怪物王女
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『怪物王女』(かいぶつおうじょ、Princess Resurrection)は、光永康則による漫画。
『月刊少年シリウス』(講談社)において、2005年8月号から連載中である。
バイオレンス・ホラーとコメディの要素を含む少年漫画。怪物を統べる王族の一員「姫」の戦いを、主人公の少年「ヒロ」の視点を中心として描く。ボーイ・ミーツ・ガール・ストーリーを思わせる設定や画風と裏腹な、激しい暴力描写や古典的ホラー作品を意識した演出表現が特徴である。
注意 : 以降に、作品の結末など核心部分が記述されています。
目次 |
[編集] あらすじ
平凡な少年、日和見日郎(ヒロ)は不慮の事故で死亡する。
その場に居合わせた少女「姫」によって仮初めの命を与えられ蘇生したヒロだが、それが原因となって凄惨な戦いに巻き込まれることとなる。姫は「怪物」を統べる王族の王女であり、兄弟姉妹達の王位争いの渦中にいたのだ。
「血の戦士」として王女に仕える立場となったヒロは、姫の命を狙って次々と現われる怪物達との戦いを続ける中で、次第に姫の隠れた素顔を知っていく。
[編集] 主な登場人物
[編集] 姫の周囲の人物
- 姫
- 日和見日郎(ひよりみ・ひろ)
- 通称ヒロ。気弱な中学2年生。フランドルの曳く荷車とワゴン車の衝突事故の巻き添えを食い死亡したが、それを憐れんだ姫に血を与えられ蘇生する。この時点では姫の気まぐれに近い数日限りの命だったが、その夜の狼男との遭遇戦での気概を認められ「血の契約」を受け姫の下僕となった。
- 当初は血の戦士の力に強制的に引きずられ戦いに身を投じていたが、姫の人となりを知るにつれ自発的に姫を守る行動を取るようになる。
- フランドル
- リザ・ワイルドマン
- 狼男の父ヴォルグ・ワイルドマンと人間の母を持つ半分人間(ハーフブリード)の少女。軽いくせのあるショートカットとラフな服装が特徴。兄を姫に謀殺されたという誤解から姫を襲うが、後に事情を知り和解。真犯人である王族を探すため、姫の元に身を寄せている。
- 混血の人狼であるため肘から先までしか変身できないが、戦闘能力は一般の狼男に引けを取らない。単純で粗暴な面もあるが誇り高く純粋な性格。ヒロの優しい性根を好みしょっちゅう遊び相手に付き合わせている一方、姫からは格好のからかいの対象として扱われているようだ。人狼の血を引くためかバイクやジェットスキー等スピード感のある乗り物を好む。
- 嘉村令裡(かむら・れいり)
- 吸血鬼の少女。ヒロが通う笹鳴学園の高等部に属し、美貌と上品な物腰から学園のアイドル的存在でもある。長い黒髪と特別あつらえの黒いセーラー服がトレードマーク。学園の少女たちに「令裡さま」と慕われる立場を気に入っており、日光に弱い体を押して学園に通う。
- かつて吸血鬼としての高い能力を活かし、姫の生き血を狙うも失敗。自らを破った姫には一目置いており共闘も辞さない。もともと同族間でも孤高を好んでいたが、キニスキーと敵対したことにより吸血鬼の社会から追われる立場となった。以来住み処を失くしたため姫の屋敷に居候する。ヒロの事はからかい半分ではあるがその純粋さを気に入ってもいるようだ。
- シャーウッド
- 王族の一員で第3皇女。姫の妹。黒いドレスを纏った金髪の童女。食人植物「トリフィド」(同名の肉食植物とは設定が異なる)を自在に操り、その能力で姫の命を狙うが力及ばず敗れる。もとより姫に悪感情を持っていた訳ではなく、姫とは和解に至った。誇り高い性格だがまだ幼さが抜け切らず、文字通り命を懸けて自分を救ったヒロにはすっかり気を許し血の契約を行なおうとしている。
