ロバ
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ロバ(驢馬)は哺乳類奇蹄目ウマ科の動物である。学名 Equus asinus. 別名うさぎうま。 漢語では驢。古代より家畜として使用される。ウマ科の中では一番小型であるが、力は強く、記憶力も良い。
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[編集] 解剖学的特徴
同じウマ科の生物である[馬]と比較して、一般に次のような特徴がある。
- 馬よりも小柄である
- 耳が顔に比べてとても長く、また顔が細い
- 馬の尾はふさふさの毛が根元から生えているが、ロバの尾はむしろ牛などに近い、細長い尾の先から長い毛が生えている
[編集] 生態
家畜としては、比較的少ない餌で維持できる。 ただし気性は気まぐれであり、ロバ自身が気が乗らないと言う事を聞かない。 一説にはこれをもって、知能が高く、感情があるとするむきもある。 寿命は長く、飼育環境によっては30年以上生きることがある。
[編集] 益獣としての使用
[編集] 家畜化
最初に家畜として飼われ始めたのは、約5000年前に野生種であるアフリカノロバを飼育したものとされる。野生種の中で現存するのは、ソマリノロバのみであり、ソマリアとエジプトの国境地帯に見られたが、ソマリア内乱の影響で激減したため、現在はその大部分がイスラエルの野生保護区で飼育されている。
[編集] ユダヤ人との関係
荒涼としたステップ地帯、砂漠地帯、あるいは山岳地帯などを放浪していたユダヤ人は、ロバを知る最も古い民族のひとつであり、そのため彼らの伝承や戒律などにもロバに関わるものが少なからずある。 古代、ユダヤ人たちの間では、ロバに乗ることを禁じた日があった。 イエスがキリスト(ユダヤの王)として、ロバに乗って過ぎ越しの日にエルサレムに入る記述が聖書にある。
[編集] 食用
中国の、特に華北においては、ロバは一般的な食材のひとつとなっている。多くは、輸送などの労務が難しくなった、老いたものが食用にされる。このため、単に炒めるだけの料理では食べづらく、煮込み料理か餃子や肉まんの具や肉団子のようなミンチ肉料理にされることが多い。そのままではある程度の臭みがあるが、下ごしらえをうまくすることで中国で「上有龍肉,下有驢肉」(天には竜の肉があり、地上にはロバの肉がある)と言われるほどの美味に仕上げることができる。
- 臘驢肉(ラーリューロウ làlǘròu)
- 驢肉火燒(リューロウフオシャオ lǘròu huǒshāo)
- 肴驢肉(ヤオリューロウ yáolǘròu)
[編集] 薬用
ロバの皮から毛を取り、煮つめて取る膠(にかわ)は、漢方で「阿膠」(あきょう)といい、主成分はコラーゲンで、血を作り、止血する作用があると考えられている。このため、出血を伴う症状や、貧血、産後の栄養補給、強壮、皮膚の改善などの目的で、服用、配合される。 阿膠は薬用以外に、これを加えた飴なども作られている。
[編集] 文化におけるロバの表象
[編集] 東洋
[編集] 日本
中国には、全世界で飼育されているロバの3分の1に相当する頭数が飼われているにもかかわらず、日本では、時代を問わず、ほとんど飼育されていない。その理由はハッキリとはしていないが、元来の生息地帯が乾燥地であったため、湿潤な日本の気候に適わなかったのではないかとも言われる。
日本にロバが移入された最古の記録は、599年に、百済からラクダ、羊、雉と一緒に贈られたとするものである。この時は、「ウサギウマ」1疋が贈られたとされる。また、平安時代に入ってからも、幾つか日本に入ったとする記録が見られる。時代が下って江戸時代にも、中国やオランダから移入された記録がある。また、別称として「ばち馬」という呼び名も記されている。
20世紀の日本でロバと言えば、「ロバのパン屋」が最も広い地域で知られる存在であった。ただ、昭和10年代に札幌で始まり、戦争をはさんで、昭和20年代末に広まったその移動販売が最盛期を迎えたのは、昭和30年代であった。が、早くも昭和30年代末から40年代初頭にかけての頃には、急速なモータリゼーションの浸透によって、日本の道路は自動車のものとなり、スピードの遅い馬車は、邪魔者となってしまい、早くも姿を消してしまい、自動車による販売にとって代わられ、それに伴って販売の規模も急激に縮小の方向に向かった。なお、最も著名な「パン売りのロバさん」という曲を流しながら販売を行なった、ビタミンパン連鎖店本部が使用していたのは、ロバではなく木曽馬を中心とした小型馬(ポニー)であった。にもかかわらず、「ロバのパン」を看板にして大々的に販売を行なったため、当時を知る人々に対して、ロバに対するイメージへの誤解を与えた面は否めない。
[編集] 西洋
西洋においてはロバは愚鈍の象徴としてしばしば用いられる。キリスト教化された中世以降のヨーロッパでもその傾向は変わらずに残る。現在でも各国語において「ロバ」に相当する言葉は「馬鹿」「愚か者」の換喩として用いられる。 元来、西洋においてはロバは良く使われた家畜であるのにこういったイメージが付いたのは、乏しい餌でも育つ頑丈なロバは貧農が育てるものであり、富農は牛馬、また軍隊とくに騎士が馬に騎乗していたためであろう。 さらに、頑固で気分次第で動かなくなる融通の利かないロバを良く観察している(すなわちそれだけ身近であった)とも言えよう。
[編集] 古代
古代ギリシア神話において最もよく知られるロバに関する逸話はフリュギアのミダス王に関するものである。この逸話は現代では「王様の耳はロバの耳」として親しまれている。
[編集] 中世
愚か者としてのロバの姿は中世文学にも見出される。12世紀の風刺集『愚者の鏡』にでてくる「ブルネルスの物語」はその好例である。この逸話は『愚者の鏡』のなかで最も有名なもののひとつであり、国によってはこの挿話をもって本の名とする地域もあった。たとえばジェフリー・チョーサーの『カンタベリー物語』ではこの風刺集は『愚者ブルネル卿』(ブルネルはブルネルスの英語形)と呼ばれている。
[編集] 近代
民主党_(アメリカ)はロバを党のシンボルとしている。これはもともと、共和党 (アメリカ)側によって「jackass」(雄ロバまたは「馬鹿」の意)と揶揄された民主党の大統領候補アンドリュー・ジャクソン(後の第7代アメリカ大統領)が揶揄を逆用したことに起源を有する。 2004年11月の大統領選にむけた、同8月の民主党党大会ではロバの「スウィフティ君」がケリー候補の応援にかけつけたが、同時多発テロ後からの厳戒態勢の中、スタッフオンリーの壇上にあがることがかなわなかったという珍事があった。
[編集] 作品
ロバが主題となっている作品には下記がある。
[編集] 文学
- ピノキオ ロバを中心に題材としたものではないが、ピノキオが怠け者国でロバに変身させられる。
[編集] 音楽
[編集] アニメ
- ペリーヌ物語-カルピス名作劇場。主人公ペリーヌと母の旅にロバ「パリカール」が大きく貢献。
- 母をたずねて三千里。主人公マルコが母を訪ねたアルゼンチンで牛車隊から別れたときにロバ「ばあさま」を足としてもらうが途中でロバ「ばあさま」は年のため死亡。