ツキノワグマ
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ツキノワグマ | ||||||||||||||||
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インド、ガントックの動物園にて |
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分類 | ||||||||||||||||
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学名 | ||||||||||||||||
Ursus thibetanus |
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和名 | ||||||||||||||||
ツキノワグマ | ||||||||||||||||
英名 | ||||||||||||||||
ツキノワグマ(月輪熊)はネコ目(食肉目)クマ科に属する哺乳類である。全身が黒い体毛に覆われており、首もとには白い三日月形の模様がある。「月輪熊」の名の由来でもあるこの模様は個体によって異なり、中にはほとんど月の輪のないものもいる。
目次 |
[編集] 生息地
ツキノワグマはユーラシア大陸の東部、台湾、日本などの森林地帯に生息する。日本では本州、四国に分布している。九州ではすでに絶滅し、四国でも絶滅寸前の状態にあると考えられる。日本国内では本州以南に生息する唯一のクマ類である。ヒマラヤグマ、アジアクロクマとも呼ばれるが、日本産のものを亜種として区別し、ニホンツキノワグマ=Ursus thibetanus japonicus、または、Selenarctos thibetanus japonicusと呼ぶ。
[編集] 体形
一般的にヒグマ (Ursus arctos) に比べ一回り小さく、ニホンツキノワグマはオスの成獣で平均頭胴長120~150cm、70kg程度。しかし、最大のヒマラヤツキノワグマは平均で頭胴長180cm、150kgにもなり大物は300kgを超える個体すらいて、ヒグマをも凌ぐ。仔育てをしている間以外は単独で生活している。通常、四つ足で歩くが、果実を採るときなど、後ろ足で立ち上がることもできる。クマ類に特徴的な、かかとをつける歩き方(蹠行(しょこう)という)をする。木登りや泳ぎが得意である。
[編集] 生態
食性は雑食で、春はブナなどの新芽を、夏は主にアリ、ハチなどの昆虫を、秋は主にドングリ、クリなどの木の実やアケビなどの果実を食べる。特に秋は大量に食べ、冬眠に備えている。冬季には大木の樹洞や岩穴、土穴などで冬眠をする。交尾は6~8月ごろに行い、メスは冬眠中に1~2頭の仔を出産する。
ツキノワグマには、樹皮剥ぎ(クマ剥ぎ)という習性があることが知られている。樹木の樹皮を根元から2~3mにわたり剥ぎ取り、縦方向に爪痕や歯痕を残す。樹皮剥ぎは主に夏に行われるが、理由はよくわかっておらず、樹液による栄養補給、なわばりのマーキング、繁殖行動のためのメスの誘引などの説がある。自然林のみならず、スギやヒノキなどの造成林でも行われ、林業被害をもたらすことがある。なお、ニホンジカなども同様の樹皮剥ぎを行う。
台風で木の実が落ちてしまうなどの理由で食料事情が悪化すると、ツキノワグマは人里に下りてくることがある。この際、作物を荒らしたり、人間に危害を加えたりするなど、トラブルが発生している。ツキノワグマはヒグマほどに力は強くないので、一般的に人間にとっての危険はヒグマと比べて少ないと言われている。しかし、アジア大陸に棲むツキノワグマでは、トラから獲物を奪い取った例も知られているように、ツキノワグマは人間にとっても危険な存在であることは間違いなく、出没があった地域では注意が必要である。一方、日本のツキノワグマは、本来おとなしい性格で人を襲う習性はないと言われている。 出没は森林内はもとより、森林と人間の居住エリアとの境界付近で、出会い頭であることが多い。こうした場所に行くときは、聴覚が鋭いクマの特性を利用して、よく鳴る鈴を必ず携行するなど、人間の存在をクマに知らせることが重要だ。また、クマは背中を見せて逃げるものを追う習性があるため、出会ってしまったときは、静かに後ずさりすべきである。 特に日本ではツキノワグマは人間に害を成す危険動物として認識され、捕獲しても9割は殺処分されており絶滅が危惧されてきている。
2006年には、1年間だけで国内全体で1万頭と推定されている全個体数の半数近くに上る4251頭が捕殺され、絶滅の危機が極めて具体的なものとなりつつある。