- フランシスカ
- シャーウッドに仕える人造人間。メイド服を着て眼鏡をかけた女性の姿形をしている。フランドルの姉妹機にあたり能力的にもほぼ同等だが、高度なプログラムにより指弾を操り格闘技術にも長けている。知性面でもフランドルより優れるのか、未熟な主人を的確にフォローすることもしばしば。
- フランセット
- 王族に仕える人造人間。主はキニスキーに囚われている。フランドルの姉妹機で、メイド服の成人女性の姿。黒目がちな瞳が特徴。破損した左前腕部の代わりに、武器として巨大なドリルを取り付けている。
- 紗和々(さわわ)
- 姓は未出。ヒロの姉で、姫の屋敷の住み込み家政婦をしている。ひどくズレた性格で、数々の騒動の後もなお姫の正体やヒロの体の異状に一切疑問を持っていない。料理の腕は姫も認める一級品であり、また男が誰しも振り向く巨乳の持ち主。住み込みにも関わらずしばしば作中に登場しないが、その理由は不明。
[編集] 姫と敵対する人物
- キニスキー
- 血の戦士化した吸血鬼。荒々しい長髪と整えられた髭の怪人物。王国の辺境に城を構える公爵であり、「人狼殺しのキニスキー」の二つ名を持つ。主の正体は不明。王族の一人を捕らえ居城に監禁しているが、リザと令裡によって妨害されている。
- ツェペリ
- 吸血鬼。浅黒い肌と銀髪・顎髭の優男。吸血鬼の根城である笹鳴総合病院の主である。自らは前線に立たず暗躍する道を好み、姫を狙い様々な策謀を巡らす。
- 同族の令裡とはある程度協調関係にあったが、彼も恐れるキニスキーを令裡が敵に回して以来、吸血鬼社会の決定に従い令裡と敵対する。
- エミール
- 王族の一員で、姫の兄にあたる。装飾的なシャツを着た高貴な面立ちの青年。姫とは敵対関係にあるが、姫を重要視はしておらず関係は均衡を保っている。
- キザイア・ボルド
- エミールに仕える人狼の戦士。顔を縦に走る四本の傷と葉巻が特徴。父にカザリア・ボルドを持ち、リザの父ヴォルグとはかつての戦友である。憎まれ口は多いが義を重んじ誇りを忘れない好漢。戦士としての伎倆は同族のリザよりも高みにある。
- フランダース
- エミールに仕える人造人間。フランドルらと異なり、人間に数倍する巨大な体躯と機械的な外見をもつ。発せられる声は「フガ」だけのよう。
- 人魚
- 姓名ともに不詳。新たにエミールの血の戦士となった人魚の童女。声と引き替えに人間の足を持つ呪いがかけられており、姿は人間そのものだが笛の音で船舶を呼び寄せる人魚の能力を持つ。呪いのため声を発することはできないはずだが、一度だけキザイアの危機に声を上げている(理由は不明)。
[編集] 用語
- 血の戦士
- 死人に王族が自らの血を飲ませる事(契約)で生み出す「半不死身」の生命体の総称。どんな外傷を受けても死ぬ事がなく、傷もすぐに回復する。また契約した王族の危機に際しては無意識に身体能力が強化される。この際、体毛と瞳の色が白色に変化するのが特徴。王族が自分で殺した者とは契約を結んではならないという掟がある。
- 不死身の一方で、数日に一度は王族の血を飲まないと効力が消え、死亡してしまうという弱点を持つ。また、一度血の効果が切れてしまうと、もう蘇生出来ない。
- 人狼
- 狼男とも。主に狼の上半身と特に肥大化した上腕を持つ姿で現われるが、完全な人間の姿に変身もできる。強靭で素手の戦いを得意とし、高い聴力(人間の姿の耳と別に、頭頂部に狼然とした耳が生える)と嗅覚をもつ。特に満月の夜には最大の力を発揮する。弱点は銀の銃弾。同胞意識が強く家名を重んじ、戦いに生きる誇り高い種族であるが、中には例外も少なからずいるようだ。
- 人狼は吸血鬼とは天敵同士で、過去には種族間での殺し合いの歴史がある。リザと令裡も犬猿の仲である。
