プリンター
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プリンター(printer)は、印刷用の機器で、とくにコンピュータからの情報の出力に用いられる。
用途に応じて多種多様な方式があるが、一般的に家庭および小規模オフィス向けが「インクジェット・プリンター」、企業向けが「レーザー・プリンター」という住み分けが定着している。
低価格化が順調に進むインクジェット・プリンターでは、2005年頃からコピーやファックス機能が搭載された複合機タイプが主流となりつつあるが、コスト意識の強い企業向けレーザー・プリンターでは、高機能複合機タイプからモノクロ単機能タイプまでのラインナップが今も共存している。
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[編集] 印字方式による区分
[編集] 熱転写方式
テープに塗布されたインクを熱によって対象物に転写する方式で、主に熱溶融形と昇華型とに大別される。
[編集] 熱溶融形
テープに塗布されたインクを熱で融かし、紙などの対象物に転写する。 主にワープロ専用機やファクシミリ(FAX)で用いられ、一般家庭にパーソナルコンピュータが入り始めた時代には安価なプリンターとして使われた。インクリボン無しで感熱紙に印刷できるものもある。 顔料インクを用いるため、耐水性及び耐侯性に優れるが、色の数だけ同じ手順を繰り返す必要があるため、色数が増す毎に印刷に要する時間が長くなる、毎回用紙を吐いては戻しを繰り返すことになるので色ズレが発生しやすいという短所がある。デカールの印刷によく使われる。
インクリボンを使うタイプでは、インクリボンに印刷した内容が残るので、情報漏洩が起こりやすい問題がある。
[編集] 昇華型
インクに熱を加えて昇華させる方式で、熱量を細かく制御することでインク量の調節ができるため、写真に近い画質を得ることが可能である。DTP用や、フォトプリンタ、ビデオプリンタがある。原理上染料インクが使われるために熱溶融形よりも耐水性、耐光性において劣るが、近年の昇華型インクにはラミネーションを施すことにより耐水性・耐光性を高めたものが主流となっている。
[編集] 感熱式
加熱により変色する特殊な用紙(感熱紙)に印刷するための装置で、かつてはFAXの出力用に広く使われていた。現在でも家庭用FAXやレシートに多いが、耐薬品性に乏しく、また、時間の経過により自然に変色や褪色を起こすという感熱紙の性質のために、長期保存に向かない。
[編集] インクジェット方式
インクジェット方式とは、主に液状、時に固体のインクを微粒子化し、加圧や加熱などにより微細孔から射出させる方式で、近年、噴射孔の極微細化が著しく、このために高精細な印刷結果が得られるようになっている。また、他の方式と比して多色化が容易で、多いものでは12種類のインクを使用しており、微細噴射孔とも相俟って銀塩写真並みの高画質が実現されている。現在の一般家庭向けカラープリンターの主流となっている。
小型のものは、家庭用や小規模なオフィス用として利用される。家庭あるいは小規模なオフィス用の廉価版複合機(複写機+プリンター+(FAX)+イメージスキャナ)も、この方式が多い。 また、大型のものでは、1,000ミリメートル幅を超える大判用紙への印刷のできるものまであり、XYプロッタからの置き換えや、巨大なグラフィックアート作成への応用などが進んでいる。
ほとんどの機種で使用するインクは水性インクであり、一般論としては耐水性に乏しい。技術的には染料系、顔料系どちらのインクも可能であるが、全般的には染料系インクが多い。一般的に染料系は演色性に優れ、顔料系は耐光性に優れると言われるが、近年ではその差は僅かなものとされている。 業務用としては、耐候性に優れた溶剤系のインクを使用する機種も存在する。
[編集] ドットインパクト方式
縦横に並べた、ドットに対応する細いピンを、インクを吸着させた帯(インクリボン)に叩き付けて(インパクト)印刷する仕組みで、複写用紙への重ね印刷ができるほぼ唯一の方式である。打撃に用いるワイヤピンは磁気アクチュエータにより高速で駆動される。このプリントヘッドには、釈放型と吸引型がある。吸引型プリントヘッドは、印字する瞬間にワイヤピンが接合されたアクチュエータを電磁石で吸引してワイヤピンを押し出す方式である。印字後はアクチュエータの弾性により元の位置に戻る。釈放型は、印字する瞬間に電磁石に電流を流して、アクチュエータを保持していた磁力を打ち消し、アクチュエータのバネ性でワイヤピンを押し出すものである。
初期のものでは1文字あたり8ピン(48dpi)、最大では48ピン(360dpi)程度のものまであったが、現在は24ピン(180dpi)が殆どである。16ピンのものが登場して以降、漢字の印刷が現実的となった。かつては事務用から家庭用まで広く使われたが、ドットを構成するピンを叩きつける構造のため、作動音が大きく(騒音防止のために、プリンタや用紙一式毎収納できる防音カバーも市販されていた)、高精細化にも限界があるため、殆どの用途で他の方式(主に家庭用は前項のインクジェット方式、業務用は次項の乾式電子写真方式)に置き換えられ、現在では複写用紙(ノーカーボン紙等)への重ね印刷に用途がほぼ限定されている。印字するインクリボンの色を切り替える機構を持つことで多色印字の可能な機種もある。
