あくび
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あくび(欠伸)は、眠たいときなどに不随意に(反射的に)起こる、大きく口を開けて深く息を吸う呼吸動作である。また、漢字の旁である欠の名称でもあり、口を開けることに関する文字(歌、欲など)にこの旁は含まれる。
あくびは一般的に以下のような時に起こる。
- 眠たいとき。過度に疲れているとき
- 退屈なとき
- 極度の緊張状態
出かかったあくびを無理に止めること、転じて退屈であるのを我慢することを「欠伸を噛み殺す」という。いくつかの文化においては、人前であくびをするのは無礼なことと考えられ、あくびをする時に口の前に手を翳してそれを隠そうとする。
眠たいときにあくびがでるのは口を大きく開けると同時にこめかみが刺激され眠気が一時解消されるといわれている。 それはガムを噛むと眠気が飛ぶのと同じ原理である。
なお、動物も欠伸をするが、その生物学的意義は人間と同じである。
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[編集] 原理
開口すると上下の顎の間に張っている咬筋が引き伸ばされる。すると咬筋の中の筋紡錘という感覚器から沢山の感覚の信号が脳に送り込まれる。この信号は大脳皮質の働きを盛んにして意識をはっきりさせる。
[編集] 原因
あくびの原因は現時点では、ほとんど未解明であり、よくわかっていない点が多くある。従来は 低酸素あるいは高二酸化炭素状態が原因ではないかと考えられていたが、それらを否定する実験結果が報告されている。より最近の学説としては、あくびは体温の調節に使われるという説や、あくびは脳の中の感情を調節する化学物質と同様の物質によって起こされるというものがある。これとは反対に、エンドルフィンのような脳内麻薬が増えると、あくびの発生が抑えられるという研究がある。また精神安定剤の一種であるパキシルを服用した患者は、異常に多い回数のあくびをすることが報告されている。
あくびは「うつる (伝染する)」ことが知られている。英語ではこの特徴は「共鳴的 (sympathetic)」あるいは「伝染性 (contagious)」と呼ばれているが、この原因もよくわかっていない。最近の研究では、これは集団的な直感 (herd instinct) であるという説や、群居性の動物のあいだで眠る時間を互いに知らせるためのシグナルになっているという説がある。また、あくびは違う種のあいだでも伝染する (イヌの前であくびをしてみるとよい)。なお、アデリーペンギンやコウテイペンギンは求愛行為としてあくびを利用する。
古代ギリシャでは、あくびは人間の魂が天に向かって逃げようとしているときに起こるのだと信じられていた。 あくびをするとき、口に手をあてるのは、『魂を逃がさないようにする為だった』と言われている。
[編集] 語源
日本語の「あくび」はあくびをする意の古語動詞「あくぶ」の連用形が名詞に転じたものであるが、その語源は諸説あって不明である。げっぷの意の古語「おくび」と何らかの関係がある語ではないかともいう。欠という漢字は口を開けてする動きを表す象形文字であり、「欠伸」は口を開けて伸びる、つまりあくびをして伸びをする動作を意味するものである。