トンネルズ&トロールズ
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『トンネルズ&トロールズ』 (Tunnels & Trolls, T&T) は、米国製のテーブルトークRPGのひとつ。メインデザイナーはケン・セント・アンドレ(『ストームブリンガー』などのデザイナー)。ペーパーバック一冊に収まったルールブック(日本語版はちょうど文庫本一冊になった)と、6面ダイスのみを利用する簡素なシステムが特徴。
豊富な武器防具の設定や、ユーモアに富んだ独特のテイスト、銃器や奴隷のルール化などの一般のファンタジーRPGではとりあげられることの少ない奇抜なフィーチャーで異彩をはなった。ソロアドベンチャー(ゲームブック)が多数発刊されたことでも知られる。
1975年に米フライングバッファロー社 (Flying Buffalo Inc.) によって発表された。これはダンジョンズ&ドラゴンズ とほぼ同時期(T&Tが1年後)にあたる。日本では1987年に社会思想社から日本語版が発売され、同社から発刊されていた「ウォーロック」誌によって様々なサポートがなされた。また、サプリメントやソロアドベンチャーも同社から出版されている。
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[編集] システム
[編集] 戦闘
戦闘は、集団による乱戦を模し、個々のキャラクター同士で判定を行うのではなく、全体のヒット数(武器や魔法などの打撃点)を比べあい、少ない方が等分にダメージを与えられるという大胆なシステムを採った。
また戦闘システムの構造上、戦闘時にはサイコロを同時に多数振るため、他のテーブルトークRPGよりも多くのサイコロを必要とするのも特徴。同時に振るサイコロの数は、他のテーブルトークRPGの多くが1人あたり1~3個程度なのに対し、T&Tでは1人あたり3~5個程度が普通で、武器によっては10個ものサイコロを必要とする場合もある。
[編集] 行為判定
一般の行為判定は、セービングロール(SR)と呼ばれる、能力値(体力度、知性度、魅力度など)に6面ダイスふたつの合計(2D6) を足したものが、ある難易度数に達していたかどうかで合否を判断する。ただしダイスの目が5以上でなければ自動的に失敗となる。またゾロ目(同数字がふたつ)の場合には、更に2D6を振り足すことができる。
[編集] キャラクター
キャラクターの能力は体力度・知性度・幸運度・耐久度・器用度・魅力度の 6つの能力値で表される (7つ目の能力値「速度」を追加することもある)。キャラクター作成時には 3D6の値に選んだ種族の係数をかけて能力値を決める。
能力値を MR (モンスターレート) という数値ひとつで表現する方法もある。MR はキャラクターの攻撃の強さと耐久度を同時に表す数値で、戦闘時にゲームマスターの計算を楽にするために使われることが多い。MR で表されたキャラクターは普通の能力値をもたないため、セービングロールを行うことができない。
[編集] 種族
種族は、人間・エルフ・ドワーフ・ホビット・レプラコーン・フェアリーの 6種類が基本となる。場合によっては、小トロールや、サプリメント『モンスター!モンスター!』で定義された多数の種族を選ぶこともある。
[編集] 役割
基本ルールでは戦士・盗賊・魔術師・魔法戦士の 4つが用意されている。また、『モンスター! モンスター!』で僧侶と侍僧が追加された。
戦士はすべての武器・防具を使うことができる (体力度と器用度が武器防具の必要能力値を満たしていれば)。防具の効果的な使い方を訓練しているので、防具の防御点を 2倍にして数えることができる。上級ルールではバーサーカー戦闘を行うこともできる。
盗賊もすべての武器・防具を使うことができるが、特にボーナスはない。盗賊は魔法を使うこともできるが、魔術師のように体力度の消費を軽減することができない。