[編集] ノンインパクトプリンター(NIP)
ドットインパクト方式ではないプリンターを総称してノンインパクトプリンター、略してNIPと呼ぶ。しかしながら、一般にNIPと呼ぶ場合、連続帳票を用い、乾式電子写真方式で印字する方式のプリンターを指すことが多い。
[編集] 乾式電子写真方式
帯電させた感光体にレーザー光などを照射し顔料粉末(トナー)を付着させ、用紙に転写した上で熱や圧力をかけて固定する方式で、原理としては乾式の複写機とほぼ同じである。一般には「レーザープリンター」として知られるが、感光体への書き込み光源としては、レーザー光源だけでなく、発光ダイオード(LED)を用いる事も可能であり、この場合には「LEDプリンター」と呼ばれる。 感光体は通常、ドラム状で、この表面を光で走査しつつ回転させ印刷を行う。
この仕組みによるフルカラー印刷には、「タンデム方式」と「四サイクル方式」とがある。タンデム方式はドラムを連装し、一回の手順の中で各色(絵の具の三原色であるシアン(藍)・マゼンタ(紅)・イエロー+黒)を順次転写するもので、単色印刷とほぼ同じ時間で印刷物を完成させることができる。一方の四サイクル方式は、一つのドラム上に各色の現像機を配置し、各単色の転写を繰り返すため、単色印刷に対し概ね四倍の時間を要する。
一般に、この方式のプリンターは、他方式の多くと比べ、構造が複雑で、また、個々の部品に対してより高い品質が要求されるため、製造費の高い装置である。しかしながら、ここ数年は急速に価格の低廉化が進んでいる。
消耗品である感光ドラムの耐久性を、トナーの補充頻度に見合う程度にまで下げ、ドラムとトナーとを一体の部品として交換する方式が主流であるが、その一方で、ドラムの耐久性を高め、トナー容器のみの交換が可能な設計とすることで運用経費の低減を図る動きも見られる。
用途としては、主に業務用で利用される。業務用の複合機(複写機+プリンター+FAX+イメージスキャナ)は、この方式が多い。
[編集] 活字プリンター
タイプライターの様に、文字ごとの字母の活字を紙に打ち付ける方式である。一般的なタイプライター同様の腕の先端に活字を植えたものや、球面に活字を植えた「IBMセレクトリックタイプライタ方式」と呼ばれるもの、円盤に放射状に活字の植えられた腕を配置したデイジーホイールプリンターなどがある。
[編集] プロッター
プロッター(plotter)は、設計図面のような点や線を描くことを目的とした装置である。XとYの座標を指定して作図するので、「X-Yプロッター」とも言う。
描画にボールペンやインクペン、シャープペンシルなどを記録紙に相対的に移動して作図するものを「ペンプロッター」といい、ペンを使わない「ペンレスプロッター」には、「インクジェットプロッター」、「感熱式プロッター」、「静電プロッター」、「レーザープロッター」、「LEDプロッター」がある。また、ペンの代わりにカッターを用い、カッティングシート等を切り抜く事を目的とした「カッティングプロッター」がある。
ペンプロッターには、記録紙を平らな台に固定し、ペンを縦横に移動する「フラットベッド型」の他に、両端に連続穴の開いた記録紙をスプロケットの付いたドラムで移動する「ドラム型」、記録紙を上下からローラーに挟み、摩擦で移動する「ペーパームービング型」といった形式がある。いずれもペンを上下させながら記録紙に対して物理的に移動して作図するので、作図時間が掛かる欠点があった。徐々にプリンター(大型インクジェットプロッタ)に置き換えられ、現在では特殊な用途以外は使われなくなっている。
ペンレスプロッターは、ペンプロッターの置き換え用として開発されてきたが、機構的には通常のプリンターと全く同じであり、ペンプロッターと共通の制御コマンドを使用できることによって通常のプリンターとの差別化がされていた。しかしながらWindowsの普及やプリンタードライバーの進歩によって、制御コマンドを意識する必要が無くなり、ペンレスプロッターという分類自体が無くなりつつある。
カッティングプロッターは、看板の作成や、衣料用型紙の作成など、業務用分野で今も盛んに使用されている。
[編集] 印字動作による区分
[編集] シリアルプリンター
1文字の印字指令が来るたびに現在の印字ヘッド位置に印刷する方式。ASR-33など、活字方式プリンターをキーボードと組み合わせた端末では普通の方式。後に高速印字のため、行単位で印刷する方式、さらにその際スペース・タブなどの空白文字に相当する部分を高速で移動する技術が導入された。
ドットインパクトプリンターやインクジェットプリンターも、メカニズム的にはシリアルプリンター方式であるが、改行(または復帰改行)指令を受信するまで印字バッファーに蓄積し、行単位で印刷を行うことにより印字を高速化する方式が普通である。
[編集] ラインプリンター
