二次創作物
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二次創作物(にじそうさくぶつ)とは、著作権の発生している著作物(小説、漫画、アニメ、映画など)のストーリーや世界観、人間関係やキャラクター(兵器等の非人格も含む)などを元にして、個人もしくはグループの想像により制作された独自ストーリーの漫画や小説、あるいはキャラクターを用いて自らのイメージによる構図などでイラスト・CGや立体造形物(フィギュアなど)として創作されたものを指す表現である。
一つの二次創作物について原作は一つとは限らず、複数の(ときには全くジャンルの異なる)原作のキャラクターや世界を混在・交流させて新しい物語を創ることもある(クロスオーバー)。また、原作の世界観に基づいて独自キャラクターを追加することや、原作のキャラクターを用いて別世界の話を構築することもしばしばであり、これらは「パラレルもの」と呼ばれる。
その他、原作から触発されたイメージによって制作された音楽や、キャラクターのコスプレも二次創作に含むこともあり、その内容・表現は多岐に渡っている。
現在、漫画・アニメに関する同人誌やWeb上のファンサイトの内容の多くは、この二次創作物が占めている。中には、他人もしくは自己の二次創作物を元にした「三次創作物」と呼ばれる作品さえも見られる。
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[編集] 正式名称
「二次的著作物」と呼ばれるものに相当する。 「二次創作」という言葉は造語が定着したもの。
[編集] 法的位置づけ
作成には原則的に著作権保有者の許可が必要になる(金銭を伴うことも多い)。 そのため、著作権保有者が事前に、制作を一定の制限(青少年に影響を与える内容の禁止など)をつけ、許可していたり、完全な禁止を表明している著作物もある。
しかし、2005年時点での現状としては、著作権保有者の許可を得ずに制作し、配布または販売されることが多い。 この状況を黙認する著作権保有者がいる一方、正当な権利の行使として、厳格な対処をする著作権保有者もいるため、グレーゾーンである。 また、イラストの模写などの場合、「二次著作物としてではなく、複製物として見なすべきである」という考え方もある。
[編集] 著作権者表示の問題
著作権を保有していることを表明するために、
(C)著作権保有者氏名・企業名
などの表記をする場合があるが、 二次創作物に表示する場合、
(C)二次創作物の著作権保有者
では、問題があるとされている。この表記法だと元来の著作権所持者が不明となるからである。
そのため、
(C)原作の著作権保有者 (C)二次創作物の著作権保有者
のような併記が、望ましいと考えられている。
しかし前述のように、イラストの模写などの場合、「二次著作物としてではなく、複製物として見なすべきである」という考え方があるため、こういった表示による権利の主張が、法的に認められない可能性がある。
[編集] 二次創作物のあり方
著作権を侵害していることが明らかである場合も、一方でプロを志す者がその過程の一つとして二次創作物を制作する場合がある。すなわち、二次創作によって著作権を「侵害」されている側も、かつては自分が「侵害」行為によって創作技術を磨いてきたという事実がある。中には、プロとなってからも同人誌等で半ば堂々と著作権「侵害」行為を行っている例もある。 また、プロを志さない作り手や二次創作物を購読する側であっても、二次創作を通じてさらに深く作品に関わるによって、その作品への愛情を深めたりファンのコミュニティを形成したりすることが、DVDなどのソフトウェアや関連製品・イベントの売り上げへ寄与するといった効果をもたらしている。
他の先進国(特に米国)と異なり、このような著作権「侵害」行為の「黙認」によって制作側・消費側ともに厚い地層が形成されていることが、現在の日本における漫画・アニメ隆盛の原動力の一つとなっているとも言える。 そのため、二次創作による著作権「侵害」行為を一概に「法律違反だから」といって禁止するべきではないとする考えが日本では一般的となっている。さらに、出版社やゲームメーカー等の版権者によっては、販売促進の一環として二次創作を積極的に利用していこうという動きもあり、版権者公認の二次創作物アンソロジーが出版されたり、版権者主催または協賛による二次創作物主体の同人誌即売会が開催されている例もある。
しかし、中には二次創作行為に抵抗を持つ著作権者もおり、そういう著作権者が嫌悪表明をしても全く事態が改められないの点は問題である。ごく一部、メーカーが翻案権・複製権・同一性保持権などの理由で裁判を起こして勝訴した例もあるが、個人の作家の場合はほとんどが泣き寝入りというのが現状だ。
ジャンルや製作者によって、二次創作物を容認している(むしろファン活動の一環として推奨している)場合もあり、二次創作物を好まない場合もある。二次創作物を好まない著作権者は、健全な作品を創作しているにも関わらず、アダルト要素の強い所謂エロパロ作品としての二次創作物ばかりを作成されてしまう著作権者に多い。そのような場合には、二次創作活動がある程度一般化している現状だからこそ、二次創作活動者側に良識を求めるだけでなく、自分の作品やキャラクターを守るために自ら行動を起こす勇気が著作権者側にも必要である。また、著作権者側が二次創作物を(少なくとも表向きは)容認しない場合、部外秘を申し合わせて(「××禁」と称する。××には著作権者などが入る)内々で二次創作活動をするケースも見られる。
また、日本国においては著作権侵害と見なされているが、一部の国々では、こういったものを法的に保護している場合もあり、フランスにおけるパロディ条項はその一例である。
一部では二次創作物として同人誌で出版した作品を、そのまま名前だけ変えてオリジナル作品として商業ベースに乗せるといういわゆる「パロ焼き直し」行為や、やはり名前などを変えているが二次創作物として書き下ろしたものをオリジナル作品として商業ベースで発表する「キャラパク」(既存のキャラクターを勝手に使ってしまう模倣行為=キャラクターのパクりの略)行為をするプロ作家の存在が問題視されている。「キャラパク」は模倣行為かインスパイアかの判断がつきにくいため難しい問題となっている。