ブッカー賞
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
文学 |
ポータル |
各国の文学 記事総覧 |
出版社・文芸雑誌 文学賞 |
作家 |
詩人・小説家 その他作家 |
ブッカー賞(ぶっかーしょう)はイギリスの文学賞。世界的に権威のある文学賞の一つ。
その年に出版された最も優れた長編小説に与えられる。選考対象は、イギリス連邦およびアイルランド国籍の著者によって、英語で書かれた長編小説。小説に与える賞であるため、同一作家が複数回受賞することも許される。賞金は50000ポンド(2002年までは21000ポンド)。
1968年、フランスのゴンクール賞のような賞をイギリスにもという提案により、イギリスの小売業者ブッカー・マコンネル社の後援のもと創設された。2002年からは運営がブッカー賞財団に移転、財団のタイトルスポンサーは投資会社のマン・グループである。それに伴い、名称もブッカー・マコンネル賞(The Booker-McConnell Prize for Fiction)から、マン・ブッカー賞(The Man Booker Prize for Fiction)に変更した。ブッカー賞(Booker Prize、the Booker)という呼称は通称。
1992年にはロシア・ブッカー賞、2005年には国際ブッカー賞が設立されている。1989年には日本生まれのカズオ・イシグロが「日の名残り」で受賞し、第1回国際ブッカー賞で大江健三郎が候補となった。
目次 |
[編集] 選考
ブッカー賞が高い評価を得ている原因の一つに、その選考の仕方がある。
賞選考は、諮問委員会が選考委員を決定するところから始まるが、選考委員は毎年変わり、2度選ばれることは滅多にない。選考委員は文芸評論家、学者、編集者、小説家、高名な人物などから、性別などのバランスに注意して選出される。
次に、選考委員による審査の前段階として、審査の対象となる作品が選出される。
その年に出版された小説のうち、まずイギリスの出版社が最高2作まで申請でき、過去のブッカー賞受賞者の全著作、過去10年間のブッカー賞候補者の全著作は自動的に対象とされる。出版社はさらに、選考委員の考慮に入れる作品として最高5作まで申請することが出来る。また、選考委員も別途、その年に出版された小説のうち、最低8作、最高12作を推薦する。この時点では何が選ばれたかは極秘とされる。
選考委員は、審査の対象として選出された作品すべてを読んだ上で、審査が行う。審査は3段階で、まず候補作が(Longlist)、次いで6作の最終候補作(Shortlist)が、そして受賞作が発表される。最終候補者には、2500ポンドと副賞が授与される。
- 2003年時点で、
- 134人の小説家による201作品が最終候補作になっている。
- 1度最終候補になった小説家は97人、そのうち受賞者は16人。
- 2度最終候補になった小説家は19人、そのうち受賞者は7人、2回受賞者は1人。(ジョン・クッツェー)
- 3度最終候補になった小説家は10人、そのうち受賞者は5人、2回受賞者は1人。(ピーター・ケアリー)
- 4度最終候補になった小説家は5人、 ウイリアム・トレヴァーを除いて全員が1回受賞している。(イアン・マキューアン、サルマン・ラシュディ、トマス・キニーリー、ペネロピ・フィッツジェラルド)
- 5度最終候補になった小説家は2人、マーガレット・アトウッド(初最終候補は1986年、受賞は2000年)とベリル・ベインブリッジ(1970年代に2度、1990年代に3度、最終候補に選ばれたが受賞はない)である。
- 6度最終候補になった小説家は1人、アイリス・マードック(1978年に4度目の最終候補で受賞、その後1980年代に2度最終候補に)である。
[編集] 受賞作一覧
[編集] 1960年代
- 1969年
- 受賞作:「Something to Answer for」 P・H・ニュービィ
- 最終候補作:
- 「Figures in a Landscape」 バリー・イングランド
- 「Impossible Object」 ニコラス・モスレー
- 「愛の軌跡」(The Nice and the Good) アイリス・マードック
- 「The Public Image」 ミュリエル・スパーク
- 「From Scenes like These」 ゴードン・ウイリアムズ
[編集] 1970年代
- 1970年
- 受賞作:『選ばれし者』 バーニス・ルーベンス(The Elected Member、鈴木和子訳、ヤマダメディカルシェアリング創流社、1996年)
- 最終候補作:
- 「John Brown's Body」 A・L・バーカー
- 「Eva Trout」 エリザベス・ボウエン
- 「ブルーノーの夢」(Bruno's Dream) アイリス・マードック
- 「Mrs Eckdorf in O'Neill's Hotel」 ウイリアム・トレヴァー
- 「The Conjunction」 T・W・ウィーラー
- 1971年
- 受賞作:「In a Free State」 V・S・ナイポール
- 最終候補作:
- 「The Big Chapel」 トマス・キルロイ
