エル特急
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
エル特急(エルとっきゅう)とは、昼行で運行本数の多いJR在来線の特急列車の愛称である。特急料金は特急と同額。時刻表や列車のヘッドマーク・方向幕では、「L」を図案化した記号で表される。
[編集] 概要
旧国鉄時代の1972年10月2日のダイヤ改正で、昼間、毎時同じ分に発着する9種(関東地区6種、山陽地区3種)の在来線特急が「エル特急」と名付けられた。この年は、日本海縦貫線の米原駅~青森駅の電化が完了し、全国特急網が完成した年であり、それを機にニックネームとして付けられたものである。「L」には特に意味はなく、特急(Limited Express)や直行便(Liner)、あるいはlucky, lovely, light の頭文字を取った物、また同一方面に等間隔で特急を設定するダイヤは、ヨーロッパ各国(特にドイツ国鉄)に普及していた「インターシティ」に倣った物と言われている。また、ほとんどの列車が自由席や停車駅が同区間を走行する特急列車よりも多いことで通勤に多く利用されていること、運行区間が短いことや普通列車の補助をすることから、「Local Limited Express」からきているとも言われている。
まだ一般的に都市間輸送は急行が主力をなし、数少ない特急は全席指定が原則だった時代に特急のダイヤをパターン化して自由席を設置、更に自由席特急券つき回数券を販売したりして、特急大衆化に努めようという画期的な試みであり、「数自慢、カッキリ発車、自由席」というキャッチコピーと共に、国鉄らしからぬソフトなネーミングも受け、その呼称をつけた特急はその後も増加、例えば1978年10月2日の改正では25を数えるまでに成長していった。
だが、もともと「エル特急」という呼称自体に明確な定義がなかった事に加え、その後一部例外を除いてほぼ全ての特急に自由席が設けられたり、全国的に急行が大幅に削減されて特急に吸収されたり、新幹線の延伸により並行在来線の特急が廃止となるケースが増えたりする等様々な影響により、徐々に本数の多い特急にあえてこの呼称を与える意義が薄れてゆく。
特に、国鉄のJR転換後は、各会社間でその呼称に対する解釈の食い違いが目立ってくる。例えば、「白山」の様に運行終了に近い1990年代には1往復しかないのに「エル特急」を名乗ったり(但しエル特急「あさま」の一員という位置づけと見ることもできる)、速達列車を強調するための「スーパー○○」の方が本数が多いのにもかかわらず「エル特急」を名乗らない場合も出てきた。
こうした風潮の中、JR東日本では「特急」との区別が判り難いということで、2002年12月1日のダイヤ改正によりJR東海から乗り入れる「しなの」を除いて自社内で運行している全てのエル特急の呼称を廃止、単なる「特急」に改称した。
また、他の会社でも新設された特急列車には「エル特急」としない事例が増えているが、北海道の様に、長距離列車と区別する意味あいで愛称代わりに「エル特急」と呼ぶ事が一般的にも定着している地域もある。