大型汎用コンピュータの分野では、1行文字数分の印字ヘッドを並列に備え、一回の印字動作で1行分を同時に印字できるプリンターのこと。毎分数100行の印字が可能だった。印字ヘッドとしては、字母を幅の狭い環状スチールリボンや、用紙幅分のドラムに植え付け、これを高速で循環させて適切な字母が今の行位置を通過するさいにハンマーで叩くことで印字した。そのため、字母の数に制限があり、事実上ASCII文字とかな文字程度しか印字できなかった。
[編集] 日本語ラインプリンター
左右に高速移動するピンを数十個配置し、インパクトにより、同時に多くの文字を印刷する方式。ピン全体(ハンマバンクと称される)が左右に移動する事により文字が形成されていく。 大きさは上記ラインプリンターの環状スチールリボン方式と同じ程度。複写を要する物で、大量に印刷を行う際などに使用される。騒音が比較的大きいため、装置全体が箱で囲まれたような構造をすることが多い。ラインプリンタと比較し、漢字が印字できることから漢字ラインプリンタ(KLP)とも呼ばれる。
[編集] ページプリンター
1ページ単位をまとめて印刷するプリンター。印字方式としては、レーザー方式などの乾式コピー技術を用いたものは皆ページプリンター方式になる。高速で静かな動作音であるが、装置やメンテナンス費用はやや高価。カラーページプリンターもある。
印字速度は、プリンター内部でのイメージ展開の割合が大きい。文字中心であれば短時間で出力されるが、イメージ画像を出力する場合は多くの時間がかかる。値段の高いものではイメージ展開を行うマイコンチップを高性能化して、高速で出力できるようになっている。
[編集] フィルムプリンター
連続したネガフィルム又はポジフィルムに直接、レーザー光を当てて印字する物。レーザー光で感光した後は現像作業が必要になる。主に新聞社で使用されている。 また、輪転機用の判の作成にも使用される。
[編集] 主なメーカー
- コニカミノルタ(Konica Minolta)
- セイコーエプソン(EPSON)
- キヤノン(CANON)
- 京セラ ミタ
- ヒューレット・パッカード(HP)
- リコー(RICOH)
- 富士ゼロックス(Fuji Xerox)
- 沖データ(OKI)
- 富士フイルム
- ブラザー工業(brother)
- レックスマーク(Lexmark)
- 理想科学工業(RISO)
- 日立製作所
- 日本電気
- シーメンス
- 富士通
- アルプス電気
- 三菱電機
- 神鋼電機
- 武藤工業株式会社(MUTOH)
- ローランド ディー. ジー.(RolandDG)
- セイコーアイ・インフォテック(SIIT)
- ミマキエンジニアリング(Mimaki)
- ジェテック
[編集] 制御方式
- ESC/P - 1985年頃にセイコーエプソンの開発した制御方式。仕様が公開されたため、他社のプリンタにも採用され、またAXやDOS/Vではプリンタの標準方式となっている。レーザー(ページ)プリンター用として ESC/Page がある。
- LIPS - キヤノンの開発した、レーザプリンタの制御方式。
- PostScript - アドビシステムズの開発したレーザープリンタの制御方式。マッキントッシュやLinuxの標準方式であるが、アドビシステムズとのライセンス料の関係からか、この方式のプリンタは非常に高価(数十万~100万円以上)である。そのため、リコーなどによる互換方式も広く使われている。
- Windows Printing System (WPS) - マイクロソフトが開発した制御方式で、印刷イメージ展開などの主な処理をWindowsの機能を用いてパソコン側で行うことで、プリンタの製造コストを下げようとしたもの。1996年~1997年頃に発売された低価格のレーザプリンタに多く採用されたが、マイクロソフトとのライセンスの関係などで短命に終わり、またWindows 2000やXPではドライバの提供などのサポートが中止された。
- HP-GL (Hewlett Packard Graphics Language) - ヒューレット・パッカード社が開発したプロッタの制御言語(方式)。
[編集] 接続方式
ユニバーサル・シリアル・バス(USB)、セントロニクス仕様(IEEE1284パラレルポート)、RS-232C(RS-422)、GP-IB、IEEE1394などがある。従来はパラレルポートや、マッキントッシュではRS-422が主に使われていたが、現在はUSB接続が多い。
ただし業務用(オフィス環境)では、内蔵プリントサーバ機能によるネットワーク接続(TCP/IPなど)が主流となっており、共有プリンタ以外でのローカル接続(PCとプリンタを1:1で直結させる方法)はあまり見られない。また単純なネットワーク接続(TCP/IP接続)では無く、共有プリンタ形式での接続も多く用いられる。これはプリンタを接続したサーバPCに各種OSのドライバを一括して保持させることが可能で、クライアントとなる他のPCはサーバPCが保持しているドライバをインストールでき、ドライバ管理が非情に容易になる利点がある為である(個々のPCにドライバCDを渡す必要が無い)。