ストリートギャング
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ストリートギャング(street gang)とは、市街地などの路地などで活動するギャング組織の末端組織で、主に未成年者からで構成されるが、銃器の入手し易いアメリカ合衆国では、度々銃乱射事件を起こすなど、大きな社会問題と化している。
類型としてはチーマーやカラーギャング等の団体もある。(日本国内のそれに関しては下記参照)
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[編集] 概要
これらの集団は、1970年代のアメリカにてすでにその原型が見られたが、特に1980年代以降には自動小銃や短機関銃(サブマシンガン)等で武装する集団が多く見られ、グループの大半を占めるメンバーが未成年者であるだけに自己抑制が利かず、乱射事件を起こしやすいなどの問題行動が見られる。
アクション映画やコンピュータゲーム等ではしばしばやられ役のチンピラをストリートギャングと表現する場合もあるが、実際には人数が少ない分だけ武装に力を注ぐ傾向が強く、また肉体的には成熟した大人にかなわないこともあり、銃器に頼りやすい、結果的により凶悪な事件を起こしやすいなど、都市部の治安悪化要因のひとつに挙げられる。
高校生位の年代の少年が多いとされるが、度々凶悪な事件を巻き起こす事から、他の少年犯罪のようにモラトリアムの範疇には見なされず、成人した犯罪者と同様に扱われ、警官隊と銃撃戦の末に射殺されるケースも多いとされ、それらの集団が扱う商品には麻薬、銃器、売春といった違法なものから、パーティー券や各種チケットのダフ行為まで多岐に渡り、また違法な商品の仕入先にはマフィア等の大手組織が挙げられている。
これらは廃墟ビルやアパートの一室を根城として活動し、数名から十数名程度の弱小グループから、下位組織を含めると総勢数万名に及ぶ大規模な団体まで様々で、それぞれのグループに特徴的なファッション・ルールがあるとされる。特に若者文化に影響力は大きく、ヒップホップやラップなどは彼らストリートギャングやその出身者が主な牽引役となっている。ただそのため、教育者や保護者には、これを「ギャングスタイル」だとして嫌う傾向も存在する。それでも米芸能界では、これらのスタイルは支持を集めているのも事実で、日本国内ではストリートギャングやチーマーなどとは無関係に、この輸入された文化に興味を持つ・支持する者もいる。
中には特定人種のみで構成されたグループも見られ、黒人・ヒスパニックなどで有色の肌を持つ特定人種のみにて構成された集団を(有色人種を指す・しばしば差別的意味合いを持つ)カラード・ギャングと呼称した時代もある(→クリップス/Bloods)。アメリカでは必ずしも末端では人種差別が払拭されてはおらず、また比較的近年になって移民してきた人々は確固たる社会基盤を持たない事から経済的に貧しいことが多い訳だが、これら社会基盤に乏しく貧しい家の子供等が集まって所定の肌の色をもつ小集団を結成、活動するケースがあった。
[編集] 日本での類似現象
日本にも、このスタイルだけが伝播し、未成年者等によるチーマーやカラーギャングと呼ばれる小集団を発生させている。チーマーは1980年代半ば以降より活動が見られたが、1990年代半ばよりカラーギャングがその活動を活発化させ、社会問題と見なされている。
[編集] 日本国内での特徴
日本国内の「カラーギャング」は各々のチームカラーを持っており、その構成員はチームカラーのバンダナや服、お揃いTシャツを着用、グループを誇示している。
アメリカのストリートギャングを真似ているため、サイズの大きな服やバギーパンツを着用し、ギャングスター・ラップ(ギャングスターの生活を歌詞にしたラップ)を好んで聴く傾向があるが、アメリカギャングの羨望からの模倣のため、ヒップホップ文化に精通していない者が多い。
1990年代には従来から在ったモラトリアム集団の暴走族がファッション性に欠け「ダサい」としてその数を減らしていく中で、カラーギャングのような「新しいスタイルのモラトリアムファッション」は様々な派生集団を発生させ、東京23区を中心に今日に至っている。
日本では銃器が極めて入手し難い事もあり、ナイフやスタンガン・特殊警棒等の有害玩具、またはバットや木刀といったスポーツ用品などで武装している(中には改造した(“極悪化”と呼ばれる)エアソフトガンを所持するものもいる)。またスデゴロ(徒手)での格闘を美徳としていたかつての不良とは違い、負けなければ武器や刃物の使用は恥ずかしいことではないとする文化を持つ。度々他集団や集団内で統制を乱したとされる構成員が、リンチを受けるなどの事件を発生させている。中には徒党を組んで「オヤジ狩り」などに代表される強盗行為を行う集団が見られた。
活動的には小規模な物ではあるが、こと強盗や窃盗などといった犯罪行為に関しては、従来の暴走族より凶悪な(関係無い人をすぐ巻き込む、少ない人数で襲撃するためより強力な武器や武具に頼り、使用も辞さない)ことから、社会的に問題視されている。このような動向も絡み、近年ではナイフなどの携帯に対する取締り強化の動きが見られる。(ナイフの項を参照)
なお、これらの集団の中には違法な薬物の流通や、あるいは振り込め詐欺の末端組織として機能するといった現象も2000年代より報じられるようになってきている。これら組織化された犯罪では、かつては暴走族が暴力団の下請け組織として機能していた(→暴走族#暴走族と社会)が、暴走族衰退後に新規にこれら団体を抱き込んだり、あるいは暴走族から転向してカラーギャングを自称するようになった団体との関係を継続させる形で利用しているとみられる。この暴力団との関係の中では、暴走族同様に上納金(暴力団による保護や調停仲介を求めるための資金提供)の形で金銭の授受も行われている模様で、そのパイプ役として同少年集団出身者の暴力団関係者が関与している模様である。
[編集] 関連する作品等
[編集] 映画
- ウエスト・サイド物語 - West Side Story (1961年)
- ウォリアーズ - The Warriors (1979年)
- ストリート・オブ・ファイヤー - Street Of Fire (1984年)
- カラーズ/天使の消えた街 - Colors (1988年)
- ロミオ+ジュリエット - William Shakespear's Romeo + Juliet (1996年)
- トレーニングデイ - Training day (2001年)
[編集] テレビドラマ
- 池袋ウエストゲートパーク(同名小説を原作とする。)
[編集] コンピュータゲーム
[編集] 漫画
[編集] 関連項目
[編集] 学究的な研究
- ウィリアム・フート・ホワイト(英語) (『ストリートコーナー・ソサエティ』1943)
[編集] 外部リンク
- 埼玉県に出没しているカラーギャング情報。米国のストリートギャングに関しても取り上げている。