VIC-1001
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
VIC-1001はコモドールジャパンが日本で発売した8ビットパーソナル・コンピュータである。海外では製品名は、VIC-20。5KバイトRAMとモステクノロジー6502マイクロプロセッサを搭載し、後のコモドール64などと似た形状である。VIC-20としては1980年6月にリリースされた。コモドールの最初のパーソナル・コンピュータPET2001の3年後のことであった。
目次 |
[編集] 歴史
VIC-20はPETよりもローエンドのマシンを志向している。VIC-20が使用しているビデオチップ(VIC)は低価格なディスプレイでゲームなどに使用することを考慮して設計されたがコモドールはそのチップの市場を見つけられなかった。同時にコモドールは1KビットSRAMチップの過剰在庫を抱えていた。1980年4月、コモドールは300USドル以下で売れるコンピュータの開発を開始した。これにより、在庫として抱えていたチップをVIC-20として一掃することができたのである(訳注:コモドールは自社でチップを製造していたわけではないが、モステクノロジーの製造するチップをほぼ全て買い取っていた)。PETは認可したディーラーでのみ販売されていたが、VIC-20は一般流通ルート特にディスカウント店や玩具店で売られた。それによりゲーム機と直接対抗することになった。コモドールはスタートレックのウィリアム・シャトナーを宣伝に起用し「何故、ただのビデオゲームを買うの?」と問いかけた。
VIC-20は性能が悪いと酷評されたが、この宣伝は効いた。100万台以上を売り上げる世界初のコンピュータとなり、1982年の販売台数1位となったのである。ピーク時には一日に9,000台製造され、製造が終了した1985年1月までにトータルで250万台が販売された。その後、コモドールはC64をエントリーレベルとし、さらにコモドール128とAmigaを投入することになる(Amigaによりコモドールは16ビット時代に突入する)。
メモリが少なくディスプレイが低解像度であるため、VIC-20は教育ソフトとゲームのために使われたが、生産性のあるソフト、たとえば家計簿プログラム、表計算、通信ソフトなども作られた。VIC-20は、BASICプログラミングを導入したことにより、多くのプログラマを生み出し、その一部はアセンブラや機械語にまで手を伸ばした。コモドール自身のものも含めいくつかの雑誌が生まれ、プログラムが掲載された。VICユーザはそれらを買って、プログラムを学んで、打ち込んで、走らせて、さらに修正を加えていった。
VICのプログラムのしやすさと安価なモデムが接続できたことによってパブリック・ドメインやフリーウェアのソフトウェアライブラリが生み出された。このソフトウェアはCompuServe、BBS、ユーザグループなどによって広まっていった。
市販ソフトウェアは、カートリッジの形で300タイトル、カセットテープの形で500タイトル以上が販売された。同時期のゲーム機Atari 2600は900タイトルだった。
カートリッジゲームはVIC-20の電源を入れればすぐに遊ぶことができたが、テープの場合はロードする必要があった。
[編集] 日本でのVIC-1001
日本では、1981年に69800円で発売された。当時発売されていた日本製パソコンが専用ディスプレーが必要だったのに対して、家庭用テレビに繋げるVIC-1001は廉価だったことも手伝い、黎明期のパソコン市場で一定の支持を受けた。一方で同年にNECは89800円でPC-6001を発売。2万円の価格差があったが、VIC-1001の内蔵RAMは少なく、増設して使用するのが一般的で、実際の購入時の価格は大差なかった。カートリッジスロットによるゲーム供給(あまり活用されなかった)、ジョイスチックポート、サウンド機能、家庭用テレビをモニターにできるといった機能が共通であり、ホビー向けパソコンというPC-6001の位置付けはVIC-1001と競合。先に発売したPC-8001を通じて流通ルートを持ち、テレビコマーシャルを放送したNECのPC-6001にVIC-1001は瞬く間に市場を奪われた。
後にVIC-1001は、49800円に値下げされた。もっとも当時のパソコンはゲーム機としての需要が大きく、他の国産ホビーパソコンがパソコンショップの市販ソフトやパソコン雑誌にゲームのプログラムが掲載されているのに対して、VIC-1000は日本国内市場ではコモドールジャパンのカートリッジ供給の数本のゲームしかなく、値下げによってシェアを獲得することは出来なかった。
さらにコモドールジャパンが、1982年の年末にVIC-1001と互換性がないコモドール64を99800円で発売。これはRAMを64Kb搭載し、スプライト機能も有する機種である。同時にキーボードを搭載するがゲーム専用機の色彩の濃いMAX MACHINEが34800円で登場した。コモドール64とMAX MACHINEのゲームカートリッジは互換性があり、これによりVIC-1001は商業的には終了した。
[編集] 詳細
- CPU:6502A 1MHz
- メモリ:5KバイトRAM、ただし1.5Kバイトはシステムが使用。最大32Kバイトまで拡張可能。16KバイトROM。
- 表示:22×23文字。184×176ピクセル。8色(バックグラウンドは16色)
- 内蔵ソフト:BASICと低レベルOS
- 外部インターフェイス:
[編集] 豆知識
- RAMを最大に拡張してもユーザは24Kバイトしか使えなかった。残りの部分にはBASICがコピーされて動作した。BASICプログラムをカセットテープにセーブすると拡張BASIC自体も同時にセーブされるので、拡張BASICを持っていない友人もそのプログラムを走らせることができた。
- リーナス・トーバルズが最初に買ってもらったコンピュータがVIC-20である。