CardWirth
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CardWirth(カードワース、略称「CW」)はgroupAskが開発したフリーソフトのコンピューターRPGである。インターネット上で1998年8月から公開された。マルチシナリオ形式のゲームで、ユーザーが作成したシナリオも多数公開されている。
現在では、開発者たちはCardWirthの開発から後退し、ファン有志により解説サイトやシナリオサイトの運営が継続されている。
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[編集] 開発者
groupAskとは、大学の研究室で一緒に仕事をしていた、斉藤、倉貫、赤塚の3人の名前からとったもの。斉藤が年長で、あと2人が一年後輩。当初、CardWirthは、Project_RPG3という開発名で呼ばれていた。斉藤が開発し始めたゲームプログラムの3つ目の意味で、Windowsで開発されたのはこれが最初のもの。当初は、10分くらいで終了するプリキの玩具のようなものが想定されていた。プログラムの大半は、倉貫の手になるもので、音楽は赤塚が担当した。3人のフルネームは公開されていない。
[編集] CardWirthの世界
CardWirthの解釈についてはgroupAsk自体は、公式の説明をしていないで意味は不明。 「カード宿屋の主人」という意味のgroupAskの造語(Wirthは英語の古語で、「自分で商売を営んでいる人」から転じて「宿屋の主人」を意味する)という説があるがgroupAskの発言からではない。
世界観はテーブルトークRPG『ダンジョンズ&ドラゴンズ』 (D&D) や『ソード・ワールドRPG』の設定が参考にされている。物語は、剣と魔法と、モンスターに大国同士の領土拡張的な野心が跋扈する擬似中世的なファンタジーの世界である。物語の中心になるのがリューンという町で、そこに、子守から人探し、モンスター討伐までさまざまな仕事の依頼を引き受ける冒険者が、根城にしている冒険者の宿がある。この宿の名前は、プレイヤーが自由に名づけることができる。
プレイヤーは、そこに最低1人の男女の冒険者を性別、年代、性格を指定して登録することからゲームを始める。冒険者たちは、ゲームの中ではトランプのカードのようなかたちで表示される。絵柄は、デフォルトで用意されたものの中から選ぶが、シナリオ製作を手がけたりしているユーザーがネット上に公開してる素材から借用して、それを利用することもできる。これは、CardWirthのフォルダーの中のDataフォルダーの中の「Face」フォルダーの中に入れれば利用することができる。冒険者は、引退させ、新しく登録する冒険者の親とすることもできる。(バージョンによって仕様の差異はある)なお、シナリオによっては、それを最後までプレイし、ミッションが終了した後に、その登場人物の1人が冒険者の宿の仲間に加わるということもある。
[編集] 歴史
カードワースはとても簡単にシナリオを作ることができ、またそれをプレイできるフリーウェアである。 当時は簡単にゲームを作るという点において、アスキー(現エンターブレイン)のRPGツクール95がまだまだ主流の時代であったが、フリー(無料)であり、プログラムの知識が無くともRPG(SLGやADV等も可能)を作成できるためか、様々な人達がシナリオを作っていた。その中にはどう考えても小学生以下の年齢の人が作ったような物もあれば、オフィシャル以上に人気を誇っていたシナリオなども存在していた。
最初期はアドベンチャーズギルド(グループASK制作のユーザーシナリオ登録所)にて、ユーザのシナリオがASKの手作業で登録されていた(物によってはASKのコメントがついていた)。また、ごくごく一時期ではあるが、シナリオ投票システムが稼働していた時期もあった。しかし、フリーゲームに評価で優劣をつけると言うことに対し拒否感を抱く作者も多かった。途中で登録制へと変更されたものの、当時人気を誇っていた作者が登録を拒否したため、「果たして意義はあるのか?」とのことからシナリオ投票システムは廃止された。
ユーザーの増加、そして、誰でも簡単に作ることができる故に、シナリオは輪をかけて増えていった。 この時、ある意味では正にカードワースは絶頂期を迎えたと言っても良いだろう。大量のシナリオ登録、頭角を現す製作ユーザー、カードワース用素材系サイトが増大していく。 しかし、グループASKの負担も増大していたため、アドベンチャーズギルドはcgi化される。
一日たりとも止まらないシナリオ登録は非常に魅力的であった。しかし、割合的には旧ギルド時代と同等かむしろ少ないレベルであったが、手作業時代に比べCGI化により更新速度が飛躍的に上昇した事もあり、シナリオの数自体が膨大になった結果、いわゆる駄作が飛躍的に増加した。 「できうる限り駄作を避けたい」との思いもあって、旧ギルド時代以上にシナリオ感想系サイトが非常に役立てられた。 しかしながら問題が発生した。旧ギルド時代にもあった所謂批評の存在である。
