人間椅子
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
人間椅子(にんげんいす)は、1980年代後半から主に日本で活躍している、三人構成のロックバンド(ハードロック/ヘヴィメタルバンド)である。
目次 |
[編集] 来歴
青森県立弘前高等学校の同級生で、中学生時代からすでに交流があった和嶋慎治と鈴木研一が1987年に結成したバンド「死ね死ね団」がそもそもの始まり。
高校卒業後二人は別々の大学へと進学したが(和嶋慎治は駒澤大学仏教学部、鈴木研一は上智大学外国語学部ロシア語学科に進学)、親交が途絶えることはなかった。
大学卒業が間近の和嶋が、自らの就職先が見つからず頭を悩ませていたところ、既に就職が決まっていた鈴木が本格的な音楽活動へと彼を誘ったといわれている。
彼らが世間で認知されるようになったのは1989年、TBS系列で放送されていた深夜番組「平成名物TV いかす!!バンド天国」に出演したことが大きい。鈴木がねずみ男風の奇抜な衣装で出場、これが視覚的に強烈な存在感を与え、さらにバンド自体の演奏技術の高さも相俟って審査員たちから“青ランプ連発”で絶賛された(この番組では、審査員たちは出場したバンドに対し、手元にある赤ランプを点灯することで演奏を中断させることができ、また逆に青ランプを点灯して演奏を続行させることもできた。青ランプ点灯という評価を受けたバンドは数少ない)。
余談であるが、このとき審査員たちが彼らの音楽に対して「文芸ロック」という呼び名をつけたため、以後高評価を受けたバンドに審査員から「○○ロック」と肩書きを与えることが慣例となってしまった。これは審査員側、バンド側の双方にとって大変迷惑なことであったという。
[編集] 特徴
人間椅子の音楽の特徴としてまず挙げられるのは、ハードロック・ヘヴィメタルに津軽三味線由来の旋律を絡めたドゥーミーなサウンドと、それにのせた津軽弁の歌詞、といったものである。
このような個性的な彼らのサウンドを紐解いてみれば、実に多くのバンドの影響が窺える。その筆頭は、やはり和嶋・鈴木両人が熱心なファンだというブラック・サバスであろう。一音半下げのチューニングや、緻密でヘヴィなリフには、ブラック・サバスの影響が明確に見て取れる。 その他には、ライブでも度々演奏されているレッド・ツェッペリンや、楽曲「Breadfun」を「針の山」としてカバーした(歌詞は和嶋のものに入れ替わっている)バッジーが挙げられる。ハードロック以外でも、プログレッシブロックの重鎮キング・クリムゾンのような楽曲構成、そしてそのリーダーであるロバート・フリップを彷彿させるギター捌き(和嶋自身、影響を受けたと公言)、ピンク・フロイドのような陶酔感、そしてザ・ビートルズ。彼らのサウンドは様々な要素が複雑に絡み合って完成されたものなのである。
歌詞についても、津軽弁はただ闇雲に使われているわけではなく、歌詞を含めた曲全体が引き立つよう計算のもとで用いられている。歌詞の内容自体も、ときに深遠、ときに軽妙に、彼らにしか作り得ないものとなっている。
人間椅子の作詞・作曲は和嶋、鈴木の二人が中心であり(ドラム担当者は作曲はしばしばするものの、作詞することはあまりない)、ヴォーカルは基本的に作曲者が取るようになっている。よく和嶋と鈴木の合作も行なわれるが、その場合は鈴木が歌うことが多い。
各々の作詞における違いについて言えば、和嶋慎治の詞はそのほとんどが文学に傾倒したもので、特に日本文学への造詣が深く、江戸川乱歩に対する敬意には並々ならぬものがある。その他には宗教、主として彼が大学で学んだ仏教の用語がよく用いられている。また鈴木研一の詞には、妖怪、悪霊、悪魔などといった不気味なモチーフが多用され、そこへ独特の言い回しや淫靡な言葉などといった要素が加わる。鈴木の趣味であるギャンブル、特に「一日一度は台に座らないと気がすまない」と公言するパチンコを題材にしたものも多い。 ドラム担当者については、土屋巌は自らの人生回顧、後藤マスヒロは自らの病気(不眠症)に関する歌詞を書いている。上館徳芳とナカジマノブ(2006年現在)が作詞した曲はない。
[編集] 名前の由来
「人間椅子」の名前は、江戸川乱歩の同名短編小説に由来する。 大学卒業後、東京で「死ね死ね団」として音楽活動をしていたが、同名のバンド(おそらく「大日本帝国初代新所沢愚連隊死ね死ね団」のこと)がいることを知った彼らは、「人間椅子」へとバンド名を変更した。
その時、同じく江戸川乱歩の小説「ペテン師と空気男」がバンド名の候補として挙がったものの、結局選ばれなかった。この「ペテン師と空気男」は、後にベストアルバムの題名となっている。
[編集] 現在のメンバー
- 和嶋 慎治 (ギター)
- 鈴木 研一 (ベース)
- ナカジマ ノブ (ドラム)
三者ともボーカルを兼任。 ドラマーの人事は流動的なので、その変遷については次項にまとめる。
[編集] ドラマーの変遷
- 第一期ドラムス 上館 徳芳 (1987年~1992年)
- 第三期ドラムス 土屋 巌 (1995年~1996年)
- 第二期・第四期ドラムス(※) 後藤 マスヒロ (1993年~1995年) (1996年~2003年)
- 第五期ドラムス(現在) ナカジマ ノブ (2004年~)
※1度目はサポートでの参加、2度目はメンバーとしての正式参加。
[編集] ディスコグラフィー
[編集] アルバム
- 人間椅子(※1)
- 人間失格(※2)
- 桜の森の満開の下(※2)
- 黄金の夜明け
- 羅生門
- ペテン師と空気男~人間椅子傑作選~ (ベスト盤)
- 踊る一寸法師 (※1)
- 無限の住人 (※1)
- 頽廃芸術展
- 二十世紀葬送曲
- 怪人二十面相
- 見知らぬ世界
- 押絵と旅する男~人間椅子傑作選 第2集~ (ベスト盤)
- 修羅囃子
- 三悪道中膝栗毛
- 瘋痴狂
※1 「人間椅子」はBANDSTOCK RECORD、「踊る一寸法師」はフライハイト(インディーズ)、「無限の住人」はポニーキャニオンより発売。
※2 CD版以外にカセットテープ版がある。
[編集] シングル
- 夜叉ヶ池
- 幸福のねじ
- もっと光を!
- 刀と鞘
この他に、アルバム「人間失格」の販売にあたり製作されたプロモーションシングル(カセット)がある。(非売品)
[編集] 映像
- 遺言状放送
- 怪人二十面相
- 見知らぬ世界
最初は全てVHS版で発売された。
「遺言状放送」は無変更で再販。
「見知らぬ世界」にはビデオ以後に発売された楽曲「東洋の魔女」と「洗礼」のPVを新たに収録して再販。
「怪人二十面相」は再販されておらず。
[編集] 関連項目
[編集] 外部リンク
カテゴリ: 日本のバンド | ハードロック | ヘヴィメタル・バンド