熊本市交通局9700形電車
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熊本市交通局9700形電車(くまもとしこうつうきょく9700かたでんしゃ)とは、1997年に製造された熊本市交通局の路面電車である。日本で最初の超低床路面電車とされる。第38回ローレル賞および第19回国際交通安全学会賞を受賞している。
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[編集] 車両概説
欧州各国で整備が進められていたLRT用で多く使用されている超低床電車を日本向けに設計した車両である。台車および電気部品はドイツのアドトランツ(ダイムラー・クライスラーレールシステムズ 現ボンバルディア)社が製造しているブレーメン形(GTシリーズ)のものを使用しているが、車体の製造と機器の艤装は新潟鐵工所(現新潟トランシス)が行っている。
[編集] 車体構造
前面は曲面となっているが、その後に製造された岡山電気軌道9200形電車や万葉線MLRV1000形電車などに比べると全体的に直線的にまとめられた外観デザインとなっている。側面には前位車両の前部と後位車両の連結面寄りの2ヶ所にプラグドアが配されている。窓は従来車より拡大されている。
塗装は白色であるが、9701ABのみ下部を水色のグラデーションとしている。また一部車両では車内外の塗色などに水戸岡鋭治が携わっている。
[編集] 台車・機器
2車体連接構造で、台車は独立した車輪を1車体につき4輪配置し車軸をなくした構造である。これにより車軸による床面高さの上昇を抑え、超低床化を実現している。日本で昭和30年代以降に多く製造された従来の連接車とは異なり、連接部分には台車はない。
主電動機は1車体に1台搭載している。
台車や走行機器はカバーで覆われており、通常運行時には見ることができない。
[編集] 車内設備
床面は全面ノンステップ構造となっている。座席はドア向かいがロングシートで、その他は向かい合わせの座席を並べたセミクロスシートとなっている。運転席の後ろには車椅子スペースとなる折り畳み座席が設けられている。
また、床下に機器が設置できないことから一部の機器を連結面に設置しており、従来の連接車に比べると貫通路の幅が狭い。
冷房装置を完備している。運転席部分にも冷房装置を設けている。
[編集] 乗務員
連接車ではあるが、前位車両の前ドアを降車用、後位車両の連結面寄りドアを乗車用としたワンマン運転が可能な構造となっている。しかし現在、運行に際しては運転士のほかに「エルパーサー」と呼ばれる女性車掌が乗務しており、停車時にはこのエルパーサーが後位車両の連結面寄りドアの脇に立ち、運賃収受を行っている。運転士のいる前方ドアとあわせ、双方のドアから乗降ともに可能である。
[編集] 投入時期と差異
最初の1本は1997年8月より営業運転を開始した。熊本市交通局が2億2000万円で購入し、このうち6000万円は自治省からの補助金である。1999年4月に投入された第2・3編成はデビス・ファイナンシャルサービスが購入し、熊本市交通局が15年契約でリースする形をとっている。行先表示機がLEDから幕になるなど細部の仕様に変更がある。2001年3月には第4・5編成が登場した。この第4・5編成では、地元地方銀行肥後銀行系のリース会社肥銀リースが購入し熊本市交通局へリースしている。制御機器が三菱電機製になるなど、国産化が進められている。
[編集] 主要諸元
- 製造初年:1997年
- 全長:18550mm
- 全幅:2350mm
- 全高 (車体):3546mm (2940mm)
- 床面高さ (客用扉付近) : 360mm (300mm)
- 自重:21.0t
- 定格出力:100kW×2
- 最高速度:40km/h (設計70km/h)
- 起動加速度:2.5km/h/s (設計1.3m/s²)
- 減速度 (非常):4.6km/h/s (5.0km/h/s) (設計1.3m/s² (2.7m/s²))
- 定員 (固定椅子+補助椅子) :76 (18+6) 人
- 制御方式:VVVFインバータ制御方式