京都市営地下鉄東西線
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東西線(とうざいせん)は、京都府宇治市の六地蔵駅から京都府京都市中京区の二条駅までを結ぶ京都市営地下鉄の路線である。
京都市2番目の市営地下鉄路線として開業した。京都市中心部と滋賀県大津との都市間輸送及び京都市東部の山科・醍醐地区の通勤輸送を担う路線であり、1日平均12万人が利用している。
1997年に醍醐~二条間が開業後、2004年に六地蔵~醍醐間が延伸された。現在は2007年完成予定で二条駅から天神川駅までの延伸工事が行われている。天神川駅からはさらに西京区の洛西付近までの延伸が予定されている。市の郊外に洛西ニュータウンが建設された際に、「将来ここまで地下鉄が来る」という話を信じて入居した人が多く、住民から延伸を望む声が強いが、折からの不況や京都市の財政事情が厳しいことから建設の見通しは立っていない。
目次 |
[編集] 路線データ
- 管轄・路線距離(営業キロ):六地蔵~二条間 15.1km
- 軌間:1435mm
- 駅数:15駅(起終点駅含む)
- 複線区間:全線
- 電化区間:全線電化(直流1500V・架空電車線方式)
- 閉塞方式:車内信号式(ATC、ATO)
- 最高速度:75km/h
[編集] 概要
六地蔵駅から山科駅までは伏見区東部・山科区を南北に走る。山科駅から蹴上駅まで山を迂回するようにカーブし、蹴上駅から二条駅まで市内を東西に貫き、中心部では三条通・御池通・押小路通の地下を通る。なお、烏丸御池~二条城前間と京都市役所前~三条京阪間の2ヶ所にもカーブがある。
全ての駅にホームドアが設置されている。地下鉄でのホームドアの採用は東京地下鉄南北線に次いで、この同線で日本国内2例目である。 また、各駅毎にステーションカラーと呼ばれるシンボルカラーが選定されており、ホームドアのほか、駅名表示部、駅名パネル、駅務室の外壁、エレベーターの扉などがその色で統一されている。このステーションカラーは下の表のようにグラデーションしていく。
駅は全て島式ホームで、エレベーター、エスカレーターを完備しているほか、トイレの段差をなくしたり、車いす用スペースを設けたりして、バリアフリーが心掛けられている。
京都市営地下鉄で唯一発車メロディがあるが、4曲全てが京都の長い歴史を反映してか古風な雰囲気の曲である。製作した櫻井音楽工房/テイチクエンタテインメントはこの実績を買われ、後にJR東日本の発車メロディを担当することになる。曲名は以下の通り。
- 古都の朝靄(各駅共通・六地蔵行き)
- 醍醐寺の鶯(各駅共通・二条行き)
- 春開き(御陵駅のみ・京都市役所前行き)
- 詩仙堂猪脅し(御陵駅のみ・浜大津行き)
発車メロディについて詳しくはこちらを参照のこと。
[編集] 運行形態
京阪京津線のからの列車が御陵駅から京都市役所前駅まで乗り入れている。交通局の車両を使用する列車は東西線内六地蔵~二条間の運転で、交通局車は京阪京津線へは乗り入れない。京津線は路面区間を抱えているため、1~2分程度の遅れがしばしば発生する。
日中のダイヤは15分間隔で運転される京津線からの直通列車を除けば、開業当初は全線で10分間隔(1時間あたり6本)だったが、後に烏丸御池駅で連絡する烏丸線と運転間隔を揃えるためもあり7分半間隔(1時間あたり8本)に増発され、これにより15分あたり東西線内列車2本:京津線直通列車1本のパターンになっている。ただ、昼間時間帯は利用者がそれほど多くないことや、阪急京都本線や京阪本線が昼間は10分サイクル化されたこともあって、以前の10分間隔に戻した方が効率がよくなり、東西線に乗り入れる京津線と石山坂本線のダイヤを全線10分間隔に統一できるなどのメリットもあるとも言われる。
