フィリップ・グラス
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フィリップ・グラス (Philip Glass, 1937年1月31日生まれ)は、アメリカ合衆国の作曲家である。その音楽はしばしばミニマル・ミュージックと呼ばれるが、グラス自身はこの呼び名を歓迎していない。
目次 |
[編集] 略歴
グラスはメリーランド州ボルチモア市のユダヤ系に生まれ、子どものときからピーボディ音楽院でフルートを習った。ジュリアード音楽院に進み、そこで鍵盤楽器を主に弾くようになった。卒業後、フランスでナディア・ブーランジェに師事し、ラヴィ・シャンカールとともに働いた後、グラスは主に宗教的な動機から北インドへ旅行し、そこでチベット難民と出会った。1972年、グラスは仏教徒となり、ダライ・ラマ14世に面会した。グラスはチベット問題を強力に支援している。
ニューヨークのタクシーの運転手をしながらラヴィ・シャンカールとともに仕事をし、かつ徹底して加算的なインド音楽のリズムを知ったことが、グラスに特徴的な様式を発展させた。アメリカに帰国したグラスは、以前のミローやコープランド風の構成を離れ、附加的なリズムとサミュエル・ベケットの影響を受けた時間構成に基づく簡素で禁欲的な作品を書きはじめた。ベケットの作品に対してグラスは実験的演劇のための作品を書いている。伝統的な演奏家と演奏会場に共感を見いださなくなったグラスは、フィリップ・グラス・アンサンブルを結成し、主に画廊で演奏活動を行うようになった。こうした画廊はミニマル・ミュージックと美術運動であるミニマル・アートが実際に出会う唯一の場所であった。
グラスの作品は禁欲性を離れ、だんだんに複雑さを帯びるようになっていった。そしてグラス自身の見解ではまったくミニマル・ミュージックとはいえないものになっていった。こうした傾向は「12部からなる音楽」Music in Twelve Partsで頂点に達した。グラスは、三部作のオペラの第1作である「渚のアインシュタイン」 Einstein on the Beach をロバート・ウィルソンとともに制作した。三部作はマハトマ・ガンジーの前半生とその南アフリカでの経験を描く「サンタヤーナ」 (Satyagraha)、 アッカド語、旧約聖書のヘブライ語、古代エジプト語および聴衆の言語による力強い歌唱とオーケストラが競演する「アクナートン」(Akhnaten) へと続いていく。
[編集] 実用音楽
演劇作品へのグラスの作曲には、グラスも参加して1970年に結成された演劇集団マブー・マインズのために書いた作品が含まれる。デビッド・ボウイのアルバム Low および Heros に収録されたインストルメント作品を自身の Low Symphony および Heros Symphony でオーケストラ化している。またエイフェックス・ツインとも共同で仕事をしている。彼は精力的に活動しつづけ、多くの映画音楽を書いている。その中にはゴッドフリー・レッジョの実験的なドキュメント映画であるカッツィ三部作『コヤニスカッツィ』Koyaanisqatsi、『ポワカッツィ』Powaqqatsi 、『ナコイカッツィ』Naqoyqatsi、エロール・モリスの 『時間の短い歴史』 A Short History of Time, (スティーヴン・ホーキングの『ホーキング、宇宙を語る』をもとにしている)、『キャンディマン』 Candyman (クライヴ・バーカー原作) またマーティン・スコセッシの『クンドゥン』 Kundun めぐりあう時間たち The Hours がある。
[編集] 評価
オーケストラなどの既存のメディアとの関りが増えた現在の作風にはほとんどの専門家は否定的だが、初期のライヒすら凌ぐ禁欲的な作風への評価は全く揺るいでいない。
[編集] 作品
フィリップ・グラスの代表的な作品の一部を挙げる。
- 『渚のアインシュタイン』Einstein on the Beach (オペラ, 1976年)
- 『サンタヤーナ』Satyagraha (オペラ, 1980年)
- 『グラスワークス』Glassworks (1982年)
- 『写真家』The Photographer (1982年)
- 『アクナートン』Akhnaten (オペラ, 1983年)
- 『コヤニスカッツィ』(Koyaanisqatsi) (映画音楽, 1983年)
- 『ミシマ:4章からなる伝記』Mishima: A Life In Four Chapters (映画音楽, 1984年)
- 『プラネット8の模型の制作』The making of the representative for Planet 8 (オペラ, 1985-88年)
- 『屋根の上の1000台の飛行機』1000 Airplanes on the Roof (work for stage, text by David Henry Hwang, 1988年)
- 『ポワカッツィ』Powaqqatsi (映画音楽, 1988年)
- 『ソロ・ピアノ』Solo Piano (1989年)
- 『弦楽四重奏曲第5番』(String Quartet No. 5) (1991年)
- 『世界霊魂』Anima Mundi (映画音楽, 1992年)
- 『オルフェ』Orphe (オペラ, 1993年)
- 『美女と野獣』La belle et la be^te (オペラ, 1994年)
- 『三つ・四つ・五つの地帯の間での結婚』The marriages between zones three, four, and five (オペラ, 1997年)
- 『ヒーローズ・シンフォニー』Heroes Symphony (1997年)
- 『クンドゥン』Kundun (映画音楽, 1997年)
- 『めぐりあう時間たち』The Hours (映画音楽, 2002年)
- 『ナコイカッツィ』Naqoyqatsi (映画音楽, 2002年)
- 『フォッグ・オヴ・ウォー』The Fog of War (映画音楽, 2003年)
- 『川を遡って:ジョン・ケリーの長い戦い』Going Upriver: The Long War of John Kerry (映画音楽, 2004年)
- 『変化する部分からなる音楽』Music with Changing Parts
- 『12の部分からなる音楽』Music in Twelve Parts
- 『水素のジュークボックス』Hydrogen Jukebox (アレン・ギンズバーグの台本による)
- 交響曲
- "Low" Symphony (Symphony No. 1) (from the Music of David Bowie & Brian Eno) (1992)
- Symphony No. 2 (1994)
- Symphony No. 3 (1995)
- "Heroes" Symphony (Symphony No.4) (from the Music of David Bowie & Brian Eno) (1997)
- Symphony No.5 "Requiem, Bardo, Nirmanakaya" (2000)
- Symphony No.6 "Plutonian Ode" (2001)
- 協奏曲
- Concerto for Violin and Orchestra (1987)
- Concerto for Saxophone Quartet and Orchestra (1995)
[編集] 関連項目
- ミニマル・ミュージック
- ジョン・クーリッジ・アダムス
- スティーヴ・ライヒ
- テリー・リレイ
- ルイ・アンドリーセン
- デヴィッド・ボウイ