超重核
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超重核(ちょうじゅうかく)とは、自然界に存在しない非常に重い原子核の呼称である。
これまでに自然界に存在が確認されている最も重い原子核はプルトニウム(質量数239、241等)であるが、通常はウラン(質量数 233)よりも重い原子核を超重核と呼ぶ。自然界に存在しないのは寿命が非常に短いためであり、実験により人工的に合成する。合成した超重核はすぐに崩壊してしまうため、通常の分析法で原子番号と質量数を測定することは出来ないため、その崩壊過程を観測し、最終的に既知の原子核にたどり着いたところで逆算して決定する。新種の超重核が発見された場合、大別して原子番号(=陽子数)が既知の元素よりも大きいものと、原子番号(=陽子数)は既知の元素と同じだが質量数の異なるものとがある。前者は元素としては超重元素と呼ばれ、新発見の元素となる。後者は既知の元素の新たな同位体ということになる。
陽子の数が多いためにクーロン力による反発のため、液滴模型のような古典的な描像では核分裂障壁が形成されず、この超重核は存在できない。すなわち、古典的に考えると自発核分裂してしまう。量子力学的な効果によって初めて存在が理解できる、非常に量子論的な系である。したがって、超重核の定義とは、陽子の数が大きく殻効果によって存在できる限界の領域にある系と言える。
この超重核の実験的研究は、アメリカ、ドイツ、ロシア、そして日本で活発に行われているが、 理化学研究所・先任研究員 森田浩介氏によって、これまで確認されている元素より重い元素番号Z=113の新元素の合成に成功した。この研究成果は、日本物理学会欧文誌(JPSJ)誌の2004年10月号に掲載された。また2004年9月29日、高知大学で開催された日本物理学会で口頭発表された。
これより以前に原子番号113、114、115、116、118の超重核の合成が報告されているが、崩壊連鎖が既知の元素にたどり着いていないことから、原子番号と質量数を確認することが出来ず国際純正・応用化学連合を受けられないため、これらは未だ新元素として命名されていない。
[編集] 参考文献
- Experiment on the Synthesis of Element 113 in the Reaction 209Bi(70Zn,n)278113 K. Morita et al. Journal of the Physical Society of Japan, Vol. 73 No. 10, October, 2004 pp. 2593-2596
- 新発見の113番元素 理化学研究所 プレスリリース 平成16年9月28日
- 新超重核同位元素 発見 科学新聞 平成12年3月17日号 (233Amと<sup237Cm)
- 48Caによって引き起こされる反応による超重元素(原子番号114 )の合成 理化学研究所 プレスリリース 平成11年7月15日 (質量数 287)