ざる
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ざる(笊、bamboo basket)は、竹を細く薄く裂いたものを網状に編んで作られた容器。
道具、調理器具のひとつで、その形状(網状)から、液体や粉末状の物質など、ある程度の大きさ以下の物質を素通しする。類似の器具に、篩(ふるい)がある。
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[編集] 素材・形状
日本に古くから伝わる民具としてのざるは竹を編んだものであったが、近年は針金を編んだもの、無数の穴が空いたボウルのようなもの、合成樹脂製のものなども多く普及している。大きさ、深さ、形状、網の目の粗さなどにより非常に多様な種類があるが、一般的には丸い形状で浅く窪んだものを「ざる」と呼ぶことが多い。
なお、同様の道具でもある程度深いものは籠(かご)と呼ばれる事が多いが、あまり厳密な区別はなされていない。水切りなどの目的で一時的に食材を乗せる用途のものを「ざる」と呼び、保存などの目的で一定期間内容物を入れておくためのものを「かご」と呼ぶとする人もいる。
[編集] 用途
ざるは一般に、水洗い後の野菜や磨いだ米、茹でた食物などの水分を切る場合に用いられることが多い。日本以外でもパスタの湯切りや野菜の水切り等にcolanderやstrainerと呼ばれる水切りが使われるが、日本ではこれらもざると称される場合がある。讃岐うどんの再調理などに使われる径が小さく深底の特殊なざる「鉄砲ざる」(略してテボ、てぼざるとも言われる)もこれにあたり、その名の由来は一説に「(うどんの)玉」を入れて(再加熱のために)茹で上げるからと言われている。(鉄砲の弾との語呂合わせ)
従来の竹製のざるは、ざるそばや枝豆など、食品を載せるための皿にかわるものとしても用いられる。温めた豆乳ににがりを混ぜ、ザルの上にあけ水分を切り固めるとざる豆腐となる。また、ざるの上で梅干しや干物などを干す場合もある。
特に竹製でないざるの場合、ふるいがない場合に代用品として利用する事もある。特に、潮干狩りなど、目的のものを砂から分別する場合にも使用される。また大型のざるは、稲やソバ等穀物の昔ながらの手作業の脱穀に使われてきた。
かつては川魚、ドジョウなどを獲る時の道具としてもよく用いられていた。
[編集] 用途によるざるの進化
サラダ用の野菜等の水切り用途のざるとしては、深いざるにハンドルと歯車がついていて、高速で回転させる事により、遠心力を利用して効率的に水切りをするためのアイデア商品も開発され、市販されている。
基本的にはボウルであるが、その縁の一部分が穴の空いたざる状になっているものもある。これは水を溜めて使う用途と水を切る用途の両方に使えるため、米を磨ぐ際に便利である。
[編集] ざると文化
- 民謡安来節(どじょうすくい)の踊りの小道具として、魚籠とともにざるが使われる。
- 笊かぶり犬は江戸の郷土玩具。写真
- 落語演目 「米揚げ笊(いかき)/いかき屋」(上方落語)/『ざる屋」(江戸落語) いかき(笊籬)は関西方面のざるの古い呼び方。
[編集] 比喩
ざるは大きなものは通さないが液体や細かなものは通してしまう事より、チェックなどが甘い事を「ざるのような」と表現することがある。例えば、法律があるにもかかわらず、その規定に抜け穴・抜け道があって問題があるために、法律で取り締まりたい対象がきちんと取り締まれないような場合に、「ざる法」と揶揄される。同様にチェックの甘い会計は「ざる会計」と呼ばれる。素人の下手な碁のことを、(多くの場合自ら謙遜する文脈で)「ざる碁」という。
液体がいくら入ってもあふれる事がないことから、大量の酒を飲んでもなかなか酔わない人の事を「ざる」と呼ぶことがある。また、「ざるで水をすくうような」は、いくらやっても無駄なという喩えである。
[編集] ことわざ・故事成語・いいつたえ
- 笊(ざる)舐めた犬が科かぶる/米食った犬が叩かれず、糠食った犬が叩かれる
- 笊をかぶると背が伸びない/笊をかぶるとものもらいができる
「笑」という漢字は、元々は竹冠に犬と書いたものであったとする説がある。その説によれば、犬に竹ざるをかぶせると前がよく見えないためにずるずると後ずさりし、その様が笑いを誘うのが語源であるとする。