[編集] 利用状況
山科醍醐地域は団地及び新興住宅地が多く、京都や大阪のベッドタウンを形成しているが、周辺道路事情の悪さから渋滞が慢性化している土地柄で、開業前は時間の読めない路線バスしか選択肢がなかった地元住民の貴重な足となっている(なお、交通局の合理化政策の一環として、開業に合わせて同地区の市バスを全て京阪バスに移管している)。
また山科駅での乗り換えで滋賀県(JR東海道本線(琵琶湖線)・湖西線、京阪京津線)方面や、二条駅乗り換えで京都府南丹(JR山陰本線(嵯峨野線))方面から京都市中心部に流入する利用も多く、六地蔵駅で京阪宇治線やJR奈良線乗換えで宇治・奈良方面への流動も見られる。
現在の段階では観光客利用はそれ程多くないが、天神川駅への延伸が完成すると京福電鉄嵐山本線もそれに合わせて新駅を設置する事により、嵐山方面との接続が二条駅でのJR嵯峨野線に続いて形成される為、利用が増加することが見込まれている。
[編集] 車両
[編集] 自局車両
[編集] 乗り入れ車両
[編集] 歴史
[編集] 建設までの経緯
戦後、京都市交通局は市電の新たな計画青写真として六地蔵~醍醐~山科~蹴上から御池通を縦断する路線(高架式も考えられた)を検討したがやがてモータリゼーションの波に洗われ計画は頓挫する。しかしその計画は地下鉄路線として新たに練り直されることとなった。
東西線沿線は人口の伸びが著しい傾向を見せるが、それに周辺の道路整備が追い付かずに渋滞が深刻化していた京都市東部地域(山科区・伏見区東部)と都心部をつなぐための交通機関として1965年頃から計画が進められ、1969年の市議会で建設が正式に決定。1975年頃にまず醍醐~二条間の建設を行うことが決定された。
しかし、その時計画されたルートのうち、御陵~三条京阪間は京阪京津線が地上を走っており、この競合が問題となった。併設については、過当競争を招くとして、また、この区間の地下鉄を公営地下鉄方式で造り、そこに京阪線が乗り入れることは民営鉄道である京阪線の改良を公営方式で行うことになるために、不適当とされた。
協議の結果、京都市と京阪電気鉄道で第三セクター会社を設立し、そこが第三種鉄道事業者の免許を取得した上で、京都市が第二種鉄道事業者の免許を取得してその区間の列車運行を行うことに決まった。こうしてできたのが京都高速鉄道株式会社である。1988年に発足し、社長には当時の京都市長の今川正彦が就任した。こうして、京都高速鉄道が日本鉄道建設公団方式で地下鉄を新設し、乗り入れに伴って京阪京津線の地上区間は廃止されることとなった。
京都での地下工事時に付きまとう、遺構が発掘される度に工事が中断を余儀なくされることが多発したり、東海道新幹線や鴨川を潜るなどの難工事を経て、1997年に醍醐~二条間が開業。京阪京津線が御陵~京都市役所前間に乗り入れを開始した。
京阪京津線が当初予定していた三条京阪ではなく、その次の京都市役所前まで乗り入れているのは、三条京阪付近では折返し運転をするのに必要なスペースが確保出来なかった(同駅西側はすぐ急カーブとなっている上に、直下に鴨川が流れており、折り返し線設置には向いていない)ためであり、二条駅まで乗り入れないのは京都市交通局との車両使用料精算の兼ね合いが理由となっている。なお開業時(京阪線の地上区間廃止時)に「九条山駅」と「日ノ岡駅」が廃止された。九条山駅周辺住民からは地下鉄駅設置の要望が出ていたが、難工事が予想された上に利用者が余り見込めなかったことなどから実現されなかった。
[編集] 地下鉄東西線のさらなる西部への延伸
京都市営地下鉄東西線は西京区の洛西方面までの延伸が構想として存在するが、差し当たり天神川までの延伸に留まり、その後の延伸の具体的展望はなかなか描かれていない。その背景には、
- 地下鉄の建設費が高額
- 京都市の財政事情が芳しくない
