打撃妨害
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打撃妨害(だげきぼうがい)は野球において、守備側が打者を妨害した場合に、打者に一塁が与えられるルールである。
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[編集] 概要
多くの場合打撃妨害は、捕手が打者または打者のバットに触れることで起こるが、内野手(例えば一塁手が送りバントを阻止すべく著しく前進守備をした、など)が打撃の妨げになった場合にも打撃妨害となることがある。打撃妨害は打席が終わるが打数には入らない。また、打撃妨害とボークが同じプレイで起きたときは、ボークが優先される。打撃妨害行為を行った野手には失策が記録される。
[編集] 打撃妨害が宣告される場合
- 捕手が打者または打者のバットに触れた。ミットをはじめ、捕手が身につけている野球具で触れても同様。
- 捕手がボールを持たずに、本塁上または本塁より前に出てきた。
- 打者が打つ前に、捕手または野手が投球を本塁上または本塁より前で捕球した。
[編集] 処置
打撃妨害があった場合、審判員は頭上で左手の甲を右手で叩くジェスチャーをして「打撃妨害」と宣告し、タイムをかけてボールデッドにする。打者には一塁が与えられ、打者のために塁を明け渡す必要がある(フォースの状態にある)走者は進塁する。満塁の場合は押し出しになる(投手の自責点にはならない)。また、走者が盗塁を試みていた場合には、盗塁による進塁は認められる。ただし、盗塁先の塁を占有している走者(例えば二塁走者が三盗しようとしたときの三塁走者)が盗塁しようとしていなかった場合には、前の走者に進塁が認められないので、結果として盗塁による進塁が認められなくなる。
- 三塁走者がスクイズまたは盗塁を試みたときに、捕手やその他の野手が、ボールを持たずに本塁上または本塁より前に出てきた場合には、投手にボークを課して、三塁走者を含む全走者に一個の安全進塁権を与える。さらに打撃妨害を宣告して打者にも一塁を与える。この際はボールデッドになる。ただし、投手が投手板(プレート)を外して捕手に送球した場合は、捕手が本塁上に出てきて捕球するのは正当な守備行為であり、これを打者が打つのはかえって守備妨害にあたる。(公認野球規則7.07)
[編集] 打者が打った場合
打撃妨害にもかかわらず打者が打った場合(ファウルの場合を除く)は、ひとまずインプレイとなる。プレイが一段落したところで審判員が「タイム」を宣告し、状況によってその後の処置が異なってくる。
- 打者が安打、失策、野手選択、四死球、その他で一塁に達し、塁上にいる全ての走者も一個以上の進塁ができたときは、妨害とは関係なくプレイが続けられる。すべての打者と走者が一個以上進塁し、さらに進塁しようとしてアウトになった打者や走者がいたとしても同様である。
- 打者がアウトになり、塁上にいるどの走者も一個も進塁できなかったときは、「打撃妨害」が宣告され、打撃妨害による処置が行われる。
[編集] 監督の選択権
上記にあたらないときには、監督の選択権が発生する。球審は攻撃側の監督に状況を説明し、「このまま成り行きに任せるか」、「打撃妨害を宣告することを望むか」のいずれかを選択させる。これを監督の選択権といい、攻撃側の監督が選択した通りに処置がなされる。なお、攻撃側の監督が一度選択したら、取り消すことはできない。
例えば、無死二塁で、打者が打撃妨害にもかかわらず送りバントをして、打者走者は一塁でアウトになり、二塁走者が三塁に進塁した場合、攻撃側監督は「成り行きに任せる」で一死三塁とするか、「打撃妨害の宣告」で無死一・二塁とするかを選択できる。
[編集] 打撃妨害の多い打者
プロ野球の中日ドラゴンズで活躍した中登志雄は、打撃妨害の多い選手として知られている。低いコースの投球には体を伸ばし、高いコースの投球には体を縮めてボールカウントを稼ぐちょうちん打法を得意としていた。それを防ぐため、捕手は打者に近い位置で捕球することを考えた結果、ミットとバットが接触し、打撃妨害になることが多かった。
[編集] 事例
2006年9月7日、横浜ベイスターズ-広島東洋カープ18回戦(下関球場)
5-5の同点で迎えた10回裏の横浜の攻撃時、二死満塁で打者・佐伯貴弘のスイングしたバットが捕手・石原慶幸のミットに接触した。このとき佐伯は投球を打っていたが、打球はファウルボールであったため、打撃妨害により佐伯に一塁が与えられた。塁上の走者もそれぞれ進塁し、打撃妨害による押し出しサヨナラゲームとなった。
1964年8月22日に阪急ブレーブスの捕手・住吉重信のミットにバットが接触してサヨナラという試合があった。