先述したように、カードワースには優れたシナリオ作家も存在すれば、(当時のプロバイダは従量課金が主流だったため)ネットの接続料を無駄にしたようなシナリオも存在するのが特徴であった。そこで、正直に「つまらなかった」という意見や、そこそこの作品でも「容量を節約できるのでは?あるいはここをこうした方が良いのでは?」などの感想や意見が出はじめた。次第にそれらを批評という形でシナリオ選択の一つの方法として用い始めたが、シナリオ制作者が離れる要因になるのでは、とのことから様々な議論が成された。 紆余曲折を経た結果、現在でも明確な答えは出ていない。が、感想を送ること自体は作者にとって一番の励ましであることは確かなことである。また、ネットの料金形態も変わった現状では、駄作をだったからといって必要以上に目くじらを立てる理由もない。
[編集] シナリオ
カードワースは、システム(エンジン)とシナリオが分離している。プレイヤーは決まった1つのシナリオをプレイするのではなく、独立したシナリオを選んでプレイする。 インターネット上には、公開されているCardWirthのシナリオが数多くある。ダウンロードしてきたシナリオは、CardWirthのフォルダーの「Scenario」というフォルダーに入れれば、CardWirthを起動したときに、宿の中の所定の依頼の中に表示される。
シナリオは付属のエディターを使って、ユーザーが自由に作ることができる。 シナリオを作るのに必要な画像や効果音を公開するサイトが多数あることもあり、1200を超えるシナリオが公開されている。その多くはオフィシャルファンサイトからダウンロードすることが出来る。
世界観はソードワールドが基本とされているが多くの先人の手により実際はSF、現代物等何でも有りという感じになっている。
[編集] ジャンル
- 兄貴系(アニキ系)
- 初期のシナリオ制作者の中でも三面六臂の活躍をしていた伊達氏のシナリオ「超亜空間書店侠勇堂」にて絶大なるインパクトと共に現れたいわゆる超兄貴のパロディ。
- その後、カードワース界においてアニキ系というジャンルを生み出してしまう。好き嫌いの分かれるジャンルである。
- 狂い系
- いわゆる不条理ギャグ系統の作品、初期のシナリオ制作者yeNow氏が作り出した「親父への挑戦」と言うシナリオがきっかけでジャンルとなる。現在では逃げ道として狂い系を自ら名乗って登録する場合もある。
- 背景にいる親父と脈絡無く対戦するという(しかもかなり強い)、まさしく狂った展開である。しかしこの作品がきっかけで一時期狂い系と言えばどんな駄作も狂い系だからを言い訳に投稿されることがあった。しかしyeNow氏は狂いだからを言い訳にクオリティを落とす様なことはそうそうなかった(例として誤字脱字の少なさ、ギャグのキレが挙げられる)。
- また、近年は作者は狂い系と称しているが実際にはそこまで極端に狂っていないシナリオもある。
- おそらく、最も好き嫌いの分かれるジャンルで、この文字が入っているだけでプレイする事を拒否するプレイヤーも多い。
- 虐殺系、生き様系
- なんの必要性もなく登場人物をブチ殺すシナリオ、伝説のシナリオ制作者Yamada255氏が世に送り出した伝説の怪作、漢の生き様、もしくはそれに類似するシナリオを指す。
- あらすじはと言うと冒険者の宿の金が盗まれ犯人をブチのめす指令を受けた冒険者達が犯人以外の人間をブチ殺したりするシナリオ(マルチエンディングなので犯人だけを殺すことも可能)
- 前述した狂い系と同ジャンル、もしくは亜種といえるが感化され極々一部で似たようなシナリオが作られた。やはり好き嫌いの分かれるジャンルである。
- 連作シナリオ
- 名前の通り一本のシナリオで完結せず、いくつかのシナリオをプレイする事でその物語が完結するシリーズもの。完結した連作シナリオも多いが、何本か出されたきり、作者が製作を放棄して未完となった連作シナリオも多いため、賛否両論分かれるジャンルである。また、一本のシナリオの終わりが中途半端(冒険者の宿に帰還していない等)だとプレイヤーの批判される事も多い。
- リレーシナリオ
- その名の如く作者が数人でリレー小説のようにある一定の間隔で徐々にシナリオを作っていく企画。連作シナリオの変形とも言える。
- しかしカードワースでは完成まで至ることが希有な例であることが知られる企画でもある。現在の所、公式発表されたもので完成までに至ったのは大物作者が内輪ネタ兄貴ネタをカマしまくったUltimate Quest(通称アルクエ)位でその他のリレー企画は失敗がほとんど。ただし、最近は『冒険活劇三部作~林檎と槌と青の輝石~』というリレー企画がシナリオを全て完成させた上で発表されている。
- カードワースはシステム上はリレーを作るのにも問題ないようだが作者の個性が出やすい傾向もあってかリレーでは意見や世界の統一が計れずグチャグチャになることが多い。