- 洛西ニュータウンに至るまでの梅津・上桂地域などの沿線人口がそれほど多くない
- 洛西ニュータウン自体の人口が横ばいあるいは減少傾向
- 阪急桂駅以外に、阪急洛西口駅がすでに整備され、またJRの新駅(JR桂駅・仮称)も設置予定なことで、交通の不便さがある程度解消されてきた
などが考えられる。そのため、洛西ニュータウンへの路線は既存の計画とは切り離した上で、洛西口駅・JR桂駅までの独立した短距離路線で建設して、これらの駅での阪急京都線・JR京都線乗り換えで京都・大阪への都心部へのアクセスを向上させる方がまだ現実的、との声もある。
2002年の地下鉄天神川延伸起工式で、京都市長は、洛西への地下鉄延伸につき「私の悲願」と表現している。また京都市の公式サイト上にも、『市長への手紙 > よくあるご意見とその回答』を見ると、(地下鉄は)「洛西ニュータウンまでの整備を目指しますが、財政状況を考慮し、まずは段階的に二条~天神川間から整備する」と表現している。
[編集] 年表
[編集] 駅一覧
駅番号 | 駅名 | 営業キロ | 1日平均 乗降客数(2004年度) |
ステーションカラー | 接続路線 | 所在地 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
T01 | 六地蔵駅 | 0.0 | (*1) 5,508 | 勿忘草色 | 西日本旅客鉄道:奈良線 京阪電気鉄道:宇治線 |
宇治市 | |
T02 | 石田駅 | 1.1 | (*1) 2,500 | 藍白 | 京都市 | 伏見区 | |
T03 | 醍醐駅 | 2.4 | 7,216 | 桜色 | |||
T04 | 小野駅 | 3.6 | 3,178 | 紅梅色 | 山科区 | ||
T05 | 椥辻駅 | 4.9 | 7,033 | 秋桜色 | |||
T06 | 東野駅 | 5.9 | 4,792 | 藤色 | |||
T07 | 山科駅 | 7.0 | 18,674 | 藤紫 | 西日本旅客鉄道:東海道本線(琵琶湖線)・湖西線 京阪電気鉄道:京津線(京阪山科駅) |
||
T08 | 御陵駅 | 8.7 | (*2) 8,260 | 桔梗色 | 京阪電気鉄道:京津線(直通) | ||
T09 | 蹴上駅 | 10.5 | 4,373 | 菫色 | 東山区 | ||
T10 | 東山駅 | 11.5 | 7,049 | 菖蒲色 | |||
T11 | 三条京阪駅 | 12.1 | 12,715 | 牡丹色 | 京阪電気鉄道:京阪本線・鴨東線(三条駅) | ||
T12 | 京都市役所前駅 | 12.6 | 10,499 | 韓紅 | 中京区 | ||
T13 | 烏丸御池駅 | 13.5 | (*3) 16,753 | 朱色 | 京都市営地下鉄:烏丸線(K08) | ||
T14 | 二条城前駅 | 14.3 | 3,288 | 柿色 | |||
T15 | 二条駅 | 15.1 | 8,984 | 山吹色 | 西日本旅客鉄道:山陰本線(嵯峨野線) | ||
2007年開業予定区間 | |||||||
西大路駅(仮称)(*4) | 京都市 | 中京区 | |||||
天神川駅(仮称) | 17.5 | 京福電気鉄道:嵐山本線 | 右京区 |
- (*1) 2004年11月26日(開業日)~2005年3月31日の126日間の1日平均乗降客数。
- (*2) 京阪京津線直通客を含む。
- (*3) 烏丸線の乗降客数を含み、東西線⇔烏丸線の乗換客数は含まない。(つまり、烏丸御池駅の改札を通過した人数である)
- (*4) 京都市営地下鉄の西大路駅(仮称)は中京区の西大路御池交差点付近に建設が予定されており、南区にある東海道本線(JR京都線)の西大路駅とは全く別地点である。