ディヴェルティメントK.563
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ディヴェルティメント変ホ長調K.563は、ウォルフガング・アマデウス・モーツァルトによって作曲され1788年9月27日にウィーンで完成された。
「ディヴェルティメント(自由な形式の器楽曲)」と題されてはいるが編成は弦楽三重奏(ヴァイオリン・ヴィオラ・チェロ 各1本)に限定される。そのため、この曲を特に「弦楽三重奏のためのディヴェルティメントK.563」と呼んだり、「ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロのためのディヴェルティメントK.563」と呼ぶこともある。
演奏・録音の機会は決して多くはないが、モーツァルト晩年の名曲であり、弦楽三重奏の分野では最高傑作の一つと言われる。
[編集] 作曲の経緯
この曲を作曲した1788年9月は、有名な交響曲『ジュピター』を作曲した約1ヶ月後にあたる。モーツァルトのフリーメーソンの仲間であり、当時モーツァルトがしばしば生活費の援助を受けていた友人プーフベルクからの依頼によるものである。
この変ホ長調という調性はモーツァルトがフリーメーソンを象徴している調性だと言われる。「3」はフリーメーソンにとって重要な数字だとされ、変ホ長調はフラット3つだからである。1791年に作曲されたオペラ「魔笛」では曲の至る所に「3」という数字を使ってフリーメーソンを暗号のように盛り込ませていることで知られるが、「魔笛」もやはり変ホ長調で書かれている。奏者3人からなるこのディヴェルティメントK.563も、やはり「3」という数字を使ってフリーメーソンに献呈されているのである。
[編集] 特徴
モーツァルトはディヴェルティメントと題した曲を20曲以上作曲しているが、弦楽三重奏の形態をとるものはこの変ホ長調K.563のみである。このK.563は6つの楽章からなり「ディヴェルティメント」と題されてはいるが、ディヴェルティメントに特有の娯楽性を目的としたもののみならず、もっと高い音楽性を指向しているのが特徴である。室内楽曲としての書法としては弦楽四重奏からヴァイオリンを1本欠くため難しくなるのだが、各楽器を均等に扱いつつ精緻な作曲技法を施し、構成的にもしっかりしたものにすることにより、モーツァルト晩年らしい名曲になっている。演奏技術的にも高いものを要求し、各楽器は時には協奏曲のような妙味も見せ、モーツァルトの他の弦楽四重奏曲などよりもよほど難しい。
モーツァルト自身、この曲を少なくとも2回は演奏した記録が残っている。1789年4月にドレスデンでの演奏の様子を妻に知らせた手紙の中では、この曲をとてもきれいに演奏できたと報告しており、モーツァルト自身がこの曲を重視していることがわかる。モーツァルトはこの曲のヴィオラパートを弾いたとされるが、この曲のヴィオラパートは弦楽四重奏における内声(第2ヴァイオリン・ヴィオラ)2本分の役目を時には担い、また時には協奏曲のようなソリスティックな動きを見せるという音楽的・技術的に高度なものが要求される。そのようなところからヴァイオリン・ピアノの神童として有名だったモーツァルトが、ヴィオラにおいてもかなりの腕前だったことがうかがえる。
[編集] 構成
演奏時間50分を要する大曲である。
- 第1楽章 Allegro
- 第2楽章 Adagio
- 第3楽章 Menuetto (Allegretto) - Trio
- 第4楽章 Andante
- 第5楽章 Menuetto (Allegretto) - Trio I -Trio II
- 第6楽章 Allegro