面では複線化(複々線化)や列車の長編成化が挙げられる。しかし、大都市圏においてはすでに列車増発の余裕はなく、ハード面で対応する場合が多いが、用地費や建設費に莫大な資金が必要となる。資金調達のために大幅に運賃を値上げすれば利用者の反発が予想され、結局鉄道事業者は輸送力増強の投資に慎重にならざるを得ない。こうした状況を打開するため、本法律が制定された。
[編集] 法律の概要
- 鉄道事業者には一定の値上げ幅を認め、上乗せ分を特定都市鉄道整備積立金とし、鉄道事業者は10年以内の間にわたって積み立て、実質的に運賃の先取りとして工事費へ充当することができる。
- 対象工事の工事費が、1年間の旅客運送収入以上であることが条件。
- 積立金の総額は、工事費の1割を限度とする。
- 積立金積み立てと同時に、その同額を特定都市鉄道整備準備金として積み立てなければならない。準備金は税制上の措置により、非課税となる。
- 工事終了後は、10年間にわたって準備金を1/10づつ取り崩し、その分を運賃値下げ等の形で利用者に還元する。
[編集] 適用事業区間
- 目黒線 目黒駅~多摩川駅間改良(継続中)
- 東横線 多摩川駅~日吉駅間複々線化(継続中)
- 大井町線 大井町駅~二子玉川駅間改良(継続中)
- 田園都市線 二子玉川駅~溝の口駅間複々線化(継続中)
- 東横線 渋谷駅~横浜駅間改良(継続中)
[編集] 問題点
本法律は事業期間を10年以内と想定しているが、沿線住民の理解が得られないなどの理由で事業期間が長期化するものが続出しており(小田急線など)、事業完成前にもかかわらず準備金の取り崩しを始めざるを得ない場合もある。よって、事業期間や積立期間、積立限度額については改善の余地があると考えられる。
また、本法律はJRグループを対象外とはしていないが、工事総額が1年間の旅客運送収入以上という条件では、本州3社(JR東日本・JR東海・JR西日本)については1兆円を超える工事しか対象にならず、実質的に適用は不可能となっている。よって、対象工事の金額規模についても検討の余地があると思われる。
[編集] 新規事業認定の終了
特定都市鉄道整備準備金の非課税を定めた租税特別措置法(昭和32年3月31日法律第26号)第56条が、平成17年(2005年)10月1日施行分より削除され、税法上の優遇措置がなくなったため、特特事業の新規認定は事実上終了した。