弘南鉄道黒石線
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黒石線(くろいしせん)は、弘南鉄道が運営していた鉄道路線。青森県南津軽郡田舎館村の川部駅から黒石市の黒石駅までを結んでいたが、1998年に廃止された。旧国鉄の特定地方交通線で、同じ青森県内の大畑線とともに純民間資本の民営鉄道に転換された数少ない例であった。
目次 |
[編集] 路線データ(廃止時)
- 区間(営業キロ):川部~黒石(6.2km)
- 駅数:3(起終点を含む)
- 複線区間:なし(全線単線)
- 電化方式:全線非電化
- 閉塞方式:自動閉塞式(弘南鉄道転換前はスタフ閉塞式)
- 交換可能駅:なし(全線1閉塞)
[編集] 利用状況
[編集] 輸送実績
黒石線の転換後の輸送実績を下表に記す。転換後輸送量は減少し、転換時の約半分になった時点で廃止されている。 表中、輸送人員の単位は万人。輸送人員は年度での値。表中、最高値を赤色の枠で、最高値を記録した年度以降の最低値を青色の枠で、最高値を記録した年度以前の最低値を緑色の枠で囲んで表記している。
年 度 | 輸送実績(乗車人員):万人/年度 | 特 記 事 項 | |||
通勤定期 | 通学定期 | 定期外 | 合計 | ||
1984年(昭和59年) | 3.8 | 7.5 | 6.0 | 17.3 | 国鉄より転換 |
1985年(昭和60年) | 5.5 | 13.0 | 12.2 | 30.7 | |
1986年(昭和61年) | 4.6 | 13.0 | 11.5 | 29.1 | |
1987年(昭和62年) | 4.2 | 12.6 | 10.6 | 27.4 | |
1988年(昭和63年) | 3.7 | 11.0 | 9.7 | 24.4 | |
1989年(平成元年) | 3.3 | 11.3 | 9.1 | 23.7 | |
1990年(平成2年) | 3.0 | 12.7 | 8.7 | 24.4 | |
1991年(平成3年) | 2.7 | 13.4 | 8.6 | 24.7 | |
1992年(平成4年) | 2.9 | 13.8 | 8.2 | 24.9 | |
1993年(平成5年) | 2.7 | 12.0 | 7.6 | 22.3 | |
1994年(平成6年) | 2.3 | 10.6 | 7.1 | 20.0 | |
1995年(平成7年) | 2.3 | 9.6 | 6.6 | 18.5 | |
1996年(平成8年) | 2.2 | 10.1 | 6.4 | 18.7 | |
1997年(平成9年) | 1.6 | 9.4 | 5.4 | 16.4 | 路線廃止 |
[編集] 収入実績
黒石線の転換後の収入実績を下表に記す。旅客運賃収入は一時増加したがその後減少し、廃止を迎えた。 表中、収入の単位は千円。数値は年度での値。表中、最高値を赤色の枠で、最高値を記録した年度以降の最低値を青色の枠で、最高値を記録した年度以前の最低値を緑色の枠で囲んで表記している。
年 度 | 旅客運賃収入:千円/年度 | 運輸雑収 千円/年度 |
総合計 千円/年度 |
||||
通勤定期 | 通学定期 | 定期外 | 手小荷物 | 合 計 | |||
1984年(昭和59年) | 10,792 | ←←←← | 11,157 | 0 | 21,949 | 336 | 22,285 |
1985年(昭和60年) | 18,873 | ←←←← | 24,839 | 0 | 43,712 | 1,382 | 45,094 |
1986年(昭和61年) | 17,995 | ←←←← | 23,401 | 0 | 41,396 | 3,000 | 44,396 |
1987年(昭和62年) | 6,487 | 12,030 | 22,095 | 0 | 41,612 | 3,854 | 45,466 |
1988年(昭和63年) | 5,767 | 10,455 | 21,488 | 0 | 37,710 | 816 | 38,526 |
1989年(平成元年) | 5,004 | 10,765 | 20,583 | 0 | 36,352 | 884 | 37,236 |
1990年(平成2年) | 4,677 | 12,009 | 19,317 | 0 | 36,003 | 867 | 36,870 |
1991年(平成3年) | 3,959 | 12,887 | 19,261 | 0 | 36,107 | 1,161 | 37,268 |
1992年(平成4年) | 4,394 | 13,397 | 18,540 | 0 | 36,331 | 988 | 37,319 |
1993年(平成5年) | 4,403 | 12,636 | 18,296 | 0 | 35,335 | 962 | 36,297 |
1994年(平成6年) | 3,694 | 11,084 | 17,525 | 0 | 32,303 | 1,003 | 33,306 |
1995年(平成7年) | 3,571 | 10,067 | 16,220 | 0 | 29,858 | 1,008 | 30,866 |
1996年(平成8年) | 3,355 | 10,957 | 15,672 | 0 | 29,984 | 1,600 | 31,584 |
1997年(平成9年) | 2,487 | 10,737 | 14,031 | 0 | 27,255 | 1,070 | 28,325 |
[編集] 歴史
この路線は軽便鉄道法に基づいて計画されたもので、1912年に黒石軽便線(くろいしけいべんせん)として開業した。1950年に弘南鉄道弘南線が弘南黒石まで延伸されると、旅客は弘南線に流れ、黒石線の乗客は減少していった。1968年10月には弘南鉄道から国鉄東北支社に対し経営委託の申し入れを行っている。
1980年に国鉄再建法が成立すると廃止対象の第1次特定地方交通線に指定され、かつてのライバルであった弘南鉄道は、黒石線が第三セクター化などで輸送改善がされると自社路線が打撃を受けると考え、自社線に取り込んで経営を引き継ぐこととなった。その際、国鉄と弘南で別れていた黒石駅は、国鉄黒石駅の直前から弘南黒石駅に渡り線を新設して弘南黒石駅に統合されている。しかし、川部経由では乗換を強いられることになり、運賃も国鉄・弘南の合算となって割高となるなど乗客にとってのメリットは少なく、弘南鉄道自身にとっても自社の弘南線が弘前~黒石間を結んでいる上、黒石線のためだけに気動車を保有するという非効率もあって、黒石線を取り巻く状況は国鉄時代よりさらに悪化したといってよい。また、わずか6.2kmという短距離路線であったことも致命的であった。黒石線は、転換特定地方交通線のトップを切って1998年に廃止された。
- 1912年8月15日 【開業】黒石軽便線川部~黒石(4.1M=6.6km) 【駅新設】黒石
- 1922年9月2日 【線名改称】黒石線
- 1935年4月15日 【駅新設】前田屋敷
- 1981年9月18日 【廃止承認】第1次特定地方交通線
- 1984年2月1日 【貨物営業廃止】全線
- 1984年11月1日 【転換】弘南鉄道黒石線弘南川部~弘南黒石(6.2km) 【駅廃止】黒石(弘南黒石駅に統合) 【駅名改称】川部→弘南川部
- 1986年4月1日 【駅名改称】弘南川部→川部、弘南黒石→黒石
- 1998年4月1日 【路線廃止】全線(-6.2km)