トーキョーN◎VA
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トーキョーN◎VAは、ジャンルを「アーバンアクションRPG」とも称する、テーブルトークRPGのルールシステム及び世界観設定である。
1993年に初版(ボックスセット)がツクダホビーより発売された。同社がTRPGから撤退した後は、製作元である有限会社ファーイースト・アミューズメント・リサーチ及び有限会社ゲーム・フィールドによって改版・サポートされている。出版元としてはアスキー出版、エンターブレインなども名を連ねる。
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[編集] 作品概要
災厄(ハザード)と呼ばれる天変地異――地軸の移動、致死率の高いウイルスの蔓延、氷河期の再来など――の後の傷ついた地球、主に干上がった東京湾に作られた“災厄と歓喜の街”トーキョーN◎VA(正式には東京都新星市)を舞台としたアーバンアクション(サイバーパンクとも微妙に異なる)RPGである。 主な舞台はトーキョーN◎VAであるが、その他にカムイST☆R、オーサカM○●Nなど、様々な都市がある。
[編集] ルール上の特徴
以下は他のTRPGに対し、ルール上特徴的な個所である。 なお、以下は最新版であるトーキョーN◎VA the Detonation(4版に当たる)におけるルールである。
[編集] 能力値
このゲームにおいて、キャラクターの能力は理性(Reazon)、感情(Passion)、生命(Life)、外界(Mundane)の4つで表現される。 このゲームの能力値が他のTRPGと比較して特長的であるのは、能力と技能の関係が固定的では無いと言う点にある。たとえば“走る”という行為は生命だけでなく、理性でも感情でも行えるのである。 生命で行えば肉体能力を駆使して走り、理性で行えばフォームなどを念入りにチェックするなどして走る、といった具合である。
[編集] 判定
他の一般的なTRPGと異なり、サイコロではなくトランプを判定に使用する。 判定方法自体は特殊なものではなく、【能力値+数字】で目標値に届いたかどうかで判断される。 数字の読み方は数札は数字のまま、絵札は10、Aは11とみなすブラックジャックに似た形式が採用されている。 ただし、Aは達成値が21に満たない場合、21とみなすという特殊ルールが適用される。 また、手札を常に4枚に維持して判定するため、ある程度成功・不成功のコントロールが出来るところも特徴的である。
[編集] スタイル
他のゲームでの職業(クラス)に相当するのが「スタイル」である。それぞれのスタイルは、特殊技能と後述の「神業」によって特徴付けられる。職業や社会的位置付け、習得している技術や能力、信念や生き方など多くのものを表す。これを反映し、生き様とルビを打って表記されることもある。
スタイルはタロットカードの大アルカナを模したカードである「ニューロデッキ」で表現されている。当初は大アルカナに対応して22種だったが、その後「マイナスナンバー」と呼ばれる特殊なスタイルが追加されて、現在では26種類となっている。キャラクター作成には、その中から重複を許される3つを選ぶ。またそのうちから「外観」であるペルソナ(◎であらわされる)、「内面」であるキー(●であらわされる)を選ぶ。このとき、同じスタイルを選んでも良い。
スタイル3つを並べればどんなキャラクターでも表現できるとされているため、映画や漫画の登場人物をこのスタイルで表すという遊びに興じるファンは多い。
- 0.カブキ(歌舞伎)
- 芸術家。大アルカナでは「愚者」にあたる。
