過酸化アセトン
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過酸化アセトン(かさんかあせとん、Acetone Peroxide)は有機過酸化物の1種。高性能爆薬として使用される。
一般的にはトリアセトントリペルオキシド(略称TATP、化学式 C9H18O6、分子量 222.24、CAS登録番号 17088-37-8)を示す場合が多いが、場合によってはジアセトンジペルオキシドとの混合物をいうこともある。
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[編集] 特徴
アセトン、過酸化水素水、塩酸、硫酸などの、比較的日常的な物質から製造できる爆薬である。このため、アマチュア化学者や爆弾マニアによって合成されて事故が起こったり、時にはテロリストによって製造・使用されることがある。2005年のロンドン同時多発テロでも使用された。
過酸化アセトン(以下、略称AP)はアマチュア爆弾愛好家により雷管(信管)として使用されることがある。APは、衝撃、炎、熱などを加えられると容易に爆発する。 爆発させる時、少量でしかも非密閉下における場合の爆発は大きな炎の塊になるだけである(爆燃)。しかし、密閉下か、多量に存在した場合は炎を一切出さず、爆発する(爆轟)。威力はトラウズル値でTNTの70-80%ほどである。
過酸化アセトンにはいくつかの種類がある。二過酸化物(二量体)、三過酸化物(三量体)、そして四過酸化物(四量体)である。一般に低温の方が四過酸化物を生成しやすい。
[編集] 製法
過酸化水素とアセトンとが酸触媒の存在下で反応するとケタールあるいはヘミケタールである過酸化アセトンは容易に生成する。このとき、単量体(ヘミアセタール体)はさらに過酸化水素あるいは他の過酸化アセトンとアセタール体を形成するので反応溶液中ではジヒドロペルオキシプロパンや過酸化アセトン のオリゴマーの平衡混合物として存在する。[1]特に三量体は結晶性が良いために結晶(純物質)として単離しやすい。また結晶性が良いために、生成した結晶をそれとは知らず不用意に取り扱うことで過去にも実験室で爆発事故を起こし指肢の切断や失明などの重大事故を数多く招いている。結晶として単離しなくても室温のカラムクロマトグラフ管の中で濃縮されて爆破した例すら存在する。
[編集] 保存
基本的には保管すべきではなく、必要量を購入し余分は専門業者に委託して分解廃棄すべきである。
- 保管中の注意
- 金属や日光と接触させてはならない。
- ガラス等の容器に保存してはいけない、保存中に爆発した際、ガラスの破片が飛散して被害が広がる為である。
- 乾燥した過酸化アセトンの結晶に息を吹きかける等して結晶を飛散させてはならない。
- こぼした過酸化アセトンは掃除機で吸い取らない(爆発の危険)。多量の場合は専門家(警察及び消防)に連絡するべきである。
- 皮膚に接触させることも避けなければならない。
- これが爆発物であることを忘れてはいけない。
[編集] 注意
この物質は爆薬であるから、基本的な化学知識を持たない人は扱うべきではない。
[編集] 反応
二量体および三量体の環状過酸化アセトンはメタノールあるいはベンゼン溶液中で熱分解ないしは光分解して、単環アルカンやラクトンなどを生成する。[2]通常、過酸化アセトンの光分解または熱分解はO-O結合が切断されるかC-C結合が切断されて分解する。酸または塩基が共存する条件での熱分解は主にO-O結合が解裂する。過酸化アセトンの重合体は、ヨウ化水素酸、酸性条件下の亜鉛またはスズ還元、触媒による水素化反応,、水素化アルミニウムリチウムや還元試薬に対してジアルキルペルオキシド類に比べて容易に還元されると考えられる。[3]
[編集] 用途
稀に小麦粉の漂白剤として食品添加物に使用される例がある以外、用途はない。
[編集] 他の有機過酸化物
類似化合物には、メチルエチルケトンペルオキシド(MEKPO)などのケトン過酸化物、ヘキサメチレントリペルオキシドジアミン(HMTD)や過酸化ベンゾイル(BPO)などの有機過酸化物がある。特にHMTDは過酸化アセトンの代用として用いられることがある。
[編集] 関連項目
[編集] 外部リンク
- テロに対する科学技術(2)爆弾テロ (pdfファイル) - 警察庁が作成した過酸化アセトン等の有機過酸化物による爆弾テロの例。
[編集] 引用文献
- ↑ N.A.Milas and A.Golubovic, J. Am. Chem. Soc., 1959, 81,5824.;Barton and Ollis, Comprehinsive Organic Chemistry, 1, 936.
- ↑ P.R. Story, D.D.Densom, C.E. Bishop, B.C. Clark and J.C. Farine, J Am. Chem. Soc., 1968, 90, 817.;Barton and Ollis, Comprehinsive Organic Chemistry, 1, 937.
- ↑ Barton and Ollis, Comprehinsive Organic Chemistry, 1, 937.