19インチラック
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19インチラックは、機器類を複数、集中的に収容する為の規格化された筐体(キャビネット)である。
機器をラックに収納する発想は電話交換機に端を発しており、現在においても通信機器類の収容が大きな用途である。その他、工場の制御機器、業務用音響機器や映像機器、実験機器など産業界において広く使われる。近年ではコンピュータの発達とインターネットの普及に伴い、企業や学術研究機関、データセンターやコールセンターにおいてコンピュータ機器、通信機器を収容する用途が増加している。
EIAにより規格化された。機器取り付け用の支柱のネジの水平間隔が 19インチ と定められている。日本でも同等なサイズのラックがJIS規格としてあり、これも19インチラックと通称される。いずれも約483mm幅程度の機器を実装できる。
全体の幅の基本は約60cmであり、主としてコンピュータを収めるものをサーバーラックといい、ルーターやハブなど通信機器を納めるものはネットワークラックという。ネットワークラックには配線の引き回しを容易にするため、70cm 位の幅があるものがありワイドラックという。コンピュータなどでラックに収容することを想定した設計のものをラックマウント型と称する。通常機器の前面左右にラック取付け用にアングル状の金具(「耳」と称する)を有する。これは取り外し可能としている製品もある。ラック実装を考慮していない機器を収容するための棚を用いる場合もある。
実装機器の高さ方向はU(ユニット)と言う単位で規定され、1U = 1.75インチ (44.45mm) である。取り付ける機器はその高さにより 1U、2U サイズといった呼び方をされる。
奥行き方向は、規定がなく取り付ける機器の奥行きを考慮して選択する必要がある。また取り付け用のネジの径は 5mm と 6mm があるので注意が必要である。メーカーによっては、どちらでも取り付け可能なように支柱に別途ナットを取り付ける形式のものもある。このナットはケージナットと呼ばれる。
ただしJIS規格ラックでは実装ピッチは50mmの整数倍であり、またねじ穴間隔も25mmピッチの等間隔である。このため、米国製や英国製の機器と日本製の機器を混在して実装する場合には配置に注意を要する。場合によっては専用のブランクパネル(ふさぎ板)で機器間のすきまを埋める必要がある。
ラックの外観も、EIA(JIS)としての規定はなく支柱だけのむき出しのものから気密構造のものまで用途、設置場所によりさまざまである。 ただし、支柱が4本構造の簡易的なものをCAB型、データセンターなどに利用される、強い構造の地震に強い8本構造(フレーム部に4本、サーバなどの実装部に4本)の本格的なものはKAD型と呼ばれている。 サーバなどが数十台入る為に、その発熱は非常に高くなるため、冷却排熱のための通風口やファンを前面、背面、天井面に取り付ける場合もある。 また多くの機器の電源をとるために口数の多い専用のパワーストリップ(和声用語ではテーブルタップ、OAタップ)を使用する場合もあり、これをコンセントバーとも呼んている。 一般的なものはケースに収められ前面、背面がドアになり、サイドにパネルが装着され、メーカによっては、オープンラックとして、最低限の構造部品のものから、スタンドやキャスター、冷却用FAN、OAタップまで標準装備されている場合まである。
ラックの高さも(スタンド、キャスター、ラックキャビネットの上下フレーム部含み、)80cm(約20U)程度のものから2m(約42U)程度以上のものまで各種あり、大型のものは耐震対策のため、床にアンカーボルトを打って固定する。 場合によってはさらにアングルあるいは天板にアイボルトをねじ込んで天井から吊って固定することもある。 複数本のラックで構成される場合には隣合うラックをねじにより締結する。 一方背の低いラックでは移動可能なように自在車輪(キャスター)を付けているものもあり、実験室で測定器システムなどを実装する場合などに良く使用される。 小型のラックには数台のハブを縦方向に設置するタイプのものもあり、ハブラックなどと称する。
大規模システムインテグレーションを行う通信機器・産業機器メーカーでは自社製のラックを製造しており、システムの外観をそろえるためサブコントラクターとなったメーカーに供給することもある。