- I.バサラ(婆沙羅)
- 超能力者。大アルカナでは「魔術師」にあたる。
- II.タタラ(踏鞴)
- 研究者、もしくは技術者。大アルカナでは「女教皇」にあたる。
- III.ミストレス(舞貴人)
- 女将、または女リーダー。大アルカナでは「女帝」にあたる。
- IV.カブト(兜)
- 用心棒。大アルカナでは「皇帝」にあたる。
- V.カリスマ(狩魔)
- カリスマ性のある人物。大アルカナでは「教皇」にあたる。
- VI.マネキン(真似衿)
- ヒモやジゴロなど、他者に頼る者。大アルカナでは「恋人」にあたる。
- VII.カゼ(風)
- 「走り屋」など、車輌の操作に長けた者。大アルカナでは「戦車」にあたる。
- VIII.フェイト(平威徒)
- 探偵。大アルカナでは「正義」にあたる。
- IX.クロマク(黒幕)
- 裏社会を牛耳る権力者。大アルカナでは「隠者」にあたる。
- X.エグゼク(益世狗)
- 超巨大多国籍企業の重役。大アルカナでは「運命の輪」にあたる。
- XI.カタナ(刀)
- 賞金稼ぎや剣客などの殺し屋。大アルカナでは「力」にあたる。
- XII.クグツ(傀儡)
- 企業の非合法工作員。大アルカナでは「吊られた男」にあたる。
- XIII.カゲ(影)
- 忍者。大アルカナでは「死神」にあたる。
- XIV.チャクラ(車鞍)
- 格闘家。大アルカナでは「節制」にあたる。
- XV.レッガー(裂牙)
- 暴力団やギャングの構成員。大アルカナでは「悪魔」にあたる。
- XVI.カブトワリ(兜割)
- スナイパー。大アルカナでは「塔」にあたる。
- XVII.ハイランダー(排乱駄)
- 衛星軌道上など、地球外で生まれ育ったエリート階級。大アルカナでは「星」にあたる。
- XVIII.マヤカシ(摩耶蠍)
- 幻術師。大アルカナでは「月」にあたる。
- XIX.トーキー(投喜居)
- 報道員。大アルカナでは「太陽」にあたる。
- XX.イヌ(犬)
- 警察。大アルカナでは「審判」にあたる。
- XXI.ニューロ(新生路)
- ハッカー。大アルカナでは「世界」にあたる。
以下はマイナスナンバーであり、大アルカナで相当するものは無い。ただし、それぞれ正の数のスタイルに対応するものとなっている。
- -1.ヒルコ(水蛭子)
- 突然変異体。人にして人ならざる者。
- -7.アラシ(嵐)
- 戦車などの兵器乗り。
- -9.カゲムシャ(影武者)
- その名の通り影武者。
- -18.アヤカシ(妖)
- 吸血鬼や妖怪などの怪物。
[編集] 神業
各スタイルに設定されている能力で、使用回数は有限だが、判定の必要なく発動し、何らかの行為一つが確実に成功する。 狙撃手であれば対象を必ず殺し、マフィアであればどんな罪ももみ消すことができる、といった具合である。 ただし、神業は神業によって防がれる場合もある。 基本的に神業で受けたダメージは、神業以外で防いだり治したりする事が出来ない。
- チャイ
- カブキの神業。「幸運な偶然」を起こす事により、使用前の神業を打ち消したり、失敗させたり出来る。
- 天変地異(カタストロフ)
- バサラの神業。自然現象を起こし、キャストやゲスト以外の対象や建物を破壊する。
- タイムリー
- タタラの神業。その場に適した装備を作って持っていた事に出来る。もしくはその場で作リ上げる。
- ファイト!
- ミストレスの神業。自分以外のキャラを応援して活力を与え、神業の使用回数を1回増やす。
- 難攻不落(インヴァルネラブル)
- カブトの神業。社会ダメージ以外の攻撃を完全に防ぐ。
- 神の御言葉(ゴスペル)
- カリスマの神業。その威厳を持って対象に精神ダメージを与える。
- プリーズ!