- 「Briefing for a Descent into Hell」 ドリス・レッシング
- 「セント・アーベインの騎士」(St Urbain's Horseman) モルデカイ・リッチラー
- 「Goshawk Squadron」 デレク・ロビンソン
- 「Mrs Palfrey at the Claremont」 エリザベス・テイラー(注:映画女優とは別人物)
- 1972年
- 受賞作:『G.』 ジョン・バージャー(G.、栗原行雄訳、新潮社、1975年)
- 最終候補作:
- 「君を守って」(Bird of Night) スーザン・ヒル
- 「The Chant of Jimmie Blacksmith」 トマス・キニーリー
- 「Pasmore」 デイヴィッド・ストーリー
- 1973年
- 受賞作:『セポイの反乱』 ジェイムズ・G・ファレル(The Siege of Krishnapur、岩元巌訳、新潮社、1977年)
- 最終候補作:
- 「The Dressmaker」 ベリル・ベインブリッジ
- 「The Green Equinox」 エリザベス・メイヴァー
- 「ブラック・プリンス」(The Black Prince) アイリス・マードック
- 1974年
- 受賞作:「The Conservationist」 ナディン・ゴーディマー
- 受賞作:「Holiday」 スタンレー・ミドルトン
- 最終候補作:
- 「Ending Up」 キングズリー・エイミス
- 「The Bottle Factory Outing」 ベリル・ベインブリッジ
- 「In Their Wisdom」 C・P・スノー
- 1975年
- 受賞作:「熱砂の日」(Heat and Dust) ルース・プラワー・ジャブヴァーラ
- 最終候補作:
- 「Gossip from the Forest」 トマス・キニーリー
- 1976年
- 受賞作:『サヴィルの青春』 デイヴィッド・ストーリー(Saville、橋口稔訳、集英社、1983年)
- 最終候補作:
- 「An Instant in the Wind」 アンドレ・ブリンク
- 「Rising」 R・C・ハッチンソン
- 「The Doctor's Wife」 ブライアン・ムーア
- 「King Fisher Lives」 ジュリアン・ラズボーン
- 「The Children of Dynmouth」 ウイリアム・トレヴァー
- 1977年
- 受賞作:「Staying On」 ポール・スコット
- 最終候補作:
- 「Peter Smart's Confessions」 ポール・ベイリー
- 「Great Granny Webster」 キャロライン・ブラックウッド
- 「Shadows on our Skin」 ジェニファー・ジョンストン
- 「The Road to Lichfield」 ペネロピ・ライヴリー
- 「秋の四重奏」(Quartet in Autumn) バーバラ・ピム
- 1978年
- 受賞作:『海よ、海』(上)(下) アイリス・マードック(The Sea, the Sea、蛭川久康訳、集英社、1982年)
- 最終候補作:
- 「ジェイク先生の性的冒険」(Jake's Thing) キングズリー・エイミス
- 「Rumours of Rain」 アンドレ・ブリンク
- 「The Bookshop」 ペネロピ・フィッツジェラルド
- 「God on the Rocks」 ジェイン・ガーダム
- 「ミス・ホーキンズの五年日記」(A Five-Year Sentence) バーニス・ルーベンス
- 1979年
- 受賞作:『テムズ河の人々』 ペネロピ・フィッツジェラルド(Offshore、青木由紀子訳、晶文社、1981年)
- 最終候補作:
- 「Confederates」 トマス・キニーリー
- 「暗い河」(A Bend in the River) V・S・ナイポール
- 「Joseph」 ジュリアン・ラズボーン
- 「Praxis」 フェイ・ウェルドン
[編集] 1980年代
- 1980年
- 受賞作:『通過儀礼』 ウィリアム・ゴールディング(Rites of Passage、伊藤豊治訳、開文社出版、2001年)
- 最終候補作:
- 「Earthly Powers」 アントニイ・バージェス
- 「Clear Light of Day」 アニター・デサイ
- 「The Beggar Maid」 アリス・マンロー
- 「No Country for Young」 ジュリアン・オフェイラン
- 「パスカリの島」(Pascali's Island) バリー・アンズワース
- 「ひと月の夏」(A Month in the Country) J・L・カー
- 1981年
- 受賞作:『真夜中の子供たち』(上)(下) サルマン・ラシュディ(Midnight's Children、寺門泰彦訳、早川書房、1989年)
- 最終候補作:
- 「Good Behaviour」 モリー・キーン
- 「The Sirian Experiments」 ドリス・レッシング
- 「異邦人たちの慰め」(The Comfort of Strangers) イアン・マキューアン
