ピアノソナタ第23番 (ベートーヴェン)
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ベートーヴェンのピアノソナタ第23番ヘ短調作品57は、ベートーヴェンの作曲した23番目の番号付きピアノソナタである。「熱情(アパショナータ)」として有名で、ベートーヴェンの三大ピアノソナタの1つに数えられる。ベートーヴェン中期の最高傑作のひとつとして名高い。
目次 |
[編集] 概要
ベートーヴェンの32のピアノソナタの中における位置づけとしては、21番(ヴァルトシュタイン)、26番『告別』と並んでベートーヴェンの中期ピアノソナタを代表する作品とされ、また8番『悲愴』・14番(月光)または、29番(ハンマークラヴィア)・32番と並んで、ベートーヴェンの3大ピアノソナタとされている。
ベートーヴェンの全作品のなかにおいても、燃えるような激しい感情と寸分の隙もない音楽的構成の一致から、最高傑作の中のひとつに数えられており、最も重要な作品のひとつとされる。
この曲は終楽章を短調で締めくくるものとしてはベートーヴェンのピアノソナタ中最後の一曲であり、この曲の完成以後、彼は四年もの間ピアノソナタを書かず、再着手後もついにこのような激情をあらわにした曲を作ることはなかった。このことから、第23番はベートーヴェンの闘争的な曲想のピークであり、かつ最終到達点と見なすことができる。
なお、「熱情」という通称は、ベートーヴェン自身がつけたものではない。後年ハンブルクの出版商クランツがピアノ連弾用の編曲版の出版に際してつけたものであるが、この通称は、この曲の雰囲気を的確に表したものだと言え、今日までそのまま通用している。
1806 年秋のエピソード。リヒノフスキー公邸からウィーンに帰る途中、ベートーヴェンは突如雨に降られ、たまたま持っていたこの曲の原稿を濡らしてしまった。その原稿をマリー(ラズモフスキー公の司書ビゴーの妻で、優れたピアニストでもあった)に見せたところ、彼女は初見で完全に弾いてしまった。ベートーヴェンは大変喜び、出版後の原稿を彼女に贈った。この自筆楽譜は現在パリ音楽院に保存されている。
[編集] 作曲の経緯・献呈・出版
1804年から1806年にかけて作曲された。同じ頃交響曲第5番(運命)の作曲に取り掛かっていたが、この交響曲の4つの音からなる有名な動機はこのソナタの第1楽章でも重要な役割を果たしている。
F. v. ブルンスヴィック(Franz von Brunsvik)伯爵に献呈された。
1807年2月にウィーンで出版された。
[編集] 構成
演奏時間は約20分。
[編集] 第1楽章 Allegro Assai
「熱情」と通称されているが、8分の12拍子である。4拍子系の穏やかな舟歌に現れるリズムであり、作曲者がAllegro assaiについて決して「非常に速く、快活に」と考えていなかったことが伺える。 演奏の間の取り方、後半に弾くべき跳躍やクロマチックの捉え方など単純に譜面を読むのではない感覚が演奏者に求められている。 主題は5対1の鋭い付点リズムであり、いわゆる「運命」の動機と対になって繰り返される。後にシューベルトがト長調のソナタ(通称幻想)で引用している。 同時代人が「熱情」ソナタをどう捉えていたかが垣間見え、奏法にも注意が必要である。
[編集] 第2楽章 Andante con moto - attacca:
穏やかな主題と、それにかなり忠実な三つの変奏の後、主題が回想され、唐突に強い和音が打ち鳴らされ、切れ目なく次の楽章に進む。主題の変奏は巧妙で変奏を感じさせない流麗さで演じられる。
[編集] 第3楽章 Allegro, ma non troppo - Presto
- ヘ短調 4分の2拍子 ソナタ形式
熱情の奔流と呼ぶにふさわしい旋律が吹き荒れる。後半はまったく新しいリズムを持つ旋律が現れ、プレストに加速して激情の中で全曲を終える。Allegro ma non troppo(発想記号)の解釈がコーダPrestoの効果を左右する。暗い情熱的な主題をこの発想で演じるので不当に急激な速度にならず、最後のPrestoに向けて準備しなければならない。作曲者がAllegroという外国語を忌み嫌って、後年自国語に直して表記する理由の一端が表れている。
[編集] 関連項目
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