- マネキンの神業。他人(キャストやゲスト)に神業の使用をお願いする。
- 脱出(エクソダス)
- カゼの神業。どんな状況からでも絶対に脱出する。
- 真実(トゥルース)
- フェイトの神業。知っている事を聞き出す。
- 腹心(ライトハンド)
- クロマクの神業。忠実な部下を用意する。
- 買収(M&A)
- エグゼクの神業。金で買える物ならなんでも購入出来る。
- 死の舞踏(ダンス・マカブル)
- カタナの神業。白兵戦用武器で回避不能の攻撃を放つ。
- 完全偽装(アンダカヴァ)
- クグツの神業。完全偽装工作を行う。「暴露」や「真実」に対抗出来る。
- 不可知(インセンサブル)
- カゲの神業。完全に姿を消して行動する。
- 黄泉還り(フェニックス)
- チャクラの神業。自ら受けた損害を消し去る。
- 不可触(アンタッチャブル)
- レッガーの神業。様々な圧力により、事実を揉み消したり、責任転嫁する事が出来る。「暴露」や「真実」に対抗出来る。
- とどめの一撃(クーデグラ)
- カブトワリの神業。対象に射撃を必中させる。
- 天罰(ネメシス)
- ハイランダーの神業。あらゆるワガママを可能にする(例えば、大企業の機密事項が何故か届いたり、軌道レーザーが迫りくる攻撃を撃ち払ったり等)。
- 守護神(ガーディアン)
- マヤカシの神業。高次の意識体や潜在能力により、自己の身を守る。
- 暴露(エクスポーズ)
- トーキーの神業。どんな状態でも自由に報道出来る。それにより、任意の対象に、社会ダメージを与えたり、治したり出来る。
- 制裁(パニッシュ)
- イヌの神業。法の裁きを与える。それにより、対象に任意の社会ダメージを与える。
- 電脳神(デウス・エクス・マキナ)
- ニューロの神業。ウェブや、ウェブに接続された物を自在に操る。
- 突然変異(ミューテーション)
- ヒルコの神業。見聞きした他の神業をコピーする。但し、コピーする神業が使われた場に登場している必要がある。
- 突破(ブレイクスルー)
- アラシの神業。乗り物で障害を突破する。
- 神出鬼没(チェンジ)
- カゲムシャの神業。誰かと入れ替わっていた事に出来る。
- 霧散(ディスアペア)
- アヤカシの神業。体を霧にするなどして、ダメージの一つを無効にしたり、その場から退場したりする。
なお完全に余談だが、FEAR社とも関係の深いイラストレーター・田中としひさは、麻雀のルールにこの神業の概念を取り入れ(カゲムシャでフリコミを他人に押し付ける、等)、いわゆる超常(イカサマ)麻雀マンガを再現できる「トーキョーN◎VA麻雀ルール」を作成し、本ゲームデザイナーの鈴吹太郎を含む数名と実際に麻雀を打ったこともある。(初出・月刊ログアウト・1995年8月号収録「おこんないでね」)
[編集] ゲーム上の用語
トーキョーN◎VAではゲーム上使用される用語が他のゲームと差別化されており、映画(でなければ演劇)を想起させるようになっている。
- RL:ルーラー。他のゲームにおけるGM(ゲームマスター)に相当する。ルールの曖昧な部分について決定する権利がある、と明記されているのが特徴的。
- キャスト:プレイヤーキャラクター。(PC)
- ゲスト:ノンプレイヤーキャラクター(NPC)のうち、キャストと同程度の能力を持つ、重要な人物をあらわす。
- トループ:NPCのうち、ある程度の能力を持つ集団をあらわす。いわばザコ。
- エキストラ:NPCのうち、風景同然の端役をあらわす。演劇のかきわりのようなもの。
- アクト:一回のプレイを表す。オープニング・リサーチ・クライマックス・エンディングの4フェーズに分かれて進行される。
等。
[編集] 作品一覧
- 『トーキョーN◎VA The 2nd Edition』 (1995年)
- 『トーキョーN◎VA The 2nd Edition ガイドブック』
- 『オーサカM○●N』
- 『カムイST☆R』
- 『BLAKK box ブラックボックス』
- 『小説・トーキョーN◎VA ブレインハンター』
- 『トーキョーN◎VA~ACT.1 BRAINHUNTER~ドラマCD』
- 『トーキョーN◎VA The 2nd Editionリプレイ 猟犬たちの午後』
- 『トーキョーN◎VA The Revolution』 (1998年)
- 『トータル エクリプス』
- 『グランド×クロス』
- 『ナイフ・エッジ』
- 『トーキョーN◎VA The Detonation』 (2003年)
- 『グランド×クロス The Detonation』
- 『カウンターグロウ』
- 『ストレイライト』
- 『トーキョーN◎VAクロニクル』