- 「Rhine Journey」 アン・シュリー
- 「Loitering with Intent」 ミュリエル・スパーク
- 「ホワイト・ホテル」(The White Hotel) D・M・トマス
- 1982年
- 受賞作:『シンドラーズ・リスト 1200人のユダヤ人を救ったドイツ人』 トマス・キニーリー(Schindler's Ark、幾野宏訳、新潮社、1989年)
- 最終候補作:
- 「Silence Among the Weapons」 ジョン・アーデン
- 「アイスクリーム戦争」(An Ice-Cream War) ウィリアム・ボイド
- 「Constance or Solitary」 ロレンス・ダレル
- 「The 27th Kingdom」 アリス・トマス・エリス
- 「サワースィート」(Sour Sweet) ティモシー・モー
- 1984年
- 受賞作:『秋のホテル』 アニータ・ブルックナー(Hotel du Lac、小野寺健訳、晶文社、1988年、講談社、1996年)
- 最終候補作:
- 「太陽の帝国」(Empire of the Sun) J・G・バラード
- 「フロベールの鸚鵡」(Flaubert's Parrot) ジュリアン・バーンズ
- 「デリーの詩人」(In Custody) アニター・デサイ
- 「ある英国人作家の偽りと沈黙」(According to Mark) ペネロピ・ライヴリー
- 「小さな世界」(Small World) デイヴィッド・ロッジ
- 1985年
- 受賞作:「The Bone People」 ケリ・ヒューム
- 最終候補作:
- 「イリワッカー」(Illywhacker) ピーター・ケアリー
- 「The Battle of Pollocks Crossing」 J・L・カー
- 「The Good Terrorist」 ドリス・レッシング
- 「Last Letters from Hav」 ジャン・モリス
- 「The Good Apprentice」 アイリス・マードック
- 1986年
- 受賞作:「The Old Davils」 キングズリー・エイミス
- 最終候補作:
- 「侍女の物語」(The Handmaid's Tale) マーガレット・アトウッド
- 「Gabriel's Lament」 ポール・ベイリー
- 「What's Bred in the Bone」 ロバートソン・デイヴィス
- 「浮世の画家」(An Artist of the Floating World) カズオ・イシグロ
- 「An Artist of the Floating World」 ティモシー・モー
[編集] 1990年代
- 1992年
- 受賞作:『イギリス人の患者』 マイケル・オンダーチェ(The English Patient、土屋政雄訳、新潮社、1996年)
- 受賞作:「Sacred Hunger」 バリー・アンズワース
- 最終候補作:
- 「Serenity House」 クリストファー・ホープ
- 「ブッチャー・ボーイ」(The Butcher Boy) パトリック・マッケーブ
- 「黒い犬」(Black Dogs) イアン・マキューアン
- 「Daughters of the House」 ミシェル・ロバーツ
- 1993年
- 受賞作:『パディ・クラーク ハハハ』 ロディ・ドイル(Paddy Clarke Ha Ha Ha、実川元子訳、キネマ旬報社、1994年)
- 最終候補作:
- 「Under the Frog」 ティボール・フィッシャー
- 「Scar Tissue」 マイケル・イグナティエフ
- 「Remembering Babylon」 デビッド・マルーフ
- 「Crossing the River」 キャリル・フィリップス
- 「ストーン・ダイアリー」(The Stone Diaries) キャロル・シールズ
- 1994年
- 受賞作:「How Late It Was, How Late」 ジェイムズ・ケルマン
- 最終候補作:
- 「Reef」 ロメシ・グネセケラ
- 「Paradise」 アブドゥルラザク・グルノー
- 「The Folding Star」 アラン・ホリングハースト
- 「ソーフィンの夢物語 時を紡ぐ少年」(Beside the Ocean of Time) ジョージ・マッカイ・ブラウン
- 「Knowledge of Angels」 ジル・ペイトン・ウォルシュ
- 1995年
- 受賞作:「The Ghost Road」 パット・バーカー
- 最終候補作:
- 「In Every Face I Meet」 ジャスティン・カートライト
- 「The Moor's Last Sigh」 サルマン・ラシュディ
- 「仮面の真実」(Morality Play) バリー・アンズワース
- 「The Riders」 ティム・ウィントン
- 1996年
- 受賞作:『ラストオーダー』 グレアム・スウィフト(Last Orders、真野泰訳、中央公論社、1997年)
- 最終候補作:
- 「Alias Grace」 マーガレット・アトウッド
- 「Every Man for Himself」 ベリル・ベインブリッジ