- 吸血鬼
- 人間と変わらぬ容姿をし、また血液を能力の媒介とする点で王族とも類似性があるが、根本的に異なる種族。飛行能力や催眠術、吸血による下僕化、コウモリへの分裂や使役など様々な能力を持つ。また一方で弱点も多く、日光の下では貧血に似た症状になりひどく動きが鈍り、またホワイト・アッシュの杭で胸を突かれれば死に至る。家人に招かれた事のない家には入れないという特殊な制限も持つ。十字架やニンニクを嫌うが、直接的な弱点ではない。
- 血を吸われ吸血鬼化した者は「下層吸血鬼」とされ、能力面で純血の吸血鬼より大きく劣る。純血の吸血鬼の多くは高い知性と優雅な物腰が特徴のよう。処女の生き血を好み、特に王族の血は最高級のものとされる。
- 人造人間
[編集] 派生作品
[編集] 地獄に道連れ! ケルベロッテちゃん
単行本第1巻および第2巻に書き下ろされた巻末特別付録 (Bonus Track) 。「『怪物王女』スピン・オフ(外伝)漫画」と題されている。
本編とは異なるタッチのギャグ漫画。地獄の門番「ケルベロッテ」と彼女に仕えるケルベロスに似た怪物「クロブラック」の、現世に逃れた「神殺し47堕天使」との戦いを描いている。単純化された描線とコントラストの強い陰影表現が特徴で、ナンセンスなスラップスティック・コメディ的作風も含め、本編とはイメージが大きく異なる。劇中にはフランドルと思われるキャラクターが登場しているが、本編との正確な関連は不明。
[編集] 他作品との共通点
本作に登場する怪物の設定は、多くが古典的ホラー作品における通俗的な設定を(パスティーシュとして)なぞりあるいはパロディ化しており、これは前記の人狼や吸血鬼の設定等に顕著である。また幾つかの点では他作品からの引用やオマージュが見られる。特徴的なものは以下の通り。
- 『怪物くん』との相似
- 本作の主要キャラクターの配置は藤子不二雄Aのギャグ漫画『怪物くん』のそれを翻案したもの。
- 姫の立場 - 怪物くんは「怪物ランド」の王子であり、人間の国(日本)に大きな屋敷を構える。本作でも怪物の国の王女である姫が人間界の屋敷に居を移す所から物語が始まっている。
- ヒロの家庭環境 - 『怪物くん』の主人公市川ヒロシはヒロと同様、働く姉と共同生活をしており、両親や他の親族との交流は描かれない。また両作品とも主人公がよく気絶する点にも相似が見られる。ヒロシの場合は怪物を見たショックで、ヒロの場合は肉体的ダメージにより意識を失う場合が多い。
- 姫をとりまく三名 - 怪物くんに仕える怪物三人組は、怪力で「フンガー」としか喋れない人造人間フランケン・人のいいオオカミ男・上品なドラキュラと、それぞれフランドル・リザ・令裡の三名が対応している。
- 怪奇文学・映像作品からの引用
- 単行本カバー折り返しおよびカバー下の裏表紙にデザインされている文章 'That is not dead which can eternal lie, And with strange eons even death may die.' はクトゥルフ神話上の禁書「ネクロノミコン」からの引用(「久遠に臥したるもの 死することなく 怪異なる永劫の内には 死すら終焉を迎えん」)である。また、第5話に登場する半魚人の描写にもクトゥルフ神話に登場する「深きもの」の影響が見られる。
- 第9話に登場する人造人間の内部構造は映画『ターミネーター』シリーズに登場するアンドロイドT-800を思わせる造形になっている。また第10話に登場する名の無い怪物「アレ」は映画『遊星からの物体X』における'The Thing'のオマージュである(The Thing もアレも、ともに名状しがたい物を曖昧に指す呼び名として使われている)。