ラジコン
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ラジコンとは、操縦者(又はコンピュータ)からの指示を、電波によって伝達し、その指示に従い動作する(ラジオ・コントロール)装置の略称である。Radio Controlの頭文字を採ってRCとも呼ばれる。
なお、「ラジコン」という名称は、玩具メーカー「増田屋コーポレーション」が商標権を保有しており、特にNHKでは商標を避けるために「無線操縦」(むせんそうじゅう)や「ラジオ・コントロール」と呼ぶことがある。
遠隔操作されるもの一般を、リモート・コントロール(リモコン)と呼ぶが、有線のケーブルを用いて伝達するものに対して、かつて無線で伝達する通信手段としては電波がほぼ唯一の手段であった事により、ラジコンという言葉が用いられた。
後に、電波に依らない無線方式(赤外線やレーザーなどの光を使うもの、超音波などの音を使うもの)も出現しているが、その特性からごく近い距離に用いられる事が多く、遠隔操縦の方式としては、ラジオコントロールが主流である。
一般的には、主に趣味の模型分野に利用され、航空機・自動車・戦車・船舶などの模型(動力は、グローエンジン、ロータリーエンジン、電動モーター)を、操縦者が搭乗している如くに、離れた位置からコントロールするために用いられるものがよく知られているが、模型操縦以外にも、軍事用や地学調査用などの分野や、農薬散布用ヘリコプター、クレーンなどの産業用機械などにも用いられている。
旧オウム真理教がサリンなどの散布を企てて、ラジコンヘリコプターを購入したが墜落破損して未遂に終わったというエピソードも知られる。
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[編集] 歴史
元々、軍用の標的機、誘導弾として開発が進められてきた経緯がある。古くはニコラ・テスラが無線操縦の船を試作したり、我が国でも昭和5年に日比谷公園で無線操縦戦車の実験が公開されたり、標的艦「攝津」が運用された記録がある。近年、無人機が活躍しているニュースを聞くが、何も今になって始まった事ではなく、第2次大戦中にドイツ軍によって無線誘導弾、フリッツXや本物の戦車を無線で誘導するフンクレンクパンツァー無線誘導戦車が実戦に投入された実例がある。当時、既に無線誘導弾は母機から遠隔誘導するフリッツXが実用化されていてイタリアの戦艦「ローマ」を撃沈する等の戦果を上げた。戦後、それらの技術が波及し、現在に至る。ホビー用のラジコンとしては「ラジコン」の商標を持つ増田屋斎藤貿易が昭和30年にラジコンバスを発売した。当時、高価だったトランジスタや真空管を使用せず、火花送信機とコヒーラ検波器を使用していた。当時の所得水準から判断すると高価で主に輸出され、外貨獲得に貢献した。当時、国内での電波法の認可は順調に取れたが、米国での認可には時間がかかり、翌年の夏に発売された。ソニーの創業者達も分解してその構造に驚いたと言う。また、増田屋斎藤貿易は他に、専用の笛から出る音で操縦するソニコンも製造した。ラジコン、ソニコンはそれぞれ当時、同社の主力製品であったブリキ製のバスや自動車、ロボット、戦車等に搭載された。国内では火花送信機とコヒーラ検波器を使用した無線操縦装置を趣味の世界に持ち込んだのは増田屋斎藤貿易という認識が一般的にはあるが、ラジコンバスの販売をさかのぼる事、18年、昭和12年、朝日屋から出版されていた「科学と模型」誌に同種の科学模型の製作記事が掲載されていた事は特筆に価する。正に、科学雑誌を標榜する同誌の面目躍如と言った所だろう。同誌の執筆陣の意気込みが現代に伝わってくる。
[編集] 種類
- シングル式 - ON-OFFの信号でモータ、エスケープメントを作動させる
- マルチ式 - リードセレクタでトーン信号を分離することにより複数のチャンネルを作動することができる。リードセレクタを使用せずにダイオードマトリックス等論理回路でマルチチャンネルを実現した形式もある。
- ギャロッピングゴースト - 左右に均等に舵を当てるが、曲がる時はどちらかに偏る事によって、比例制御に近づけた方式。今でもマイクロRCプレーンで使われる。
- アナログプロポーショナル式 - 低周波信号を搬送波に載せて比例制御を実現した。停止位置付近のトルクが弱く、調整が難しく普及しなかった。
- デジタルプロポーショナル式 - 通常プロポと呼ばれる方式で現在主流。スティックの角度に応じてサーボを比例制御することが出来る為、他の方式に比べ優れている。
[編集] 電波の変調形式による分類
- AM式
- FM式
- PCM - 従来のプロポーショナル式はパルスの長短でサーボの角度情報を送っていたが、スティックの角度情報を一度アナログ/ディジタル変換器で数値に変換してから送信し、受信機でまたパルスに復号する方式、近年はサーボもデジタル化されつつあり、精度が高くなりつつある。しかし、応答が従来式に比べてやや鈍いという意見もある。
- DSMスペクトラム式
[編集] 構成
- 送信機
- 受信機
- サーボ
[編集] 使用する電波
電波の周波数をバンドといい、ラジコンに割り当てられたバンドは、27MHz,40MHz,72MHz,73MHzである。(制御可能な可動部所の数を「チャンネル」と言うので、区別の為に単一周波数でも「バンド」と称していると思われる。キャリアと言うのが正しい。)
- 27MHz - 12バンド(地上・水上用)
- 40MHz - 8バンド(地上・水上用)/5バンド(空中用)
- 72MHz - 10バンド(空中用)
- 73MHz - 産業用:2バンド(地上・水上用)/4バンド(空中用)
[編集] 主要供給メーカー
[編集] 国内
- 青柳金属工業-商標は「AYK」だった
- 塩谷製作所
- 双葉電子工業
- ヒロボー
- 増田屋コーポレーション
- 近藤科学
- 京商
- 無限精機
- 日本遠隔制御(JR)
- 小川精機
- 斉藤製作所
- 三和電子機器
- タミヤ
- (株)ヨコモ - 旧・横堀模型
- 山田産業 YS
- 日之出電工
- 三共
- アイエム
- ユニオンモデル
- ムサシノ
- 丸鷹
- タイガー
- TECH 技研モデル
- ALEX アレックスレーシングデザイン
- ミワホビー TEAM ATLAS
- CROSS (ファイヤーフォースシリーズ)
- 川田
- ABCホビー
- アクティブホビー
- ロジテック
- くらふとるうむ
- フジイインパック
- シー・シー・ピー(旧・朝日通商、ACOMS)
- 大陽工業
- タカラトミー (エアロアールシー・エアロソアラ)
[編集] 海外
- Team Losi …チーム・ロッシ(米)
- Team Associated …チーム・アソシエイテッド(米)
- HPI …エイチピーアイ(米)
- Graupner ・・・グラウプナー(独)
- Robbe ・・・ロッベ(オーストリア)
[編集] 外部リンク
- 増田屋コーポレーション(ラジコンの商標権保有者)