- 「闇の中で」(Reading in the Dark) シェイマス・ディーン
- 「燃える果樹園」(The Orchard on Fire) シーナ・マッケイ
- 「A Fine Balance」 ロヒントン・ミストリー
- 1997年
- 受賞作:『小さきものたちの神』 アルンダティ・ロイ (The God of Small Things、工藤惺文訳、DHC)
- 最終候補作:
- 「四十日」(Quarantine) ジム・クレイス
- 「穴掘り公爵」(The Underground Man) ミック・ジャクソン
- 「Grace Notes」 バーナード・マック・ラヴァティ
- 「Europa」 ティム・パークス
- 「The Essence of the Thing」 マデリーン・セント・ジョン
- 1998年
- 受賞作:『アムステルダム』 イアン・マキューアン(Amsterdam、小山太一訳、新潮社、1999年)
- 最終候補作:
- 「Master Georgie」 ベリル・ベインブリッジ
- 「England, England」 ジュリアン・バーンズ
- 「The Industry of Souls」 マーティン・ブース
- 「プルートで朝食を」(Breakfast on Pluto) パトリック・マッケーブ
- 「フェンス」(The Restraint of Beasts) マグナス・ミルズ
- 1999年
- 受賞作:『恥辱』 ジョン・クッツェー(Disgrace、鴻巣友季子訳、早川書房、2000年)
- 最終候補作:
- 「Fasting, Feasting」 アニター・デサイ
- 「墜落のある風景」(Headlong) マイケル・フレイン
- 「Our Fathers」 アンドリュー・オヘイガン
- 「The Map of Love」 サエイフ
- 「The Blackwater Lightship」 コルム・トビーン
[編集] 2000年代
- 2000年
- 受賞作:『昏き目の暗殺者』 マーガレット・アトウッド(The Blind Assassin、鴻巣友季子訳、早川書房、2002年)
- 最終候補作:
- 「息をひそめて」(The Hiding Place) トレッツァ・アッツォパルディ
- 「The Keepers of Truth」 マイケル・コリンズ
- 「わたしたちが孤児だったころ」(When We Were Orphans) カズオ・イシグロ
- 「English Passengers」 マシュー・ニール
- 「The Deposition of Father McGeevy」 ブライアン・オドハティ
- 2001年
- 受賞作:『ケリー・ギャングの真実の歴史』 ピーター・ケアリー(True History of the Kelly Gang、宮木陽子訳、早川書房、2003年)
- 最終候補作:
- 「贖罪」(Atonement) イアン・マキューアン
- 「Oxygen」 アンドリュー・ミラー
- 「number9dream」 デイヴィッド・ミッチェル
- 「暗闇のなかで」(The Dark Room) レイチェル・シーファー
- 「ホテルワールド」(Hotel World) アリ・スミス
- 2003年
- 受賞作:「Vernon God Little」 D・B・C・ピエール
- 最終候補作:
- 「Brick Lane」 モニカ・アリ
- 「Oryx and Crake」 マーガレット・アトウッド
- 「The Good Doctor」 デイモン・ガルガット
- 「あるスキャンダルについての覚え書き」(Notes on a Scandal) ゾーイ・ヘラー
- 「Astonishing Splashes of Colour」 クレア・モラル
- 2004年
- 受賞作:「The Line of Beauty」 アラン・ホリングハースト
- 最終候補作:
- 「Bitter Fruit」 アハマット・ダンゴール
- 「The Electric Michelangelo」 サラ・ホール
- 「Cloud Atlas」 デイヴィッド・ミッチェル
- 「The Master」 コルム・トビーン
- 「I'll Go to Bed at Noon」 ジェラルド・ウッドワード
- 2005年
- 受賞作:「The Sea」 ジョン・バンヴィル
- 最終候補作:
- 「Arthur & George」 ジュリアン・バーンズ
- 「A Long Long Way」 セバスチャン・バリー
- 「わたしを離さないで」(Never Let Me Go) カズオ・イシグロ
- 「The Accidental」 アリ・スミス
- 「On Beauty」 ゼイディー・スミス
- 2006年
- 受賞作:「The Inheritance of Loss」 キラン・デサイ
- 最終候補作:
- 「The Secret River」 ケイト・グレンヴィル
- 「Carry Me Down」 M・J・ハイランド
- 「In The Country of Men」 ヒシャーム・マタール
- 「Mother's Milk」 エドワード・セイント・アウビン
- 「The Night Watch」 サラ・ウォーターズ