魔術師は魔法を使うことができる。武器は短剣や杖に限られる。防具に制限はないが、魔法を使うと体力度を一時的に消費するため、軽い (必要体力度の低い) 防具だけを使うことが多い。 魔術師は、自身のレベルが上がったり魔法の杖を使ったりすることで、魔法使用時の体力度消費を軽減することができる。
魔法戦士は、キャラクター作成時の能力値 (しかも種族係数をかける前の数値) がすべて一定値以上でないと選ぶことができない。能力値が条件を満たす確率は非常に低い。 魔法戦士は、戦士ほとではないが防具を効果的に使うことができ、魔術師ほどではないが魔法使用時の体力度消費を軽減することができる。
[編集] 魔法
魔術師は、キャラクター作成時点で、レベル1の魔法をすべて使うことができる。レベル2以上の魔法を憶えるには、知性度・器用度が規定値以上であり、かつ魔術師組合に規定の金額を納めなければならない。魔法の価格はレベルごとに決まっている。魔法ひとつあたりいくら、なので、魔術師は大量の金貨が必要になる。
盗賊は魔術師組合から魔法を教えてもらうことはできない。パーティー内の魔術師から教えてもらうことはできる。このとき盗賊は魔術師に、魔術師組合での値段と同じ金額を払うのが慣例になっている。この慣例を守らなかった場合、教えた魔術師は、魔術師組合から狙われることになり、まず助からない。
[編集] その後のT&T
T&Tの世界観やシステムを利用したコンピュータゲーム『Tunnels & Trolls: Crusaders of Khazan』が New World Computing 社から1990年に発売された。日本語版はスタークラフト社から『トンネルズ・アンド・トロールズ カザンの戦士たち』として発売。
日本語版の翻訳を行なったグループSNEは、その後独自に拡張した『ハイパートンネルズ&トロールズ』をデザインし、日本で出版している。
[編集] 日本での製品一覧
日本で出版されたT&T製品を以下に示す。全て社会思想社より現代教養文庫として発行された。ただし、同社の倒産(2002年)により現在では全て絶版である。なお、アメリカで第7版が発売されたのに伴い、新紀元社より第7版での再刊が予定されているものがある。ちなみに、社会思想社刊行のものは全て第5版である。
[編集] ルールブック・追加ルール
- 『トンネルズ&トロールズ ファンタジーRPGルールブック』 ケン・セント・アンドレ著 安田均監修 清松みゆき訳
- 2006年12月、新紀元社より再刊予定。
- 『モンスター! モンスター! T&T PRGシナリオ・追加ルール』 ケン・セント・アンドレ、ドロシー・V. マーチ著 清松みゆき訳著
[編集] シナリオ
- 『ベア・ダンジョン T&T PRGシナリオ』 J. ピータース他著 清松みゆき訳
- 『魔術師の島 T&T PRGシナリオ』 ラリー・ディティリオ著 高山浩訳
[編集] ソロ・アドベンチャー
- 『傭兵剣士 T&T ソロ・アドベンチャー』 J. ウィルソン著 安田均、清松みゆき訳
- 2006年11月、新紀元社より再刊。新紀元社版はこれをシナリオにしたリプレイ(北沢慶著)とのダブルブックになっている。
- 『カザンの闘技場 T&T ソロ・アドベンチャー』 ケン・セント・アンドレ他著 清松みゆき、高山浩訳
- 『恐怖の街 T&T ソロ・アドベンチャー』 マイケル・A. スタックポール他著 安田均、清松みゆき訳
- 『デストラップ T&T ソロ・アドベンチャー』 ケン・セント・アンドレ著 清松みゆき、高山浩訳
- 『鏡の国のダンジョン T&T ソロ・アドベンチャー』 J. マーシニャク、S. エストヴァンキー、S. マーシニャク著 安田均、清松みゆき訳
- 『オーバーキル城 T&T ソロ・アドベンチャー』 マイケル・A. スタックポール著 安田均、高山浩訳
- 『ゲームマンの挑戦 T&T ソロ・アドベンチャー』 R. クラム著 清松みゆき訳
- 『嘆きの壁を越えて T&T ソロ・アドベンチャー』 G. A. ラーマン、K. M. オウル著 清松みゆき訳
[編集] その他関連書籍
- 『T&Tがよくわかる本』 清松みゆき著
[編集] 外部リンク
- T&T メインサイト ケン・セント・アンドレによる(英語)
- T&T Wiki